宰相閣下の懐刀
貨幣について。
基本銅貨、銀貨、金貨の三種である。南方だと貝貨(内外に真珠層を持つ貝殻でそれ自体を装飾品として利用できる。)石貨等の利用もあるが、ごくごく一部の地域でのみ流通しているので割愛する。
交換価値は近接数十年に限って見てみると銅貨10000=銀貨100=金貨1(勿論これは相場によって変動する。多くても一割程度の範囲。ちなみに狭間の国鋳造の貨幣の場合)国ごとに貨幣は鋳造されているが合金の比率や重量はほぼ統一されている。
何故ある程度の統一が成り立っているかと言うと金の比率を極端に下げた金貨を鋳造した国があったのだが、その国の硬貨や商品の品質まで下に見られて国家経済が破綻したのと国を跨いで商売をする大商人達が国に対して硬貨の品質を一定以上に保つことを強要したからである。勿論大商人達の寄進を受けた幾つかの神殿組織が国に対して圧力をかけたからという面も否定できない。
故に銅貨、銀貨、金貨の共通硬貨に関してはどこの国の硬貨でも利用できるのである。(国や地域によっては先述の貝貨等の補助通貨・地方通貨が存在するのだがこれもある程度の交換比率が決まっている。)
此処で面白い事に何処の硬貨でも同品質が保たれているのならばと国家の威信をかけて硬貨のデザインに凝る国か幾つかの国で共同のデザインにして簡略化する国と両極端化する。
デザインに凝る国の硬貨は愛好家に蒐集の対象となってしまい、その硬貨が本来の価値以上となってしまっているなどという笑い話がある。お陰で一時期美術品としても価値のある金貨を鋳造した北部沿岸連合にある紅鮭港伯国の宝物庫にある金貨は本来の金貨の価値の二倍として扱われることがある。(伯国側としては本来の金貨の価値としてしか考えていないので、金貨を入れ替えて差額で稼ぐなどといった汚職?財務卿がいたなんて笑い話がある。)
また、魔王領の貨幣が同価値なのだが人族連合で取引を忌避されていて狭間の国で足元を見られて交換せざる得ないといった状況も一部である。(対策として金貨○○枚分の商品と同等の商品との物々交換といった貨幣を介在させない取引をしたり魔王領硬貨を持ち出さずにせいぜい狭間の国の両替商などに預け入れるといった事をしている商人が居る。)
これは人族連合、狭間の国と取引のある国家諸地域でも彼の国々がこれ以外の貨幣での取引に応じないと知ると渋々なのか利点に気がついてかほぼ全ての地域で受け入れられている。
人族連合西部平原国国立学園商業学部の講義より抜粋
勇者(笑)の目の前には青白い顔をした男が居る。
「勇者(笑)殿、貴方の経済論文楽しく拝見させてもらいました。っていうか!会計帳簿が付けられるならこっちにきてもらいたいのですが!って、いうか来い!何時まで無駄飯食らっているんだ!」
「無駄飯って・・・・・・・・・最近公爵達の無茶な注文とか副宰相様貴方の兄に当たる第二公爵の『シュークリームが食べたい直ぐ用意しろって。』夜中にたたき起こされた眠たいんだ!そして俺を勇者(笑)って呼ぶんじゃない!」
「勇者が国に役立つのは良い事です。我が敬愛する兄上のために役立つのならば本望でしょう。」
「あのなぁ、公爵方に釘刺しておけよ!製作時間を考慮しない注文をする第三公爵とかアレルギー持ちなのに無理に食べて寝込んでいる第二公爵とか人の食事を奪い取る第五公爵に菓子を作っているときに『従軍用の保存の効く菓子を作れ!』と第四公爵の無茶な依頼を受けて実行中ですが・・・・・・・・・・・・他にも第一公爵令嬢と聖女様・・・・・・・・・『男同士の絡みの図案で菓子を作れ!』・・・・・・・・・・もう嫌だ!誰だ、アイシングクッキーの存在を教えた馬鹿は・・・・・・・・って、言うか誰だBL本持ち込んだ馬鹿野郎は!って、いうことで依頼過多に付きこれ以上は無理です。経営についての論文は研究者さんと理論についてはまとめてあって後は人族語への翻訳とか造語のすり合わせをしている所なんでこれ以上の仕事は持ち込ませないでください。」
