晩餐
聖徒王国古式晩餐礼法
・食物は基本手掴みで食べる。
・汚れた手は服のすそで拭かない。(卓上布が手拭代わり、または専用の手拭布が用意される。その布が汚れることがそれだけ食べ物を楽しみましたと言う証になるらしい。)
・匙などを使うのは、基本熱い汁物、手掴みで食べ辛い食物とかのみ。但し手に怪我などがある場合は匙などを遣うのはたしなみとして認められている。
・食中に給仕が用意するボウルは手を洗うもの。飲み水としない。(晩餐には酒類を多量に飲む為酔い覚ましの水として飲むものが多い。)
・前項のボウルは異世界人がいる場合は異世界人の振舞いに合わせること。
(以下、数項目略)
研究者や好事家相手に好き勝手語り合っていること数日。
異界文学だの経営学だの食べ物や習俗の話だの色々話している。
そこで再現が出来ないかとか主に厨房で試作なども作られているが、似たような料理はどこかにあったりで独創的とまではいかない。勿論美味美味と皆で平らげたりしている。その利益を得ているのが護衛兼監視の兵隊達だったりするのは笑い話としておこう。
勇者(笑)は害の無い者だと言う事を認識される。そのまま放り出されても、国としては害はないのだが外聞が悪い。どこか後見する者を見つけて身の振り方を考えて貰いたいと思っているところである。
「送還してくれるんじゃないのか?後、勇者(笑)は止めろとかヘタレじゃないとか色々言いたい事がある。」
えっと、勇者(笑)地の分を読まないように。
「其れについて説明しましょう。今いる聖徒王国や他の人族連合所属国家単体の技術では実行が困難なのです。だったら一生飼い殺しにした方が手間隙費用が掛からないと・・・・・・・・経営と言う概念を理解した官僚達の試算で出ています。下手に他の国に渡られても困りますし・・・・・・・・・・聖徒王国とその衛星国家に居るのであれば年金と言う形で生活の保障がなされるそうです。」
「とほほ・・・・・・・・・帰れないのか。」
「まぁ、気を落とさずに・・・・・・・・・・・・前に話していた経営の話を執筆すれば人族連合の官僚向けの教本として採用されるでしょうから・・・・・・・生計くらい立てられるでしょう。」
「なんだかなぁ・・・・・ままならないものだね。」
「あと、【勇者召喚】で人族連合の暴走を危惧している【魔王領】や【狭間の国】が一度君に会いたいと人を遣わすそうだから面倒だけど付き合ってくれ。普段どおりで居れば【問題なし】となるだろうから。実は先に言った年金はそれの報酬込みということで・・・・・・・・・・」
「何かいいように使われている気がしないでもないけど、それで生活費が出るならば仕方ない。だけど紹介するときは勇者(笑)はやめろ!」
嘆息する勇者(笑)、苦笑いしながら説明する研究者。年は離れているのだが語り合っているうちに打ち解けているようだ。
「所で勇者(笑)、なんて紹介されたら良いのだ?」
「時節読めない馬鹿に間違って勇者として召喚されたのは事実だけど(笑)はないと思う。(笑)は!俺にも守るべき尊厳を・・・・・・・・・・・」
「すまん、公文書に登録名称:勇者(笑)で記してある・・・・・・・・・・・・」
「なんでだぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
勇者(笑)の叫びは王宮に響くのであった。
その頃の侍女控え室。
「あらあら、勇者(笑)様ったら、また叫ばれて。」
「どうせ、(笑)が取れないことを嘆いているのでしょう。」
「諦めれば宜しいのに・・・・・・・・・」
何時ものことだと認識されている。
因みに侍女達の軽食、勇者(笑)謹製米粉のシフォンケーキ。卵黄使用の大蒜マヨネーズの残りである卵白を使用している。卵白を泡立てるメレンゲという手法は珍しく独特の食感は侍女達に好評であった。メレンゲ作っていた勇者(笑)と護衛達の腕は筋肉痛だったと護衛の兵士の活動報告に記されている。しかも殆ど侍女達の口に消え護衛達が食べることが出来たのは暫くして侍女を始めとする女性陣が粗方満足した後だったという。合掌。
勇者としては如何なのだろうという日が続き、公爵達と晩餐を共にするときが来る。
「勇者(笑)様、公爵様方と晩餐の予定です。」
「侍女さん、礼法とかに気をつける点はある?」
「相手の名前と立場を間違えなければ大丈夫です。所詮は異世界から着たばかりの勇者(笑)と認識しておりますからその場で簡単に窘められる程度です。」
「・・・・・・・・・・・・・なんていうか其れは其れで。」
「我が国の王族と食卓を共にするというのは名誉なことですから、気を引き締めていただかないと。」
「公爵って貴族の階級でしょう、王族って?」
「前身である人族国の【聖王】様がお隠れになられてその後継が途切れましたので分家にして配下である公爵様方が今の聖徒王国を治めておられるのです。確か前に説明しましたはずですが・・・・・・・・・・・・」
「あははははっ・・・・・・・」
すっかり抜けていた勇者(笑)である。
なんだかんだで晩餐の時となる。身支度を整えさせられた上に堅苦しい衣装を身に纏わされる。
そこで公爵達を紹介され晩餐となる。
普通に食事が進み会話も恙無く繋げられる。
食事が手掴みだったり、出される順番が微妙に違って居たりしたのだが其れは其れそんな物だと受け入れていた。
そして食事も中盤、ボウルに水を注がれたものが用意される。
公爵達は注目し勇者(笑)に進めるよう促す。
勇者(笑)はこれはフィンガーボウルだと思い、手掴みの食事で汚れた手を洗い卓布で手を拭く。
その様子を見ていた公爵達はおもむろにボウルの中の水を飲む。
「何をして居るのだ勇者(笑)殿、これは飲みすぎて落ち着かぬ胃の府を宥めるために飲む水じゃぞ。」
第一公爵の言に「えっ!」となりながら慌てて水を飲み干す勇者(笑)。
その脇でニヤニヤしているほかの公爵達の顔には気がつくことはなかった。
その日は公爵達とも打ち解けたようだった。
なんと言ってもフィンガーボウルもどきは公爵達にも面白おかしく写ったのだろう。
実際にはフィンガーボウルでよかったのだが・・・・・・・・・・・・・
駄目だ公爵達なんとかしないと・・・・・・・・・
ハイ、モトネタは道徳の教科書に載せられているあの説話。
知っている人がいたら同年代かな、若い連中は知らないかもしれないけど・・・・・・
つい、カッとなってやってしまった。特に後悔はしていない。
サテ、酒飲むか。




