【回想】怪我し放題なコイツは『塔』
暖かな日差しに誘われ、休み時間に入ってもシンは自分の席で居眠りをしていた。
「ねえシン聞いて!」
大声の呼びかに見上げるとテイが立っている。しかし胸の大きさに邪魔されテイの顔はシンの角度からは見えなかった。その横からフウ。
「シンも絶対俺に賛成するって!」
なに、とシンは二人を見上げる。
「私ってタロットが『女帝』じゃない?」
「そんでこいつ、性格も女帝っぽいよなって話してたんだよ」
フウはテイを指さす。テイは自分の体を抱きしめた。
「なんかやだ! そんなこと言ってさぁ、フウだって愚者っぽいよね」
目力でシンに同意を促してくるテイ。
「愚かは悪口だからだめだろ! それでなくても愚者ってだけで馬鹿扱いされんのによ」
口を尖らせるフウ。
「実際……ねぇ」
シンが気の毒そうな顔でフウを見る。
「血液型でも、たとえばA型は真面目みたいにあるからさ。二人もだから、少なからず似てるんじゃないかな」
会話に混ざってきたのはテン。
「テンまでそういうこと言うのね! ふんっ!」
テイはそっぽを向いてしまう。フウもふてくされて、テンとシンは二人を笑った。
「テンは確か節制だったよね」
話題を変えようとテイが聞く。
「それって節約みたいな意味だろ? ぴったりじゃん。でも俺としては、タロットと人間が似るのは困るけど」
横から話に入ってきたのはトワ。中肉中背で短髪黒髪、ピアスは無しで平均顔。
「トワは『塔』だもんな。平均寿命五十歳らしいぜ……ネットで見た」
フウの発言にトワは顔を青くした。
「勘弁してくれよ。戦国時代かって……。確かにタロットが『塔』の人はケガや死亡の確率がうんと高いけどさー。一応『塔保険』には入ってるけど、金が欲しいわけじゃないんだよ」
「塔保険ってあの、最近CMで良く聞く『とう、とう、塔保険! これでケガし放題!』ってやつでしょ」
テイが聞く。
「それそれ。不謹慎ってんで、そのCMもうやってないよ。ところで前から思ってたんだけどさ、シンはタロット何なわけ」
「俺は『審判』だけど」
「審判かぁ。シンは審判ぽくないね。むしろ授業中ぼうっとしすぎて先生に裁かれる側だろ」
シンは心臓が跳ねる。
「さ、裁かれる側? そうだ、な……」
気が済んだようにトワは話の輪から離れていく。その後テイが、声を潜めて「なんかアイツ嫌」と言った。
「テンの家の事情をバカにしてたもの。それにシンのこともさ、私たちが言うのはいいけど他の人から言われるのはちょっと……。そうよ、二人の顔が良いからやっかんでるんだわ」
テイは両手を打つ。
「初めて言われたよ」
シンは何とも思っていなさそうに振る舞いつつも、さり気なく髪をなでつけた。
「なぁ、なぁ俺は?」
女子からどう見えているか気になるフウは自分を指す。
「二人とも気にしちゃだめよ」
励ますテイに、二人は微笑んだ。柔らかな日差しが教室に差し込む。シンは眩しそうに目を細めた。
「なぁ俺も…………褒めてよー」




