第1話:ネクロマンサー、勇者パーティーから追い出される。/勇者、知らぬ間に大好きなネクロマンサーがパーティーから追い出される〖レン視点〗
2022.2.20…1部表記を訂正
9.4…1部表記を訂正
ーアンタはクビよ!クビッ!!」
「はぁ…?」
この女は一体何を言っているんだ?
このパーティーのリーダーは誰かご存知なのかな??
勇者パーティーの蘇生役であるネクロマンサーの僕、リトは勇者であるレンが席を立ったタイミングで女格闘家からそう言われた。
正直タイミングとか話の流れとか一切なくて笑えてくるね!
が、女性陣からしたら前から決めていた事。
女騎士、女僧侶、女魔法使いも格闘家に追従する。
「なんだ、その気の抜けた声は。
全く、本当に弛んでいるな貴様は!
理由が分からないなら教えてやろう。
貴様は戦闘中、何もしないではないか!!」
いやそりゃあネクロマンサー兼治癒士である僕の役目は仲間の治療や死者蘇生だからね。
それに特化しているからね??
ただ、英霊を使ってデバフかけまくってるから本当に何もしてない訳じゃないからね???
尤も、強敵との戦いの時は何時も地面に突っ伏してる君達には分からないだろうけど。
あ、怒りを抑えてシヴァ。(デバフ担当英霊)
「肝心の治療魔法は私が居れば事足りますし、死者蘇生魔法も私だって使えます。
攻撃魔法を一切持たない貴方はもう用済みなのですよ、身を弁えなさい。」
確かに光属性攻撃魔法が使えるバトルシスターである彼女と違い、僕の魔法は治療と死者蘇生、そして英霊によるデバフに特化している。
たださぁ、僕の死者蘇生、完全回復だよ?
君のはただ生き返らせる程度じゃないか。
なんだい?戦闘中にちまちま回復魔法を追加で使って間に合うのかな?
使役している英霊の力で魔力を殆ど消費せずに完全回復の死者蘇生が使える僕と違って彼女の死者蘇生は魔力を大量消費するはずだけど、魔力足りるの??
おっと、殺気立たないでアスクレピオス。(死者蘇生担当英霊)
「その代わりだか何だが知らないけど、雑用係のつもりで荷物運びしているだけならアイテムバッグを手に入れた勇者様とあたし達にはもう要らないのよお前は!!」
あー…うん、確かに最近のダンジョンアタックでアイテムバッグを拾ったね。
それに、そもそも勇者であるレンが収納魔法ストレージを使えるしね。
ただ、僕がパーティーの財産管理やら依頼の受注、交渉事なんかしていたんだけど、何時も僕と一緒にそれらをしていたレンはともかく、君達に同じ事出来るの??
あ、コラコラ、過回復させようとしないでナイチンゲール。(治療担当英霊)
「はぁぁぁ……………………
とりあえず、あまりにもお粗末な内容に隠しきれない落胆のため息が出た。
ハッキリ言ってこのパーティー、僕とレンだけで充分なんじゃないか、まであるからね。
いや、驕りでは無く本当に。
強敵との戦いになった時、最後まで立っているのは何時もレンと僕だけ。
しかも余計なタゲ取り、変なタイミングの攻撃魔法、意味の無いバフによるレンの攻撃リズムの崩れが無くなってやりやすいくらいだからね。
だから最近じゃわざと戦闘終了まで死者蘇生しないまである。
なにより、貴族出身で選民思想がある彼女達は勇者であるレンには露骨な秋波を送っているが平民である(厳密には違うけど)僕には冷たい。
しかもレンに対しては本人が嫌がってるのにグイグイ迫る。
ハッキリ言って正しいコミュニケーションが不足している。
これじゃあ連携も何もありはしない。
僕だって最初こそ何とか仲良くして連携を取ろうとしたさ。
だけど彼女達は『平民如きが私達に取り入ろうとするな下衆が』、といった態度で取り付く島も無い。
結果的にバッチリ連携が取れているのは僕とレンの間しかない。
もうね、尊敬する人格者の国王陛下の命令じゃなけりゃレンとコンビで魔王討伐の旅をしたい位だ。
が、そんな僕のため息が余程頭に来たのか女騎士が僕に剣を向けてきた。
「…その剣はなにかな?」
「最後の警告だ。叩き斬られ無くなければ潔く去れ。」
「……………そうかい。」
…はぁ…レン……ごめんな。
僕はコレで勇者パーティーからは去るから、少しだけ耐えてくれよ…?
