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聖王様のお膝元

勇者

1、勇気あるもの、若しくはそのような行為をしたものに送られる称号。

2、召喚された戦奴隷に対する隠喩。



狭間の国 商会公出版【日常語辞典】より抜粋。 

来られよ勇者 汝の戦を我等が与えよう

剣の身 乙女の祈り 君だけの物語

我等無力なる者は 同胞の命を糧に扉を開き

汝の来訪を深く深く願い 救いを求め続ける

我等の叫びを聞き届けたまえ 我等の痛みを聞き届け給え

汝の戦 我等の剣となり闇を切り開き

汝の戦 我らが盾となり弱き者を慈しみ給え・・・・・・・・・・・・





古き古き神代の言葉で織成される祝詞、世界の壁を越えて誰かを呼び寄せるということは並々ならぬ困難がある。


世界を超える力を得るために膨大な力が要るし、其れを使いこなす者も必要である。力を増幅させる道具なども必要であるし、力の向きを整えたり求むる者を探し当てる道具も必要である。

道具は何とかなるだろう、過去にも勇者の召喚を行った者は数多く存在し、当時の文献を検索すれば是でもかと出てくる。

力については・・・・・・・・・・一人では到底成し遂げられない力が必要だ。其れこそ命やら存在を燃やし尽くして漸く届くか届かないか・・・・・・・・・・文献に拠れば生贄を用意してその存在を糧に力を得たという。今回も力なく横たわっているものが多数居る事から、生贄を利用したのだろう。出所については奴隷か攫った者・・・・・・・・・自発的にと言うのは見受けられないようだ。


そうして、呼び寄せようとしても過去に魔王と勇者の争いで大打撃を受けた世界を憂う神々が召喚については目を光らせている。

世界の境を司る境界神の眷属に渡りをつけて見逃してもらう事にする。それすらも、一財産である。


祝詞は続いている。

世界に呼びかけ、神々に呼びかけ・・・・・・・・・て居るのは言葉だけで生贄の命を費やして得た力で世界の壁を捻じ曲げ道を造り勇者なる異世界の存在を呼び寄せるのである。


召喚陣が光り輝き、丸い形となる。光の丸は陣の上に下りて静かに輝くのを止める。輝きは緩やかに消え去り最後に水晶が割れる時の様なパリンという音を立てて世界に解け去っていった。


其処に残されたのは、一人の若者・・・・・・・・・・

若者と言うには幼い気がするが、この者が今回呼び寄せられた勇者なのだろう。飾り気のない衣服だが手の混んだ縫製はこの世界にないものだ。否、この国にはというべきなのだろう、もしかするとあるかもしれないしないかもしれない。

そんな事は如何でも良いことだ、術者は勇者が目覚める前に手下に命じて生贄の骸を片付けさせると勇者が目覚めるのを待つ。


勇者になるであろう男は規則的に胸を上下させている。

単純に眠っているのだろう、目覚めた時どのような力があるのだろうか?魔王を倒して我等の時代を用意してくれるのだろうか?

その時に術者の身に注がれるであろう賞賛の声を夢想し一人ほくそ笑む。


手下の一人が勇者に布をかけ、術者に茶を差し出す。

茶を喫し、一息つける。


ある意味世界に喧嘩を売る術を使ったのだからその疲労は気付かぬ間に溜まっていたのだろう、茶と共に身体に倦怠感が襲ってくるのであった。

それでも気を抜くことをなく、気が抜けないというべきか呼び出された者を眺める。


勇者召喚の成功を聞きつけたのか陣の置いてある場所に身分が高そうな男とその配下と思わしき武装した者が訪れる。

開口一番。


「術者!勇者召喚に成功したそうだな!」

「はっ!伯爵様、もうじき勇者様はお目覚めになられるかと思います。」

「ふむ、起すのは駄目なのか?」

「見たところ状態が悪いわけでなく、召喚の衝撃で気絶しただけで御座いましょうから起こしても問題ないかと。単純に起こさなかったのは私も一息つけたかっただけですし。」

「くっくっくっ・・・・・・・・・・では、我等が勇者様の目覚めさせるとするか・・・・・・・・・ おいっ!巻き毛、勇者様をお起こししろ!」


巻き毛と呼ばれて若者が横たわる男の側によりゆすり起こす。


「勇者様、お目覚めください。」

呼びかけ、揺する事暫し勇者は目覚める。



「ここは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

勇者と呼ばれた男は戸惑う、行き成り見知らぬ場所で目覚めたとなれば動揺するものであろう。

しない者があれば見てみたいものである。


「勇者様、呼びかけに応じ戴き有難う御座います。」

両の手を広げ満面の笑みで歓迎の意思を示す身なりの良い男、その側で息を切らせている中年の男、周りを取り囲む武器を持った者に下働きっぽい男達。勇者(他称)は混乱している。


