【小話】回復魔法って便利!!
「痛ぇ」
寒く乾燥した時期が来ると誰しも経験するささくれ。今宵も俺の健やかな生活の邪魔をしている。クソ!なんていまいましい!
(ピコーン☆)
俺の頭に電流走る。
ささくれ…多分、分類的にはケガだろう。それなら便利なヤツがいる。そう、我らがポンコツ魔法使いミリーだ。
思い立ったが吉日。俺はすぐさまミリーの部屋のドアをノックする。
「おーーーうぃ、いるかぁ~?」
中々返事が無いので両手で太鼓を叩くようにノックを開始。すると、中からかすかに「うぅ~、やめてくださぁい…」と眠そうな声が聞こえた。なんだコイツ。もう昼近くになり、昼ご飯の香りが漂い始めているというのにまだ惰眠を決め込んでいるとは、なんとも業の深い話だ。
「んむむむ…なんですかぁ?」
ドアが開かれ、目を擦りながらミリーが出てくる。
「俺ささくれできちゃってさー、治してくれない?」
「そ、そんなことに回復魔法を使うんですか!?…まぁいいですけど。まったく、回復魔法を使える人は貴重ですし、魔力の消費だって多いんですからね?ほら、手を出してください」
彼女はいかにもしぶしぶと言った様子で事に当たっているのだろうが、俺から見れば「頼りにされてうれしい!」と言う心情が駄々漏れだ。
何てったってすごいニコニコしてる。
「おーっとっとっと?いつもの技名はいいのか?」
「ハッ!?忘れてました!『回復』!」
なんて適当な…。
「はい、治りましたよ!こんな軽症で呼ぶものじゃないんですが…」
ほわぁと温かい光を手に宿すと、ささくれは綺麗さっぱり消失した。いやぁ素晴らしい。
「すっげぇ!サンキューミリー!…なぁなぁ、回復魔法ってさ、そのぉ~身体の表面って言うのかな?ほら、皮膚とか以外の不調もいけるのか?」
「不調、ですか?んー、寿命だとか大きな病気だとか以外なら大抵治せると思いますけど…」
「じゃあさ!昨日から地味に痛いこの口内炎もいける!?」
「えっ、口内炎?まぁ治せますけど…『治癒』!」
指先を向けられ、口の中のしみるような痛みが消え去る。へぇ、こりゃあ良い。
「すげぇ!じゃあこの、昨日の夜に足の小指をタンスにぶつけた後の地味なじんじん感は!?」
「気持ちはわかりますがそこまで…『再生』!」
「あーあと最近ベルトの部屋で本読みすぎて肩こりと目が疲れちまってさ!」
「私はマッサージ師じゃないんですよ!?…『ヒール』!」
フハハハハ!い~い気分だ。俺の些細なストレス源を一気に解決。やっぱヒーラーは一家に一台欲しいな。
「最後の仕上げだ!今朝からなんとなく重いこの『だるさ』と『やる気のなさ』も治してくれえーー!!」
「それはただの怠惰です!!魔法の無駄遣いさせないでください!!」
「ぐほぁ!?」
さすがにやりすぎたか。もはやなんの魔法かわからない衝撃により部屋の外まで吹っ飛ばされた。
手すりに背中を強打し悶絶する。
「あ~、背中痛ぁあい、回復魔法かけて~ww」
『その痛みは自分の怠惰への罰だと思ってキッチリ付き合ってください!!』
ドア越しにミリーが叫ぶ。
「あーあ、治してくれたら昼飯分けてやろうと思ったのになぁ~!今日の料理番はベルトだぞぉ~?アイツの飯はウマイぞ~?」
「私が悪かったですすみませんでした」
コイツの扱いも慣れたもんだ。
こうして現金な魔法使いを無事に釣ることに成功した俺たちは、漂う香ばしい匂いに誘われるままオフィスへと向かった。
「ほらよ、約束のブツだ」
「やったー!ありがとうございます!」
散々わがままを聞いてもらった対価として、俺はベルト手作り料理のメインとなり得る肉料理を渡す。
「おや、ショウくん、何か賭けにでも負けたのかい?」
差し出された肉料理と歓喜するミリーを交互に視線で往復させ、ベルトが面白そうに目を細めた。
「私がショウさんのささくれや口内炎を回復魔法で治してあげたんです!」
ミリーが自慢げに胸を張り肉を頬張る。
「そうか、回復魔法か…!」
俺たちの会話を食べながら聞いていたテッドがふと思い付いたように呟いた。
「さっき花屋の姉ちゃんにフラれちまってよぉ、心の傷ができちまったってんで治してくんねぇか?…あとビンタされたんで普通に痛ぇ」
「失恋の傷までは効力範囲外です!自分の力で乗り越えてください!!」
最低の男が持ってきた最低すぎるトラウマに、ミリーの容赦ないツッコミが飛ぶ。
何はともあれ、いつも通りの賑やかなオフィスの昼食時間が幕を開けるのだった。
~続く~
ご一読ありがとうございました!!
私、思うのです。黒板の板書を消す時…「文字だけを魔法で一気に剥がせないかな?」とか、「カーペットの細かいゴミ、魔法ガバッと取れないかな?」等々。
ド派手な魔法というのもロマンですが、痒いところに手が届くような魔法、それもまた一つの形だと思うのです(?)。まぁ何が言いたいかと言いますと、「魔法って便r――(殴)」