出来れば君が自殺して“あれ”を発動させるより、全滅して君だけが“あれ”を発動させるのが理想なのだから。
僕は、元々荷物が全てストレージで格納してあるから手荷物は殆ど無い。
そのまま席を立ち、酒場を後にした。
コレが、僕と彼女達がした最期の会話だ。
(!)視点変更:レン
ーボクがトイレから戻ってくると、大好きなリトお兄ちゃんが居なくなっていた。
リトお兄ちゃんが居ない事に、こうなる事を知っていたボクは、それでも、寂しくて、怖くて、首から提げているお兄ちゃんから預かったお守りである転移石をギュッと握った。
もう、お兄ちゃんが追い出されてしまったんだ。
そう分かってはいるけれど、それでもボクは皆にきいた。
「…あれ?リトお兄ちゃんは??」
「ああ、アイツはこのパーティーから抜けたよ。」
「えっ…?」
「実力不足で貴方に申し訳ない、だそうですよ?」
「なん…で…?」
ボクは(笑いで)震える声で返した
いや、だって、リトお兄ちゃんが実力不足って!!
笑っちゃうよね!?このパーティーの中ではボクと同じかそれ以上に強いのはお兄ちゃんなんだから!!
なんなら【EXランク冒険者】で【黄昏の死霊魔術師】の2つ名持ちで、死霊魔術で古代勇者達を使役している上に『英霊憑依』って魔術や『英霊召喚』って召喚魔法を使えばお兄ちゃんなら1人でもボクと同じかそれ以上の働きが出来るよ!!
ボクがお兄ちゃんに危ないことして欲しくないし英霊に頼って楽をしたくないって頼んだからやらないだけでね!!
そんな誰よりも頼りになって誰よりも大切で大大だーい好きなリトお兄ちゃんを追い出しちゃった!?
馬鹿じゃないかなこの人達!!!!!
正直、尊敬する王后様の頼み(本当に申し訳なさそうでこっちがきょーしゅくしちゃう)じゃなかったらお兄ちゃんと2人だけで旅をした方がもっと楽な位なのに!
お荷物はこの人達なのに!!!
っとと、馬鹿馬鹿しすぎて笑っちゃうけどそこをグッと堪えて真面目な顔をつくる。
うん、転移石があれば何時でもお兄ちゃんのそばに行けるからお兄ちゃんのことは心配してないよ?
(今すぐ会いたいけど)
あ、影さん!国王陛下や王后殿下様にほーこくよろしくね!
…多分、これが【勇者レン】としては最期になるだろうから王后様…ううん、お母さんには申し訳ないけど…………
そんなボクの心の声は聞こえるわけが無いから何も知らないおバカさんたちは楽しそうに続ける……
うん、イラッとしちゃうネ!!
ちなみに話の半分も聞いてない。
だってこの人達の話はつまらないしリトお兄ちゃんみたいに戦いの参考になる話しや、ワクワクする様な冒険譚じゃないもの。
「………分かった、それじゃあ明日の魔族討伐、お兄ちゃん抜きで頑張ろっか。」
『はいっ!!』
…返事だけは1丁前だなぁ…………
その日は魔王討伐の旅にでて本当に久しぶりに一人きりで眠った……凄く寂しくてベットで布団を被っていたのに寒く感じた………
怖くて寂しくて泣いちゃって中々寝付けなかった………
ー翌日、寝不足な上にお兄ちゃんの支援が無いボクは案の定あっさりやられ、魔族との戦いに負けて全員死んでしまうのだけれど、
影さん達は勇者の死体だけは見つけられなかったそうだ。




