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身支度をして、病院を出て行った。
ヘレナ女医と【無】属性の子は心配だが、『分身』が教育したのだから、俺の全力を注げたのだろう。
なら、後は俺じゃない、彼女らの努力次第だ。
「ああ、早く次の何かを見つけないと、禁断症状で死んでしまう。」
『そんなに苦しいなら【称号】を堰き止めるなんてやめたら良いじゃねェか。』
『そう言っているのだけれど、聞いてくれないの。悲しいわ。』
「俺は最短最速を目指している訳じゃないけど、効率的で効果的な方法を常に模索している。その為にこの工程は確実に必要不可欠なんだ。」
強くなる。
数字を大きくする。
新しい【無】属性魔法を開発する。
新しいポーションを作る。
【称号】を手に入れる。
【加護】も欲しい。
才能に負けない努力をする。
楽しくて仕方が無い。
現代日本にいた頃には、目に見えない感覚だけの強さを、歯噛みしながら得るしかできなかった。
それでも、この世界に通じるくらいの実力は手に入った。
だが、今ではそれも置き去りに、俺は次を手に入れた。
死の不幸がもたらした、最高の幸運を手に入れた。
『色々あって忘れてたけど、包帯男の話はどうなったんだ?』
『ああ、アレね。半神に関して、私は何も知らないの。』
パルエラは知らない。
となると、本人しか知らない事なのか?
闘技大会で戦った、好敵手レオン。
その試合の前に話した内容は、今でも覚えている。
確か、精霊達の居場所と、半神の場所。
「重要なのは、それらがどんな力を持っているのか。属性系は要らないし、異能系も要らない。最高なのは魔力増強系か、【称号】にブーストが掛かるやつ。」
『も、もしかしてだけど、例えば『魔力○%アップ』みたいな奴がいたら、オレを捨てるのか......?』
「捨てるわけ無いだろ。今だってマキの魔力アップはありがたく思ってる。」
流石に、マキとの契約を解除するのは、効率関係無くお断りだ。
数年単位で一緒にいるマキは、ハクに次ぐ俺の親友なのだから、おいそれと捨てられる訳が無い。
それに、マキに世界中を見せるという約束を、まだ果たせてない。
『じゃ、ちょっと取り次ぐから、待っててね。』
パルエラの存在が離れた事を感じながら、俺は物思いにふける。
そう言えば、学園の地下に一体、精霊が存在するって言ってたな。
まあ、それは後回しで良いだろうか。
それと、包帯男が最初に俺に会った時、包帯の下は何も無いと言っていた。
なんでも、このバラバラのパーツがそれぞれ神になったとかなんとか。
となると、話はどの部位か。
仮に、もしもアレな感じの部位だった場合はご遠慮願いたい。
『残念だけど、ボクのブツじゃないね。一応、【髪】と【蝶形骨】と【左眼球】かな。難易度は言った順に上がっていくね。』
「純粋に重要性と大きさで決まる感じか。そう言えばパルエラは......いや、いい。」
『パルエラはボクの【子宮】からできたよ。』
「いいって言ったじゃん!!」
包帯男......全能神の言った事に全力で突っ込むが、まあ、どこぞの美の女神の様に、切り落とされたブツの泡から生まれたのでなければ、まあ、問題は無いだろう。
『まあ、場所に関しては機密性を重視して、君の脳に直接インプットするから』
「は?怖。口頭で説明しろよ。」
『断る!ボクとしては愛娘を嫁に差し出す様な気分なんだからね!』
「えぇ......」
謎のキャラ設定を残したまま、全能神はどこかへ行ってしまった。
それと同時に、パルエラの存在が戻ってくる。
『えっと、もしかして、私の事聞いた?』
「あ、うん。」
『きゃーーー!!恥ずかしい恥ずかしい!!忘れてっ、お願いだから忘れてっ!!!』
甲高い声で叫びながら、パルエラがマキをブン殴る。
とばっちりを受けるマキを横目で流し、脳にインプットされたという情報に目を向ける。
「能力も書いてあるのか......ほう!ヨシッ、【左眼球】から行くぞ!」
『さ、最高難易度から!?』
「途中に森林の遺跡があるらしいから、精霊とも接触してから行くぜ!」
ひゃっほいと軽くジャンプをしてから、俺は悠々と都を出た。
◇◆◇
俺が王都を離れて数時間。
病院に二人の男が来た。
「ここに、ノア・オドトンという名の少年はいないか?」
「我々は皇帝陛下の元に、その少年を連れて行くという命を授かった騎士である。」
騎士を自称する二人組は、確かに高価そうな甲冑を着ており、ややプライドの高そうな顔をしていた。
恐らく、本当に騎士団の所属なのだろうが、どことなく不躾というか、礼儀がなっていない。
所属を言わないし、アポも取ってない。
あと、病院内で大声を出すとか、マナーもなって無い。
「私が院長のヘレナです。残念ですが、件の少年はもうここにいません。」
「誤魔化すな!国家反逆で捕まえても良いのだぞ!」
「大人しく少年を差し出せ!」
ヘレナ女医の話に耳を向けない騎士達は、院内に押し入ろうとしたが
「おうおうおう、てめぇら久しぶりだなぁ。オレの事覚えてるかよ。」
突如現れた、二人の体を覆う巨大な影に振り返ると、そこには筋骨隆々大男、ウェンディゴが立っていた。
あれから、驚異的な自然治癒力で傷の塞がったウェンディゴは、予備の義足を取りつけて、自分でのメンテナンスを教わり、それから筋力トレーニングに勤しんでいた。
「き、貴様はッ!」
「忘れちゃいねェよな、てめぇらのミスで足を失って、てめぇらの進言でクビになった、元第二近衛騎士団副団長サマだぜェ。」
「なぜここにいる!!」
「てめぇらが話してる少年に足を治してもらって、再就職先を見つけて貰ったからさァ。その恩義を返す為に働いてンだよ。」
ウェンディゴはその騎士達の胸倉を片手で持ち上げると、そのままタンバリンの様に頭を打ち付け、気絶させた後、適当な裏路地に放り込んでおいた。
都と言えど、裏路地という魔境は危険がいっぱいで、気を失った騎士が二人、そんな所で放置されていたら、恰好の的である。
恐らく、二人がそこから出てくる時には、甲冑も剣も有り金も全て奪われた状態となるだろう。
「ノアがオレの素性を知ってたのか、そんなことまでは分からねェが、第二近衛騎士団は金や手柄にうるさい。無理矢理にでもここに押し入ろうとする。 それを阻止するのが、オレの役目ってことなんだろうぜ。」
「うむ、今の輩について、そこまで知らないのだが、言葉で解決できる様な相手で無い事は明らかだ。多少手荒でも、ここは抵抗をせねばならないだろうな。手を貸してくれ、ウェンディゴ君。」
「無論だぜ」
副院長とウェンディゴによる、病院の防衛線が始まり、それから半年に渡って、様々な騎士が来訪することになるのだが、それを俺が知るのは、更に先の事になる。




