【猫塚にて、虐待の事情】第6話 エピローグ「謎の声再び」
帰りのJRでは私も万代先輩も疲れ果ててぐったりしていた。
でも気が張り詰めてしまって眠れやしない。
線路の継ぎ目を通るときの振動がリズムよく体に伝わるのを感じながら車窓をボウッと眺めるだけだ。
沈黙に退屈した頃、私から会話を切り出した。
「猫塚詣でのつもりが、とんだハプニングに巻き込まれましたね」
「ボクなんか、君が里中さんに同行を依頼して、その代役が回ってきたんだけどね」
「ですよね……危ない目に遭わせてしまいすみません」
「おいおい、なんか素直に詫びを入れられるとこそばゆいな」
「え、いいじゃないですか。それより、里中部長に何て報告しようかな~」
「ありのまま話せばいいさ。あの人はこれまでそうとう修羅場をくぐってるらしいからね。これくらいじゃびくともしないよ」
「へーそうなんだ。どんな修羅場があったのか聞いてみたいな」
話し始めたら次々と言葉が出てきた。やはりアウトプットして楽になりたかったのだろう。
博多駅に着いたのはよる7時頃だった。
「万代さん、今日はありがとうございました」
「ボクの方こそ貴重な経験をさせてもらえたよ。ありがとう」
「じゃあ、失礼します」
「ああ、じゃあまた」
それぞれ筑紫口と博多口から出るので別れた。
私は自宅まで博多の街をぶらぶら歩くことにした。
帰宅するとシャワーを浴びてから途中で買ったコンビニ弁当をほおばる。
早めにベッドに入ったが、目が冴えてなかなか眠れない。
ようやく眠りについたと思いきや、またあの声が聞こえてきた。
「こちらへおいで……こちらへおいで……」
「あなたは誰? なぜ私を呼ぶの?」
「こちらへおいで……こちらへおいで……」
夢の中とは思えぬほどハッキリ聞こえた。
「わかったわ。どこに行けばいいのか教えてちょうだい」
そう問いかけたところ、声はしなくなった。
やがて私は眠りに落ちたようだ。目が覚めると朝だった。
それでも謎の声をありありと覚えている。
しょっちゅう夢で呼びかけられてはたまったものではない。
佐賀の化猫事件で心に引っ掛かった言葉も捨ててはおけない。
「ななおに聞くしかないわね」
私は意を決して一人で猫塚に向かう。