「勇者とは?」

「おっと、名乗りもせずに失礼。我が名は聖徒王国第三伯爵。魔王との戦いに心痛める者である。真に申し訳ないのだが、勇者様には魔王との戦いでご助力いただけないだろうか?」

「伯爵様、勇者様は突然の召喚で状況が把握なされていない御様子。暫し説明が御入用かと・・・・・・・・・・・・勇者様に置かれましても一度ご説明差し上げたいのですが宜しいですか?」

「ふむ、判った。我は執務がある故、この場は任せる。勇者様、今宵は夕餉でも共にしようではないか。では、行くぞ!」

「「「「はっ!」」」」


「では、勇者様はこちらへ・・・・・・・・・・共に茶でも喫しながらご説明いたしましょう。」


伯爵が供回りを連れて去り術者が勇者を案内しようとした時、外から蛮声が響き渡る!


「第三伯爵!貴殿に違法召喚の疑いがかかっている。大人しく門を開けて縛に付け!」







どかっ!ばきっ!

ごちゃぐちゃ!!どこばかばきばき!!







何かが壊れる音と共に煌びやかな鎧を身につけた男達が雪崩込んでくる!

「隊長!こっちに生贄にされたものと思われる死体があります。」

「うわぁ!酷い・・・・・・・・・・・・」

「苦痛で力を引き出す法でなかったのが彼等にとって幸いか・・・・・・・」


「屋敷内の制圧完了です。若干の抵抗がありましたが鎮圧してあります。伯爵家の者は当主である伯爵以外確保して在ります。」

「後は離れか・・・・・・・・・・・・向かっているものはあるか?」

「4班が向かっております。屋敷内の鎮圧は完了いたしましたので我等も手すきの者を率いて向かいたいと思います。」

「よしっ!3班、5班は吾に続いて離れの確認及び鎮圧に向かう。1班は外に待機している魔術師殿と管財人達と連携して違法召喚の証拠を集めろ。二班は外周部の警戒、残りは屋敷内の警戒及びに残存勢力が居ないか確認しろ。」


「「「「「はっ!」」」」」


鎧姿の男達は屋敷に散らばり其々の仕事をする。

そして、離れから逃げ出そうとしている伯爵一行と術者が間もなく捕縛され、召喚された男も保護されたのである。

「伯爵と術者を確保しました。」

「良くやった。では、偶数班は伯爵一家と高位の配下を王宮の貴人牢へ連行しろ。奇数班は引き続き警戒と証拠集めを。」


「「「「「はっ!」」」」」

「隊長、伯爵曰く【勇者】を確保いたしました。彼は如何致しましょう?」

「ふーむ、その勇者殿は何処に?」

「離れの一室に確保してあります。なんていうか彼は・・・・・・・状況を把握していないといいますか、茫然自失状態です。」

「乱暴はしていないだろうな?彼にどのような力が備わっているのか判らないからな敵対するような行動は慎め。後、会話は可能か?」

「一部理解不能な単語が混じるのですが、基本的には意思疎通は可能です。」

「そうか、3班班長お前は【勇者】殿についていろ。出来れば会話等から情報を引き出してくれ。最悪、暴れたりしない程度に説得できれば十分だ。」

「はっ!」


3班班長と呼ばれた男は何名か連れて離れに向かう。


こうして、【第三伯爵事変】は幕が開く前に終わってしまったのである。





お初にお目にかかる方も何処かでお会いした方も良しなに願います。

酔っ払いの作者です。


相も変わらずに読み辛い文章でふざけた内容でありますけど、お気に召しましたらお付き合いくださいませ。


ではでは、これから昼酒と洒落込みます。

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