因みに、、製作時間無視の第三公爵の侍従は侍女達から吊るし上げを喰らって埋め合わせをしようとして始末書と言う白い海を泳いでいるし、第二公爵の場合はある品種の小麦アレルギーで倒れた公爵を毒を盛ったと疑われて取調べを受けて釈放された所である。第五公爵は最初こそ厨房と配膳室の者が泣いていたがある程度来る日を前もって知らせろと侍従に釘を指しておいたり、その分の材料費としてそこそこ良い金額を貰っていたので最近ではホクホクである。第四公爵の軍用保存食については固焼きのクッキーに胡桃やら干し果物を加えたものを試作している途中である。聖女、第一公爵令嬢については絵心がない勇者(笑)に業を煮やしたのか絵心が在って思想汚染されてしまった侍女や同輩のご令嬢にアイシングの技術を教えさせてBLクッキーの大作を鋭意作成中である。(BLクッキーは品質劣化防止の術式をかけてもらって某王国や魔王領等の同好の士への贈答品として送られるのである。)
「兄上・・・・・・・・・・食べられない物は始めに調理人に伝えろと口を酸っぱくして言っていたのに・・・・・・・」
血色の悪い男が勇者(笑)を連行しようとしたのは兄が倒れて国政が滞った分の助力を求めようとしていたのに原因が・・・・・・・・・その実の兄だと知って頭を抱える。しかも他の公爵の依頼が立て込んでいてというのは事実らしし・・・・・・・・・・
「副宰相様、試作品の保存菓子食べます?」
固焼きのクッキーを差し出す勇者(笑)。其れを受け取って齧る。
かきっ!
歯は折れなかったものの顎に来たようだ。
「硬いですね、これを食べることが出来るのはどこの野蛮人ですか。」
「第四公爵は普通に食べてましたよ。第五公爵は固いなとぼやいていましたが・・・・・・・・・・・後、硬いと思ったらお茶や何かでふやかしてから食べると良いですよ。」
「一ついいか?この世界の者の顎の力を第四公爵基準で考えるな!一度宴席で牛骨を噛み砕いて旨いといっていたのを見たことがあるからな。」
勇者(笑)の巣と化している王宮の部屋に何故かいた侍女の一人が入れてくれる茶で固焼きクッキーをふやかして食べる。
「なるほど、これは美味だな。私としては温めた山羊乳で食べたほうが良い気がするが。」
「その辺は好みですので・・・・・・湯で溶かすと甘い粥になりますから好みでどうぞ。」
「ふむ、これどれくらいで出来るのだ?」
「厨房の材料で作っているから大まかだけど1個銅貨二枚くらいかな。」
「ふむふむ、非常食としては有用だな・・・・・・・・・硬いが」
「硬くないと輸送中に壊れますから。それに材料はある程度大量購入すれば廉価にできるのでは?」
「後どれだけ保存が効くのかね?」
「乾燥状態にすれば一月くらいは持つはずですがそれは検証中です。って、侍女さん其れ検証中の奴だから捨てないで・・・・・・・・・」
棚の中にあった固焼きクッキーを捨てようとしている侍女を止める勇者(笑)。
その様子にまだ仕事出来るなと判断した副宰相は
「勇者(笑)殿、つべこべ言わず手伝ってください。労賃は払いますので。」
連行される勇者(笑)
「仕事増やさないでくれぇぇぇぇぇ!!後俺は勇者(笑)じゃないぃぃぃぃ!」
「あらあら、勇者(笑)様。また叫んでますわね。」
とのんきな侍女であった。
その後、従軍用固焼きクッキーを差し入れられた侍女達はあまりの固さに喰えるのこれと疑問を勇者(笑)に投げつけるのであった。
最後に第二公爵は三日後には復帰して次の日には禁止食材のリストを長々と用意して自分が食える物を作らせ、美味に満足して溜飲を下げたのである。
何故か勇者(笑)が菓子作りに目覚めているのはどうしてなのだろ?
そうだ、酒が足りないのだ!
飲まなくては・・・・・・・・・




