第七章 コントラスト4
黒煙が舞う中、ルナの剣が振り下ろされた。
ドスッ。
鈍い音が響き、
砂埃が爆ぜるように更に舞い上がった。
リフレは満足そうに大笑いした。
「はははっ! よくやったわ、ルナ!
これで邪魔者が一匹減った!
ふふ……あなたも“完璧な勇者”に近づいたわね!」
だが──
ルナは剣を振り下ろした姿勢のまま、
微動だにしなかった。
リフレは眉をひそめる。
「……? 何をして──」
そのとき、風が吹き、
砂埃がゆっくりと晴れていく。
そして──
リフレの笑顔が凍りついた。
ルミナが倒れていたはずの場所に、
片膝をつき、
ルナの剣を受け止めている男がいた。
サンだった。
その後ろでは、
アリスがルミナを抱えて走り去っている。
「ちょっと! 私、肉体労働のキャラじゃないのよ!!
重い! ルミナ重い!!」
アリスが叫びながらよろめく。
サンはふっと笑ったが、
すぐにルナを睨みつけた。
「……お前、何やってんだ」
ルナは答えない。
ただ、剣に力を込めた。
ギギ……ッ
剣が黒く光り、
重さが増していく。
サンの腕から、
メリメリと骨が軋む音がした。
「ぐっ……!」
苦しそうに俯きながらも、
サンはルナを見上げ、
片目を細めて笑った。
その片目は、
鋭い光を放っていた。
「……お前、何企んでるんだ」
ルナが低く言うと、
サンは首を少し傾けた。
その瞬間──
サンの背後で、
眩しい閃光が走った。
シュッ!!
白銀の光がサンの首をかすめ、
そのままルナの剣を弾き飛ばした。
「っ……!」
ルナは手を押さえ、
光の元を睨む。
そこには──
アリスに抱えられながら、
必死に手を伸ばし、
次の光を放とうとしているルミナがいた。
その光は、
まるで空気を裂くような鋭い閃光だった。
「ルミナ! 動かないでってば!!
落とすでしょ!!」
アリスが叫びながらよろめく。
ルミナの放った閃光はルナの足元に着弾し、
砂埃が再び舞い上がる。
---
リフレはその光景を見て、
顔を引きつらせた。
「……なんで……?
予言が……こんな……はずじゃ……」
リフレは ボサボサの髪を掻きむしった。
爪が頭皮を引っかき、
髪が何本も抜け落ちる。
その姿は、
“予言”という絶対の拠り所を失った狂人そのものだった。
---
ルナは舌打ちし、
弾かれた剣を拾い上げた。
砂埃がゆっくりと晴れていく。
しかし──
そこには、
誰もいなかった。
サンも、
アリスも、
ルミナも。
全員、
跡形もなく消えていた。
---




