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ルルーセンは、歯向かってくる者を蹴散らして、
聖堂に開いた穴の前に陣取った。
彼女にとって、地下に眠る秘宝の奪還が最優先だ。
時間をかければ、駐在軍が大勢駆けつけて来るだろう。
それにしても、ヤージュは何を狙って急な攻撃に出たのだろう。
まさかパウェル殿の仲間を腹いせに戦火に巻き込もうという訳ではあるまい。
彼、いや彼女は暁の将軍である。
強かに自身の戦略を推し進める戦友である。
私は彼女がマキビトに有益な実りを授ける者だと信じる。
「ウォオオオオ!」
一つ叫びをして、ヤージュを見上げる。
ヤージュは既に何者かと対峙している。
そして私の前にも1人の男が空から降りてきた所だ。
丸メガネをかけ、無精髭を蓄えた痩せ型のその男は、隣接する大きな学園の様な建物からやってきた。
獣化を解き、腰に刺していた大剣をゆっくりと抜き放ち、天に掲げる。
もう私は迷わない。
祖国を守るため、この都市は今日限りで殲滅する。
大剣に魔力を乗せ、地上に突き立てる。
辺りは衝撃波で瓦礫が飛び退がる。
痩せた男はメガネに手を当てながら、
びくりとも動かない。
「一昨日に懲りずに、今度は潜入かい。
僕の友人は自分の故郷を壊すとは思えないんだよね。
君らが洗脳でもしたのか?」
ルルーセンには男の台詞は理解出来ていないが、
その闘志が伝わってきた。
この感情は憎しみと疑念からくるものだろうと。
男は懐から鉄塊を抜き出すと、こちらに向けた。
貴人が銃と呼んでいるものだ。
魔具の一種であり、打ち出す弾に予め魔法を込めておく。
使用魔力を抑えられ、その魔法種類も準備すればいくらでも備えられる。
だが、予想外の事態や接近戦、長期戦には向かないデメリットもある。
ルルーセンは大剣を抜き放つと、今度は男に向けて振るう。
天の称号を持つ彼女は干渉魔術の第一人者である。
自身への身体能力の向上から繰り出す一撃は、周囲の空気圏へ伝達する。
この伝達したエネルギーが、標的周囲への干渉により身動きごと拘束された敵空間に叩きつけられる。
強固な岩に括り付けられ、逃れられない所を殴られる様なものだ。
男は吹っ飛ぶ訳でも無く、その場にへたり込む。
吹き飛ばす衝撃さえも逃す事なく収斂される技である。
その姿を見据えたルルーセンは、勢いよく大剣を顔元へ跳ね上げる。
その大剣にあたり弾丸が跳躍する。
勢い良く紫色の霧を発散し、ルルーセンの視界を奪う。
その刹那に捉えた発砲元には、男が佇んでいた。
どうやら、一筋縄では行かない様だ。
その身を回転させながら、
霧を弾き、第二の斬撃を男へ飛ばす。
男はまたも拘束され、斬撃を受け倒れようとするが、
今度は拘束を解かずに見定める。
しかし、その身は寒空の吐息の様に消え失せた。
「気に入って貰えたかな?」
やはり背後から現れた男は不敵な笑みを浮かべていた。




