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軋轢魔法少女イリーガル・ストライプ  作者: 井土側安藤
エンドレス・フェイト
37/37

終――

 世界から軋轢魔法がほとんど消え、全ての戦いは終わり、私達もようやく普通の人間として生きる事ができるようになった。

 だが、私達が世界に残した爪痕は、あまりにも大きかった。


 洗礼教会の一部や、多くの人々が私達の保護を提案したが、縞違リョウナはそれを断った。私はこの体に残った力で、まだ軋轢魔法で苦しみ続ける人々を救いたいと言った。私も、彼女に着いて行くと言い、多くの人々がそれを後押ししてくれた。

 それでも、全ての人に歓迎された訳ではない。時には異邦人として追い払われたり、捕虜として捕まったり、死の危険に晒される事もあった。だがそれらは全て、彼女にとっては苦痛ではなかった。いつも笑って、困っている人の前に現れては、その人達を笑顔にしようと一生懸命に頑張る。たとえどれだけ拒絶されても、救えない命を目の前で失っても、彼女は諦めずに、時には自分はお節介なだけな奴だと自嘲しながら、その道を歩き続けた。

 そんな彼女の姿を見て、私もそうなりたいと思った。決して簡単な事ではない。彼女は本当に自分と言う存在を捨てて、ようやくそうなる事ができた。何もかも、自分のこれからの人生全てを棒に振って。それは恐かった。だが、彼女の笑顔で、誰かが笑顔になる瞬間は、この暗く荒廃した世界の中で最も美しく思えた。そんな瞬間を、私も作りたいと思った。


(中略)


 とある紛争地帯へ向かった。

 そこの、あまりにも不衛生で環境の悪かった難民キャンプで医者の補助、怪我人の手当や物資の補給を手伝った。いつもの光景だった。子どもたちは私達を恐れて、大人達は私達を邪険に思う。心を開く者も少なくなかったが、それでも、やはり私達は得体の知れない異邦人だ。彼女は諦めずにコミュニケーションを取り続けた。そう都合よくいかないものだ。寝る場所は与えられず、共に行動する事も禁じられていた。やはり、軋轢魔法の影響はまだ大きいようだ。人々の心は異様なほどに他人を恐れていた。特に、この場所ではそれが顕著だった。

 荒れ地の上、小さなシートを敷いて、野宿を行った。どんな時にでも強く、芯のある瞳をしていた彼女だったが、その顔には少し疲れの色が見えていた。休む事無く何十年も他人の為に働き続けたのだ。ここまで何一つ疲労を見せなかった事が異常だ。その、異常な体力も、限界が訪れようとしていた。本人は否定した。少し休んだ方がいいと私は提案したが、見回りを行わなければならないと彼女は断った。

 その直後、彼女はキャンプにいた兵士に射殺された。それが、敵と間違えてだったのか、故意だったのか、それは今となっては分からない。

 ただ、縞違リョウナは今際の際、最期にこう言った。


「それでも、こうして生きる事ができて、私は幸せだった」




                ――――引用 『滝反背人の手記』から一部抜粋

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