表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月と二人の勇者  作者: あると


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
45/68

第七章 コントラスト2

「死になさい」

リフレが指を鳴らした瞬間、

空気が震えた。

無数の衝撃波が、白い軌跡を描いて放たれる。

地面が黒焦げになり、

木々が粉々に砕け散る。

「っ……!」

足元で衝撃波が爆ぜ、

土が大きく抉れた。

耳がキーンと鳴り、

視界が揺れる。

ルミナは悲鳴を上げ、

体勢を崩した。

「おい、集中しろ!」

ルナの声が飛ぶ。

その声に振り向いた瞬間──

「バカ、前を見ろ!!」

はっとして前を向く。

巨大な衝撃波が、

一直線に私へ迫っていた。

――死ぬ。

本能がそう叫んだ。

反射的に目を固く閉じる。

次の瞬間。

バコンッ!!

鈍い衝撃音。

風圧が頬を切り裂き、砂埃が舞う。

恐る恐る目を開けると──

ルナが私の前に立ち、

衝撃波を弾き飛ばしていた。

「……ありがとう」

震える声でそう言うと、

ルナはゆっくりとこちらを振り返った。

その顔は──

いつもと違った。

怒ってもいない。

笑ってもいない。

ただ、

何かを決意したような、

静かな無表情。

胸がざわつく。

「え……?」

ルナの手が、わずかに震えていた。

何かを言いかけて、

唇が動く。

でも、言葉にはならなかった。

その無表情のまま──

ルナの剣が、私の胸を切り裂いた。

「――っ!」

生暖かいものが飛び散り、

視界が赤く染まる。

痛みよりも、

理解できないという感情が先に来た。

なんで。

どうして。

私、何かした?

「……やだ……やだよ……」

声にならない声が喉で震える。

呼吸が苦しい。

胸の奥が冷たくなっていく。

ルナの顔がぼやける。

その目が──

揺れているように見えた。

悲しそうに。

「……なんで……?」

手を伸ばそうとした。

でも、力が入らない。

指先が震え、

空を掴むように宙を彷徨う。

世界の音が遠ざかる。

衝撃波の轟音も、

リフレの笑い声も、

ルナの息遣いも。

全部、薄い膜の向こう側に消えていく。

心臓の鼓動がゆっくりになる。

ドクン……

……ドクン……

…………ドクン。

視界の端が白く滲む。

その瞬間。

光が弾けた。

走馬灯のように、

この世界で起きたすべてが、

最初から頭の中を駆け巡る。

そして私は、

ゆっくりと地面に倒れ込んだ。

---

ルミナは地面に倒れ込み、

薄れゆく意識の中で、遠くで何かが爆ぜる音を聞いた。

「……っ」

爆風が背中を押し、

私は薄く目を開けた。

横目に映ったのは──

燃えている家。

私の家。

私たちの家。

焦げた木の匂いが、

鼻の奥を刺すように入り込んでくる。

パチパチと弾ける音が、

まるで家が泣いているように響いた。

熱風が頬を刺し、巻き上がった砂埃と黒い煙が視界を奪っていく。

涙が乾く前にまた溢れた。

「……やだ……やだよ……

私たちの……思い出なのに……」

弱々しい声が漏れた。

そのとき。

ルナが、

私に向けて剣を構えた。

ゆっくりと、

迷いなく、

振り下ろすために。

時間がゆっくり流れた。

胸の奥がぎゅっと縮む。

怖い。

怖いに決まってる。

死ぬのは嫌だ。

痛いのも嫌だ。

まだやりたいことも、言いたいことも、たくさんある。

でも──

燃える家の赤い光に照らされたルナの横顔を見た瞬間、

胸の奥の恐怖が、すっと薄れていった。

ああ……そっか。

怖い……

でも……

ルナなら、いいや……

そう思った。

寂しそうに微笑んだ。

その微笑みは、

涙がこぼれる直前の、

壊れそうなほど弱い笑みだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