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初恋は最強の剣!!~すべては君に愛を伝えるために~  作者: 涙目


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第一話 初恋

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

※この作品は『初恋は最強の剣!~公爵令嬢に恋した平民は彼女の難題をすべて乗り越える~』のレオサイドになります。

レオサイドは冒険譚、リリアナサイドは恋愛、ラブコメをメインとしておりますので、ご了承ください。

 まるで雪のように輝く銀髪。

 それでいて、抜き身の剣のように凛とした後ろ姿。


 それが、彼女との最初の出会いだった。


 かっこよかった。

 綺麗だった。


 美しいという言葉は、きっとこういう人のためにあるんだと思った。


 初めてだった。

 誰かを、こんなふうに思ったのは。


 初めてだった。

 誰かに救われたのは。


 だから。

 僕は思った。


 この人の隣に立ちたい、と。



「好きです! 私と結婚してください!」


 今思い返しても、我ながら勢いだけだったと思う。


 教会の出口。

 護衛達を押しのけて飛び出した。


 手には朝から作った花束。


 雑草だけど。

 俺に用意できる花なんてそれしかなかった。


 でも綺麗なやつを選んだ。

 一番綺麗なやつを。


 そうして。

 彼女の前で片膝をついた。


 すると。


「お嬢様に近づくな!」


 次の瞬間。

 世界が回った。


「ぐっ!?」


 地面に叩きつけられる。

 息が詰まる。


 痛い。

 めちゃくちゃ痛い。


 でも。

 不思議と後悔はなかった。


 ちゃんと言えたから。


「ヴァル、待ちなさい」


 顔を上げる。

 そこには彼女がいた。


 近くで見るともっと綺麗だった。

 本当に同じ人間なのかなと思うくらい。


 そして。

 彼女は俺へ手を差し出した。


「立てる?」


 一瞬だけ迷う。

 自分の手が汚れていたからだ。


 でも。

 待たせるのも失礼だと思った。


「……はい」


 そっと手を取る。


 柔らかかった。

 温かかった。


 俺の手とは全然違った。


「痛い思いをさせてごめんなさい」


「い、いえ!」


 慌てて首を振る。


 痛かったのは本当だ。


 でも。

 そんなことはどうでもよかった。


 だって。

 彼女が心配してくれている。


 それだけで十分だったから。


「でも、もうこんな無茶は駄目よ」


 彼女が少し困ったように言う。


「今回は運が良かっただけ。貴族によっては命を落としていたかもしれないのだから」


「はい」


 素直に頷く。


 言われてみればその通りだ。

 次からはもう少し上手くやろうと思う。


 ただ。

 後悔だけはしていなかった。


 ちゃんと言えたから。


「それと、告白ありがとう」


 嬉しかった。

 本当に嬉しかった。


 だから。

 次の言葉は少しだけ怖かった。


「でも、ごめんなさい」


 胸が痛かった。


 覚悟していたはずなのに。

 思っていたよりずっと。


 苦しかった。

 当たり前だ。


 好きな人に振られたのだから。


「……はい」


 なんとか返事をする。


 断られること自体は仕方ない。

 俺には何もない。


 ただ好きになっただけの子供だ。


 だから。

 それは分かる。


「私はあなたの気持ちに応えられないわ」


 胸がぎゅっと締め付けられる。


 だけど。


「もっと自分を磨いて、私なんかより素敵な人を見つけてね」


 その言葉だけはよく分からなかった。


 だって。

 そんな人、いるんだろうか。


 少なくとも。

 今の俺には思いつかなかった。


 だから。

 気付けば口が動いていた。


「どうしたら」


 彼女が目を瞬く。


「どうしたら、お嬢様に振り向いてもらえますか?」


 無理だと言われるより。

 何をすればいいのか知りたかった。


 頑張るから。

 やれることは全部やるから。


 すると。


「そうね」


 彼女は少し考えた。


 そして。


「まずは、この街で一番の冒険者になってみなさい」


 街一番の冒険者。


 なるほど。

 それなら分かる。


 やることが決まった。


「街一番……」


 思わず呟く。


 難しいだろう。

 大変だろう。


 でも。

 だから何だというのだろう。


「なります」


「え?」


 彼女が聞き返した。


「俺、なります」


 迷いはなかった。


 やることが分かったのだ。

 後はやるだけじゃないか。


「それができたら、また課題をあげるわ」


「はい」


「全部達成できたら、あなたとのことを考えてあげる」


「はい!」


「でも、いつ諦めても構わないのよ?」


「諦めません」


 間髪入れず答える。


 すると彼女は少し困ったような顔をした。


 何か変なことを言っているんだろうか。


 でも。

 その顔も綺麗だなと思った。



 やがて彼女は馬車へ向かった。


 俺は見送った。


 花束を握ったまま。

 ずっと。

 見えなくなるまで。


 そして。

 馬車へ乗り込む直前。


 彼女が振り返った。


 一瞬だけ。

 目が合う。


 だから。

 思わず手を振った。


 大きく。

 届くように。


 彼女は少しだけ苦笑して。

 そのまま馬車へ乗り込んだ。


 扉が閉まる。

 馬車が動き出す。


 それでも俺は見送り続けた。


 姿が見えなくなるまで。



 馬車が小さくなった頃。

 ふと思った。


「街一番の冒険者か」


 どうやったらなれるんだろう。


 冒険者ギルドに行けばいいのだろうか。

 訓練が必要だろうか。


 よく分からない。


 でも。

 考える順番が違う気がした。


「まずやってみるか」


 やり方は後で考えればいい。

 やることは決まった。


 街一番の冒険者になる。

 そして次の課題をもらう。

 全部達成する。


 そうすれば。


 いつか。

 いつかきっと。


 この人の隣に立てる。


 そんな気がした。



 家に帰る。

 狭い部屋。

 古い机。

 いつもの景色。


 だけど今日は少し違って見えた。


 机の上に花束を置く。


 捨てるつもりだったのに。

 なぜか捨てられなかった。


 しばらく眺める。


 そして椅子に座った。


「街一番の冒険者、か」


 誰もいない部屋で呟く。

 もちろん答える人はいない。


 だから自分で考える。


 今の俺は何も持っていない。

 お金もない。

 家柄もない。

 才能があるかも分からない。


 だけど。

 目標だけはできた。


 人生で初めて。

 本気で叶えたいと思う目標が。


 自然と笑った。


「よし」


 この日。

 俺の初恋は始まった。

お読み頂き、ありがとうございます。

リリアナサイド:プロローグ 幼少期の夢

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― 新着の感想 ―
Xの企画から来ました。 雑草でも一番綺麗なやつを選んだ花束、という一文にぐっときました。振られてなお「どうしたら振り向いてもらえますか」と食い下がる真っ直ぐさが眩しいです。街一番の冒険者への道、応援し…
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