挙動不審
プチドラが呪文を唱えると、ドアは音を立てずにゆっくりと開いた。恐る恐る中を覗き込んでみると、ドアの向こうは真っ暗闇だ。プチドラはわたしを見上げ、
「ねえ、マスター、やっぱりやめようよ。危険だよ」
「危険かどうかは入ってみないとと分からないでしょ。それに、ここまで来て後戻りはできないわ」
わたしはもともと臆病な性格だから、正直、部屋に入るのは非常に怖い。でも、部屋の中に何があるか興味はあるし、地下方面から聞こえてくる怪しい物音も気にかかる。今回は好奇心が恐怖心に勝利し、わたしは「開かずの間」に足を踏み入れた。
ランタンで照らしながら、ひととおり部屋の中を見回してみたが、取り立てて変わったものはなかった。というか、部屋は完全な空室で、家具や調度品は置いていない。何もないところがかえって怪しかったりもするが、床は埃でおおわれていて、歩くごとに埃が舞う。
「マスター、当てが外れたんじゃない? 何もないよ」
「そうね」
結局のところ「開かずの間」は見掛け倒しだったのだろうか。そんなはずはないと思うのだが……
その時……
ぐぇぇぇぇーーーーー!!!
それほど大きな音ではないが、明らかな悲鳴が、足元から部屋中に響いた。
「プチドラ、今のはなんだろう?」
「この部屋で非業の死を遂げた人の怨霊かもしれない。早く出ようよ」
そうかもしれない。でも、なんだか、さっきからプチドラはおかしい。リラクタント過ぎるような……
「ねえ、プチドラ、あなた、ひょっとすると何か知ってるんじゃないの?」
「いや、それは…… ボクはね、本当は気が小さいんだ」
気が小さいって…… これは明らかに嘘っぽい。
わたしはランタンで照らしながら、床を嘗めるように見回した。すると、
「あれっ!?」
一部分だけ、床が小さく盛り上がっているところがあった。その部分の埃を払うと、驚いたことに、その盛り上がりは取っ手だった。すなわち、床には扉が設けられていたのだ。
「あちゃー……」
プチドラは手を顔に当てた。でも、いくらなんでも、ここまでくれば怪しすぎるだろう。




