第七話
お待たせしました!
今回英語が結構出てきますが、作者はいつも言ってる通りかなり苦手です。
間違っている可能性がかなり高いですが、言いたいことはルビで書いてます。
無茶しやがって……くらいで見ていただけると幸いです。
――公園施設。
数多くの植物が植えられたこの公園施設は普段であれば素晴らしい景観の場所だったのだが。
今は死角の多い危険地帯となり果てている。
「(蒼太、大丈夫?)」
「(ああ、緊張感はハンパないけどな)」
殿はエルマーが務めている。
戦っている姿は直接見ていないが、結果は目にしているのでそれなりに安心していられる。
それでも全方位に気を配るのは尋常ではない疲労を促す。
ましてや蒼太は常人離れした戦闘能力と状況把握が出来ると言っても一応素人、エルマーと同等を求めるのは本来であれば酷である。
(このまま何もなく抜けれればいいんだが……)
蒼太の願いも空しく、中間地点に差し掛かった時に事件は起こった。
「ソータ」
「どうしたエルマー」
「Mr.シゲモリが居ない」
「は? どういうことだ」
背後を警戒していたエルマーが視線を正面に戻したとき、さっきまで居た筈の重森が居なくなっていたという。
もし、何らかの異常があったのならばせめて叫ぶくらいは出来そうなものだが、そういったこと一切なく忽然と姿を消していた重森。
警戒を一層強くして周囲を見渡すが、辺りは静寂に包まれて異常は見当たらない。
「エルマー、どうする?」
「Mr.シゲモリには申し訳ないが進もう」
「わかった」
薄情にも思えるが、この状況下で下手に動こうとすれば碌なことにならないのは目に見えている。
エルマーの判断は適切だと蒼太は従った、恵里香も少し悲しそうな顔をしたが自分にどうこう出来る力が無いのは理解しているので何も言わない。
韮澤も恵里香と同じだ、唯一アンジェリーナだけは何を考えているのか読めなかった。
程無く、下に降りる階段が視界に入り始めたときに再び異変が起きる。
「エルマー」
「どうしたソータ」
「アレ、どっちだと思う」
木にもたれかかるように倒れている女性が居た。
外傷はパッと見見当たらない。
「I don't know……わからない、警戒はした方がいい……っ!? Wait! 待て、Mr.ニラサワ!」
「君、大丈夫かい?」
何という事か。
一番そういったことをしそうにない韮澤がエルマーの静止も聞かず、声を掛けに行ってしまった。
女性はピクリと声に反応した。
『キャアアアアアアアア!!』
韮澤に声を掛けられた女性は突如叫びだし、その声に反応して周囲から次々とネクロが現れる。
その中には居なくなった重森の姿もあった。
「くっそ! マジか!! アンジェリーナ、恵里香、囲まれる前に走れ!」
アンジェリーナに日本語が通じるかは不明だがとにかく逃げるように指示する蒼太。
「韮澤さんは!?」
「もう無理だ!」
見れば叫びをあげた女性に首を噛み千切られている、あれでは生きていたとしてもレイジ化してしまうだろう。
どの道助ける事は不可能。
「わ、わかった! 無理はしないで! っきゃあ!」
「恵里香!」
「What? Angelina、What are you doing!」
「Accustomed to sacrifice for me!」
アンジェリーナはネクロの方に向かって恵里香を突き飛ばし、自らは階段に向けて走り出す。
「あのクソ女ぁ! オラ! テメェら恵里香に触んじゃねえ!!」
蒼太は恵里香に一番近いネクロを突き刺し、次に近いネクロに向けて蹴り飛ばしてを安全を確保すると、即座に恵里香の手を取って自分に抱き寄せる。
「恵里香、走れるな?」
「う、うん!」
「エルマー! 走るぞ!」
「OK!」
いちいち相手にしている状況ではない、明らかに殲滅など出来ない数のネクロ。
ここにあの女性以外のレイジが居なくて良かったと思いつつ蒼太は階段に向けて走る。
階段を中ほどまで降りて後ろを確認するとエルマーが降りてこない事に気づく。
「っ!? エルマー?」
