懸案の「開かずの間」
屋敷に戻ると、
「ふぅ~」
第一声は、ため息だった。というのは、夜も遅く、日付が変わりそうな時刻になっていたから。すなわち、ニューバーグ男爵に実行委員会の経過を伝えて早々に引き上げるつもりでいたら、ツンドラ候に見つかって、いつものようにドンチャン騒ぎにつき合わされちゃったということ。プチドラは酔っ払って赤い顔、気持ちよさそうに、わたしの胸で寝息を立てている。
執事はコップに冷たい水を入れ、
「カトリーナ様、お帰りなさいませ。お戻りになって早々に申し訳ないのですが、実は……」
「あの怪しげな物音でしょ」
地下方面からズシンとかバタンとか、さらにはヒィーという悲鳴のような音もしている。ただ、今日は、心なしか、この前よりも激しいようだ。
「実害はないのですが、使用人たちは怖がっていますし、このままにしておくのはいかがなものかと……」
「そうね。怪しいといえば、あの『開かずの間』。今日こそ調べてみるわ。あなたは、もう寝ていいわよ」
「かしこまりました。では、あとはよろしく」
執事が退出すると、わたしはプチドラの背中をたたき、
「プチドラ、起きなさい」
「うにゅ? なに、まぁすたあ……」
「しっかりしてよ。聞こえるでしょ、あの音。これから懸案の『開かずの間』を調べるわ」
「へっ?」
まだ酔いが覚めないのか、プチドラは口を中途半端に開け、きょとんとしている。
「行くわよ」
わたしは片手でプチドラを抱き上げ、もう一方の手でランタンを持ち、「開かずの間」に向かった。屋敷に住んでしばらくたった今では、さすがのわたしでも、屋敷の中で迷子になることはないだろう(と思う)。
そして、「開かずの間」を前にして、
「あの、マスター、これはやはりマズイのではないかと……」
「マズイって、何が? 本当にマズイかどうかは、このドアを開けてみないと分からないわ」
「う~ん、でも……」
プチドラは、なぜだか「開かずの間」が絡むと消極的。でも、使用人たちが怖がって逃げ出すのは困るし、このまま何もしないわけにはいかない。わたしが半ば命令口調で強く促すと、プチドラは、渋々、何やら「ごにょごにょごにょ」とつぶやいた。多分、魔法の呪文だろう。




