#12 歴代最強の剣士
全員が道場に入ったのを確認してアルの家のメイドさんがドアを閉める。
本物の剣では危ないということで、木刀をもって、アルと向かい合う。
「始めっ」
メイドさんがそう声を上げると、戦いの火蓋が切っておとされる。
まず、アルがばか正直に頭を狙ってくる、それを木刀で受け止め弾き返すと、がら空きの胴をとろうと横から一直線に狙うが、ギリギリの所で、アルが下がる。さすがは歴代最強と言われるだけあるな。
しっかりと稽古を積んでいるようで、なかなか隙がない。軽く打ち合うがどちらもせめてに欠いている。
ルールでは二十分決着がつかなければ引き分けとしたが、引き分けではなく勝って終わりたい。
この世界にも剣道はあるらしく、ルールも大体一緒だった。
攻めては守り攻めては守りを繰り返していると、アルの足が少し止まった。
そこを好機と見ていっぱいに踏み込み胴を狙ったが、難なく受け止められ、そのまま、頭に
「そこまで。二十分経過しました。よってこの勝負引き分けとします」
助かったー。もう負けたかと思った。いや、絶対に負けてたけど……
「ありがとうございました。流石歴代最強と言われることはある。俺の完敗です」
「こちらこそ、でもマサトくんも強かったよ」
「いえ、またしっかりと稽古をつまなきゃいけませんね」
「で、依頼の件なんだが」
依頼? ああ、そっか俺達依頼で、来てたんだな、すっかり忘れていたな。こっちの世界に来てから強い相手がなかなかいなかったからな。楽しんでいたし依頼のことすっかり忘れていたんだよな。
「それで、報酬なんだが、白貨十枚どうでしょう?」
「は、は、は、は」
「ははは白貨、じゅじゅじゅ十枚!」
おーいどうしたー?
あ、ティーナが倒れた。なんかあったのか?
アルなんか苦笑いしてるし。え、状況わかってないの俺だけ? 誰か教えてくれよ。
「お、おいリーナ。どうしたんだ。そんなに慌てて?」
「どうした? って、何でマサトはそんなに平然としているのよ白貨よ白貨」
「白貨?」
「それがどうしたみたいな顔で聞き返さないで。いい、白貨ていうのは一枚で金貨十枚の価値で普通は手に入らない物なのよ」
き、金貨十枚! 元の世界だと金貨一枚が十万円の価値があるから、一千万円!
ダメだ絶対手に負える金額じゃねえ。ここは全力でお断りしないと。
「そ、そんなに悪いですよ。ただ手合わせしただけじゃないですか」
「いや、これくらい貰ってくれ、僕は君が来るまではっきり言って退屈していたんだ。同年代にライバルとよべるほどの人がいなくてね。だから君との勝負は楽しかった。これは僕のライバルへのお礼だから気にしないでくれ」
いやいや、気にしないでくれって。一千万円ですよ。そんなのがいきなり転がり込んできても困りますって。お願いだから察してくださいよ。
「お願いだ受け取ってくれ。ただが嫌だというのなら、また都合の良い日に、家に来て手合わせしてくれたら良いから」
「頼むよ受け取ってくれ、これは僕の感謝の気持ちなんだから」
ねえ、もう三十分位たってるでしょ、いい加減諦めてくれよ。一千万円ももらえないって。
「ねえ、マサトもう受け取って上げたらどうなの? こんなに必死になってるのに断ったらかわいそうだよ」
「そうだ、そうだ、頼むから受け取ってくれよ」
「いや、でもな……」
はー、もう帰りたいし、一千万円考えたら貰ってもいいかも知れないな。
まあ、手合わせしただけで一千万円貰えるって条件は良いし宝くじが当たったって考えればいいのか、
じゃあ、貰ってもいいか。
考えてみたらこっちに不利な条件なにもないし、何で反対したんだろ?
「わかりました。じゃあ、ありがたく貰っていきます」
「ありがとう、マサトくん。これからよろしくね」
白貨を受け取り、朝来たときとに通された食堂へ入る。
もう夕食の時間になっていたようで、とてもお腹が減っていた。
アルが「一緒に食べよう」というのでお言葉に甘えて一緒に食事を取ることにした。
「でも、マサトくん、本当に強かったね。最後終了の直前僕の足が少しだけ止まった事に気づいたんだろ」
「ああ、でも結局はアルの罠だったけどな」
あのときは一瞬「勝てた」と思ってしまったが、それまで計算されていたとは思わなかった。
自分の甘さを痛感させられた。あそこで「勝てた」と思わずに反撃の体勢をとっていれば負けずに済んだかも知れない。命を懸けた戦場じゃなかったから良かったものの一歩間違えれば死ぬかもしれないのだ。
つくづく「もっと稽古に励まなければ」と思わされる。
「え、あの時アルは足が止まったの?」
「ああ、ほんの一瞬、足が止まった。だから好機と見て、決めに行ったんだけど、そこまで予測された上で反撃を受けたんだ。結果は引き分けでも事実上俺の完敗だよ」
「いや、マサトくんは充分強いよ。普通はあそこで足が止まるのなんて気が付かない」
メイドさんが食事を持ってきたので、そこで一旦話は中断し夕食を食べることになった。
お金持ちは高い食材を買うのかと思ったが、食材に関しては普通の市場で買うそうだ。
お金持ちにも色々あるんだろう。
食事をおえてしばらく話をしていたがリーナが眠たそうにしているのでそろそろ、帰ることにする。
「アル、そろそろ帰るわ」
「そうか。今日はありがとう、また時間ある時は一緒に稽古しないか?」
「わかった。暇な時があったら気が向いたらくる」
そういいながら食堂を出る。
帰り支度を済ませ門を出るとすっかり辺りは暗くなっていた。
「今日は有意義な時間を過ごさせて貰ったよ。ありがとう」
「こちらこそありがとう。次は負けないからな」
「アルティネスさん、おやすみなさい」
今日、来たばかりの時に比べてティーナは恐縮せずに喋れるようになっていた。
「おやすみ、アル」
リーナは口数は少ないがアルに恐縮はしていないようだった。
俺達が歩き出すのを確認して、アルは家へ入っていった。
「いい人でしたね」
「お金持ちのイメージ崩れたよ」
「そうですね。そういえばマサトさん、亡霊魔剣士を倒したってほんとうですか?」
「ああ、何かクエストのついでに倒してしまったらしいんだよね」
「やっぱりマサトさん、強かったんですね」
「ねえ、この話朝もしなかった?」
「はい、しましたけどにわかに信じられなくて」
まあ、この世界でも俺の剣術は通用するみたいだし、もっと稽古に励まないといけないな。
でも、その前に今日は早く帰って暖かい布団で眠りたい。
異世界っていいですね、書きやすいです。
今回はいかがだったでしょうか。
もう一つ異世界物をやろうと書いているんですが、なかなかアイディアがでなくて……
そんなことはおいといて、そろそろ第二章に入ろうと思います。
まだ明確な敵は出てきませんが、敵の名前等はすでに決まってます。
今回もお付きあいいただきありがとうございました。
次回は八月二十日十時頃投稿予定です。