「Got your back! ここはオレに任せて先に行け!」
「ふざけんな! 早く来い!」
「エルマーさん!」
「Count on me! オレを信じろ、必ず行く。だから先に行け!」
「く! わかった! 行こう、恵里香!」
「でも!」
「エルマーの覚悟を無駄にすんな! 行くぞ!」
「……エルマーさん、待ってます!」
「……行ったか……Hey、zombie's。Don't move if you do not want to die! HA、そう言やあもう死んでるのも居たなぁ!」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
アンジェリーナは走っていた。
背後からゾンビが追い付いてくるかもしれない恐怖に怯えながら。
もしかしたら正面から突如現れるかもしれない恐怖に怯えながら。
わき目もふらず真っすぐと。
彼女は犯罪者である、本来ならば生きてるうちに刑務所から出てくることは無かった。
ある人物が話をこの話を持ち掛けてきた。
「ある客船に乗ってもらいたい、もし乗ってくれるならココから出してやろう」と。
うさん臭い事この上ない話。
船に乗るだけでこの刑務所暮らしからオサラバできるんだから。
それでも縋る以外の選択肢は彼女には無かった。
乗らなきゃ死ぬまでこの場所に居る事になる。
それが、こんな事になるとは思ってもいなかった。
こんな事態を想定しろという方が無理な話なのだが。
(I will not die absolute!)
例え他人を踏み台にしても絶対に死んでやるものか、私は自由を再び手に入れるんだと彼女は逃げ続ける
息も絶え絶えでこれ以上走れない、どこかで休まなければ。
そう思い近くのドアに入る、どうやらシアタールームのようだ。
(ハァ……ハァ……)
ドアを背もたれにして座り込み、息を整える。
一旦はこれで大丈夫と顔を上げ……。
『ぐ……ぐるるるる……』
「Oh my god……Please don't come here……Help……Help me」
その言葉を聞き入れてくれるモノはこの場所には居なかった。
「……I……I don't wanna die……」
『がああああ!!』
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「はあ、はあ……」
「大丈夫か恵里香、少し休むか?」
「も、もう少しで厨房だから頑張る」
「そうか、わかった」
「はあ、ふう、エルマーさん、警戒する事なかったね」
「ん? そう……だな」
「はあ……ついたね」
「ああ、アイツらの気配はない……か。恵里香、俺の後ろに」
「わかった」
物音をたてないように慎重に扉を開け、中に進む。
厨房内は所々に血のシミが飛んでいる。
血の海……とまではいかないがいくつもの血だまりが確認できる。
見ればそこかしこに肉片や人体のパーツが転がっていた。
「(う……うう……)」
「(我慢してくれ恵里香)」
「(わ、わかってる……でもぉ……ひぃ!)」
恵里香が何かを蹴っ飛ばし、ついそれを目で追ってしまう。
男性の頭部だ。
それでも叫ぶことをしなかったのは僥倖と言えるだろう。
「(止まれ)」
「(どど、どうしたの?)」
蒼太は何かに耳を澄ませている。
恵里香もつられて音に注意する。
かすかに、本当に微かにだが咀嚼音のようなものが二人の耳に届く。
「(居る)」
一人の男が人間らしきモノを食べていた。
「(どうしよう)」
後姿なのでレイジかネクロかの判断はつかない。
「(倒すしかないだろ、じっとしてろよ)」
出来ればネクロであってくれた方が蒼太的に楽ではあるのだが。
「(わ、わかった)」
一心不乱に食べているのか、血で濡れた床を歩く足音に気づく様子はない。
蒼太がダッシュして、相手が気づいたとしても仕留められるであろう距離に入った。
「ふっ」っと軽く息を吐くと同時に踏み出す。
異変を感じ取り振り返った相手の目が見える。
赤い目、レイジだ。
