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聖女はとっくに召喚されている。日本に。【コミカライズ】  作者: 守雨
第一章 魔法使い、日本に放り込まれる

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12 道祖神と杉の木

「おじいさーん。ねえ、起きてるんでしょう? おじいさーん」

「わしはお前のおじいさんではない」

「そういうやり取りはいらないの。ねえ、おじいさん、この神社に他の世界の魔法使い、来た? お守り買ったって言ってたけど」

「お守りを買った娘ならいたな。茶色の髪と瞳の娘だ」

「それそれ」


 しばらく間があり、杉の木が返事をする。


えきが狙っておった」

「えっ。疫が? ああもう、毎年毎年あいつはさぁ。それで、あの子は大丈夫だったんだよね?」

「宮司が退治した。役に立つな、あいつは」

「宮司さん、お歳だけど凄腕だもんね」

「だがあいつももう長くはない。人間はすぐに死ぬ」

「しょうがないよ。杉の木ほど長生きできる人間はいないからさ」


 そこで杉の木の幹からふわりと六十歳ほどの男が出てきた。そしてちょうど境内に入って来た老夫婦の方をちらりと見た。


「お前が木としゃべってると怪しまれる。面倒だが人間の姿になってやったぞ」

「助かります。おじいさん、あの子を守ってあげたいんだけど」

「疫を防ぐのもお前の役目だしな」

「それもあるけどさ、僕、そろそろ危ないんだ。誰も信仰しなくなったから、石が割れるかもしれないの」


 杉の木は慈愛の眼差しをアキラに向けた。


「最後に手を合わせてもらってから何年が過ぎた?」

「最後に手を合わせてもらってから? 冬至が三十五回過ぎた。人間の信仰心が無いと、僕はただの石に戻っちゃうからさ。割れるのも早くなるんだよね」

「そうか。人間を恨むなよ。あれらはあっという間に死んでしまうから忙しいのだ」

「恨んだりしないよ。仕方がないことだもの。でも、あの子が頭を撫でてくれるんだ。何十年ぶりかに撫でてもらったんだ。僕に手を合わせないのは他の世界の神に遠慮してるみたい」

「律儀だな」

「うん。律儀なの。おじいさん、あの子、どうやらこの世界の悪いものが見えないみたい。あんなにいい匂いをさせてるんだもの、危ないよ」


 男性は短い白髭の生えている顎を撫でて考えこんだ。


「わしの小枝をお前にくれてやろう。それを身につけさせなさい。疫くらいなら弾くぞ」

「いいの? 悪いね」

「ふふふ。最初からそのつもりで来たんだろうが」

「あっ、ばれてた」


 二人の近くにパサリと小枝が落ちてきた。


「貰っていくね。ありがとう」

「宮司に見られる前にさっさと行きなさい」

「はい。そうします」

「道祖神よ。決して人を恨んではならんぞ」


 アキラは何度か目を瞬いて男性を見た。


「人を恨んだら人に害為すものになってしまうよ。それだけは嫌だ。だから恨まないよ」

「うん。それがいい」


 アキラはこの近所に住んでいる大学生の家を目指した。その大学生の家には小さなノコギリ、キリなどの工作道具があるのを思い出したからだ。


◇ ◇ ◇


「前田くーん、いるぅ?ちょっと道具貸してぇ」

「おお、アキラ。いいぞ。好きに使え」


 工業大学二年の前田はアキラを家に招き入れた。

 自分は延々とゲームをしていて、アキラがごそごそと何かやってるのには関知しない。やがてアキラは礼を言って帰って行ったが、前田はテレビ画面に集中していて上の空で返事をして見送る事もしなかった。


 やがてオンライン対戦ゲームを終えて、「さて夕飯でも」と立ち上がった時、ふと小さな疑問が胸に湧く。


「あれ?そういえばアキラって何科の何年生だっけ?」


 よく考えれば時々こうして会話するが、そもそもアキラとどこで知り合った? 

 あいつの苗字は?

 ていうか、いつから知り合いだった?


 アキラの記憶を取り出そうとしても、なんだかぼんやりして思い出せない。

(まあいいか。たいしたことじゃないし)と思い直して鍵を手に取り部屋を出た。歩き出した時にはもう、アキラのことは心の中から消えていた。





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『コミック 聖女はとっくに召喚されている。日本に。』
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