第37斤
金曜日。午後12時30分。教室にて。
「おっけーっすよー」
昼休み、昼食を済ませた僕と白野さんと委員長は机を三角形にくっつけていた。明後日の日曜日は鎌倉水族館に行くことになったという話をしたら、委員長はあっさりと快諾した。
「にしても配信が終わった後2人でそんなことしてたんすねー。イチャイチャっすかー」
「そんなのじゃないから……!」
「まーまー照れないでもいーじゃないっすかー」
鎌倉水族館になった理由を話す中で、昨日の配信終了後に僕と白野さんの間にあった話をしたら委員長は口笛を吹きながら身を乗り出して斜向かいにいる白野さんの頬をつっつき始めた。白野さんは顔を紅潮させながら首を横に何度も振っていた。
「舞原さーん。うちともLINE交換しましょーよー。つーかクラスでうちと交換してないの舞原さんだけっすからー」
扇風機みたいになっている白野さんを眺めていたら委員長がそんなことを僕に言ってきた。
「そうなの?」
「そっすよー。学級委員長っすからー。委員長はクラスの代表として全員と連絡取り合えるようにした方がいいんすよー。ほらほらスマホ出してくださーい」
委員長に促されるがまま、僕はスマホをスラックスのポケットから取り出した。一応説明しておくと、僕たちの学校では昼休みと部活動ではない放課後に限り、校舎内での携帯電話の使用が認められている。
「うちのQRコードっすよー」
すると委員長がQRコードが表示されているスマホの画面を僕に向けてきたので、それを自分のスマホで読み込んだ。すると「白saki雪」というアカウント名のユーザーが出てきたので友だち登録した。
「よろしくっすー『ムギ』さーん。グループにも入れちゃいますねー」
委員長が僕のアカウント名を読み上げながらスマホをいじる。すると友だちリストにクラスのグループも追加された。
「偬鳴架名義じゃないんだね」
アカウント名を見てふと気になったので尋ねてみた。委員長はスマホを見ながらこくちと頷いた。
「はいー。そっちの名義のやつはまた別に持ってるっすよー」
「え……私全部同じやつだ……」
委員長の言葉に白野さんが動揺していた。全部同じやつというのは白野知晴と黒和わわを分けないでいるということなんだろう。「ちわわ」だし。
「まーそれで大丈夫ならそれでもいいんじゃないっすかー。ぷにぷにー」
「ふぁあああああ!」
委員長に頬を触られて白野さんが高い声で悲鳴を上げた。教室中にいる人の視点が一気に向けられるのを肌でひしひしと感じた。
「なにやってんすか舞原さ――ひゃああ!」
委員長が僕が犯人扱いしてきそうだったので言葉を言い切る前に椅子から腰を上げて委員長の頬を両手で掴み取った。喋り方と同じくふにゃふにゃとした感触で良かったけど、やっぱり白野さんのは特別なんだなと改めて認識させられる。
「ふぇえええ」
横に引っ張ると白い歯が見えた。ガチャ歯って訳じゃないけれども、白野さん程歯並びはよくないように思えた。
「ふぁ……ふぁふふあああ」
「ねぇ……!」
しばらく委員長を変な顔にして遊んでいたら、白野さんが隣から肩を叩いてきた。白野さんは無言で教室の後ろ側を指さした。すると教室にいる皆の顔が僕を見ていることに気づいた。
「本当に犯人になっちゃったじゃないか!」
「ひどー!」
手を離しながら委員長に言ったらむっとした顔でそう返された。理不尽だ。
「こういうのやるの……私だけにしてよ……」
隣で白野さんが、ぼそっと呟いた。
「うふぁふぁああああ」
それならと思い、僕は無言で白野さんの頬をぷにった。やはり白野さんのほっぺの手触りは極上極まりなかった。
「やっぱりイチャついてる」「バカップルかよ」「そういう性癖なのかな」
耳に届く声は、気にしないことにしておいた。