どちらにせよ頭部を破壊すれば問題ない。
そう思い躊躇うことなく突き出されたスタンドを、レイジ男はしゃがんだ姿勢のままカエルのように跳躍して回避する。
「な!?」
完全に虚を突いたはずの突きを躱されてしまった。
これが槍術の使い手ならば死に体になるのは避けられたかもしれないが、蒼太にそんな心得は無い。
(段々と強くなってる? 学習してるのか? そんなまさか)
空中で一瞥もせずに繰り出されたレイジの蹴りは的確に蒼太の顔を狙ってくる。
状況証拠のみではあるが、この船が実験場だというのは既に疑いようがない所まで来ている。
気づかれないように重森を攫った事、ネクロを統率しているかのようなレイジ女の出現。
そんなものを目の当たりにすれば、自身の戦闘パターンや癖を調べられたのかと想像してしまうのも蒼太の頭の回転速度があれば無理はない。
「蒼太!」
「こなくそぉ」
重心が前に傾き、片足がまだ地についていない為、回転運動や軸移動で避けることは不可能。
ワザと倒れこもうかとも考えたが血まみれの床に転がれば感染のリスクが上がる為憚られる。
ならばと上半身を無理やり少しだけ傾け、顔の中心で蹴りを受けるのだけは回避して敢えて食らう事にする。
インパクトの瞬間顔を回転させて衝撃を逃がし、コンマの時間を手に入れる蒼太。
その僅かな時間で浮いていた足が地面に着いた為、今度は身体を回転させて完全に衝撃を殺す。
ほんの一瞬でもタイミングが違えばクリーンヒットか体勢を崩していただろう。
ハッキリ言ってその辺のプロの格闘家が真っ青になるほどの技術である。
(狙うは膝関節!)
足首を肩に乗せ、膝を掌でホールド。
そのまま体重をかけて下に引く。
嫌な予感がしたのかどうかは分からないが、レイジも咄嗟に膝を曲げ抵抗を試みる。
しかし、落下の勢いも相まってメシィ! っという音と共にミチミチと筋繊維が千切れる感触が蒼太の手に伝わり、完全に膝の破壊に成功した事を知らせてきた。
「オラァ!」
その程度でレイジが止まる事が無いのは最早周知。
捕まえた足を手放さずに一息で頭も踏み砕く。
これでネクロ化の心配も完全に潰えた。
「ふう……」
「蒼太」
「おっと」
蒼太が無事であることに安堵した恵里香は、こらえきれずに飛びついてきた。
「恵里香キッチリ勝ったぞ」
「うん……でも、見てて凄く心配だった」
「あー、正直俺もちょっと焦った」
「あんなのとずっと戦ってたんだね……」
「まあ……な。……食いもん探そうぜ」
上手い言葉が見つからず話題を逸らす蒼太。
少しだけ不満げな表情を浮かべたが、先日よりお菓子しか食べていない恵里香もその言葉に同意する。
どうやらここまで生きてたどり着いたものは居なかったようでかなりの量が見つかった。
死体に囲まれての食事は気分が良いものでは無かったが、何処に行っても死体があるのだからそれは仕方ないとあきらめる。
保存が効きそうな食料も確保し、水も手に入れることが出来た。
後は脱出するだけだ。
「あ、そうだ。恵里香、コレ持っててくれ」
そう言って蒼太は一本の肉切りナイフを差し出す。
「これは?」
「さっき食材漁ってて見つけた。念のための護身用だよ、使う機会は無いかもしれないが持っていて損は無いと思う」
「……わかった」
「よし、じゃあ行くか」
「……ちょっとだけここで休んでいかない?」
「うん? 十分休んだろ」
「エルマーさんを待ってようと思って」
「……10分」
「……ありがと」
それ以上は待っていても無駄だという事は言わなかった。
走ってきたとはいえ、軽い調理と腹ごしらえまでしてこなかったのだから絶望的なのは恵里香もわかっている。
ほんの少しの希望を込めた我儘だ。
蒼太もそれを理解してるからこその10分。
恵里香の願いも空しく、エルマーが来ることは無かった。
苦手ならやるなよと自分でも理解してます。
アンジェリーナのシーンはこっちの方が良かったので……。
ゾンビもののテンプレ結構入ってます。
お気に入りの回。
お付き合いいただきありがとうございました。




