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第7話 4/25(木) 頼れる仲間たち 中編

 柚葉は正記たちに説明を終えると、名取に手袋と透明な入れ物を渡した。


「どーせ『ナイトメア』が発生したら、フィールドワークに行くんだろ? 新調したから使え」


「どーも。さすが、わかってるねー」


 フィールドワークとは、多分名取の異能力『分析』で、いろいろ調べることなんだろう。でも、『ナイトメア』のことは、目に収まらないから調べられないのでは?

 正記はその疑問を、名取に聞いた。名取がそれに答える。


「『ナイトメア』そのものは調べられないけど、土一握りとか、水一杯とかなら、『分析』の対象になるんだー。でも、『ナイトメア』そのものの正体に迫れるかはわからないから、地道な作業なんだよねー」


 それでも、話している名取のけだるさの中から、諦めない芯の強さを感じた。

 そして、それを理解し、名取を後押しする柚葉の存在も大きい。2人は兄妹であると同時に、息の合ったコンビだ。

 正記は思った。僕もいつか、明くんともっと息の合うバディになれたらなぁ……


 するとその時、コンピュータルーム中に警報が響いた。一番大きなモニターに、来戸町の地図が映し出され、一部が赤い線で囲まれていた。

 情報収集班の女性が、柚葉に報告する。


「班長! ナイトメアレーダーに反応が! 場所は来戸町1丁目の、星ヶ丘という住宅街です!」


 柚葉は真面目な顔つきになり、冷静に判断を下す。


「よし、館内に警報と放送を頼む! 現場にヒーローが3人向かっていることも付け加えておいてくれ!」


 続けて、柚葉は正記たちに顔を向けた。


「そーご、明、正記、行けるか?」


 正記たちは頷いて答える。

 すると、柚葉はこんなことを言った。


「頼んだぞ。……死ぬなよ」


 柚葉の精一杯の励ましと心配を受け、正記は明、名取と共に、星ヶ丘に向かった。


 正記たちが星ヶ丘に到着した。『ナイトメア』に入ろうとした時、後ろから小学生くらいの男の子に声をかけられた。


「あの、すみません! 弟を見ませんでしたか? 小学2年生の男の子なんですけど……」


 その質問に、名取が疑問を持ち、優しく答えた。


「ごめん、見てないな。弟くん、どこでいなくなったの?」


「追いかけっこをしてたら、いつの間にかいなくなっちゃったんです。僕が、目を離したから……」


 男の子は今にも泣きそうになっている。そんな男の子の頭を、名取は優しく撫でた。


「俺たちも探してみるから、君はお家にいてくれる? 大丈夫、きっと見つかるから」


 男の子は涙をこらえて頷くと、名取の言う通りに、家に向かって走り去った。

 名取は男の子が見えなくなると、自分の推測を、正記と明に伝えた。


「多分、あの子の弟くん、『ナイトメア』に巻き込まれたね。急いで探すよ」


 名取の指示に従い、3人は『ナイトメア』の中に足を踏み入れた。

 その『ナイトメア』には、開けた平原と赤い空の中に、川と湖があった。初めて見る光景だ。

 すると、近くから悲鳴が聞こえた。声のした方に目をやると、男の子が1人、怪物たちに湖のほとりまで追い詰められていた。男の子の左足からは、血が流れている。

 さっきの子の弟だ! 助けないと! 


「オープン!」


 名取が即座に弓矢を構え、怪物たちを倒してしまった。な、なんという反射神経……

 って、そうじゃなくて! 正記たちは男の子に駆け寄ったが、男の子は気を失っていた。しかし、息はしている。生きてる……! よかった……!

 正記と明で応急処置をする間、名取が無線で状況を報告する。


「柚葉、聞こえる? 『ナイトメア』に巻き込まれた子どもが1人、左足を複数箇所ケガしてる。紗良さんに出動を頼んで」


 応急処置に手慣れている明の横で、正記は慣れない手つきで、男の子の足に包帯を巻いていく。少し不恰好だが、初めてにしては、まあまあ良くできたと思う。……明が少しばかり、手直ししたのだが。

 そう満足していた、その時だった。湖の方から、何か音がした。すると、水面が大きく揺れているのが見えた。


 この湖、何かいる!


 危険を感じた3人は、男の子を抱きかかえて、湖から離れた。

 すると湖から、体が水でできた、巨大な怪物が出現した。おそらく、ヌシだ! 

 しかし、正記が今まで見たヌシの中でも、かなり大きい……! でも、この男の子を守るためにも、やるしかない!

 名取が『分析』を発動し、情報収集の体勢に入った。その間に、明が炎で牽制する。

 しかし、ヌシの体が水でできているせいか、明の炎はヌシに当たった瞬間消えた。ダメージを受けている様子もない。

 名取の目の色が元に戻ったが、あまり成果のある表情をしていない。


「ダメだ……! あいつ、湖や川と一体化してて、それ全部を目に収めないと、分析できない……!」


 そんな……! これじゃあ戦いにくい……!

 そこに明も合流する。


「炎もダメだ。水と相性が悪すぎる」


 正記は悟った。この戦い、こちらが圧倒的に不利だ。唯一、打開策があるとすれば……正記は自分の手を見つめた。

 すると、ヌシは周囲に水の刃を作り出し、正記たちに向かって放った。名取が水の刃の危険性を感じ、即座に指示する。


「伏せろっ!」


 3人はすぐに伏せたが、正記は後ろに横たわる男の子が無防備なことに気づき、とっさに男の子の上に覆い被さった。

 水の刃が、正記の背中や腕、足をかすめた。正記はうめき声を上げたが、それでも男の子のことを気にかけていた。


「大丈夫そう、だね……よかった……」


 正記はその場に倒れた。痛みで立ち上がることができない……

 その中で聞こえたのは、明と名取が、自分を呼ぶ声だった。


「正記!」

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