十七章追憶
「どうだエルディナ、俺の声は聞こえるか?」
「はい、聞こえます」
俺は今、ゲームの外の世界。要は現実世界にいる。
ではなぜゲーム内のキャラと会話ができるかって?そんなことは簡単だ
元プログラマーのノウハウを生かしてログアウト中でもエルディナと会話できるよう彼女専用の空間を組んだのだ。
今まではアキナとできる限りは一人ぼっちにならないようにしていたが
基本高い頻度で来てくれてるけどアキナも学生だし迷惑をかけるわけにもいかないしな
「どうだエルディナ、こっちの世界の『外』に出かけてみないか?」
「わかりました」
今回彼女を外に連れだしたのは記憶を取り戻すためというよりかは単なるガス抜きだった
最近ゲームと仕事でずっと家の中にこもりきりだったのでたまには外で作業がしたかったのもあった
「どうだ、エル。これが俺の住んでいる世界だ。車とか結構近くで見ると迫力あるだろ」
なにせ彼女の住むケ・オスはファンタジーの世界だ。
それっぽいものはあるがテレビや車のようなものは存在しない
それを見てもヒントにはならないだろうと考えていたからだ
「公園でも行ってみるか?結構広くてボートもあるんだぜ?」
「はい」
それから俺たちは休日を満喫した。展望台を登ったり、観光スポットを歩いてみたりした。
勉強や仕事ばかりで友達もいなかった俺として今まで何が楽しいのか?と思っていたことばかりだったが
実際誰かと一緒に行動してみると楽しいことなんだな
こんなに歩いたり話したのはいつぶりだろう。
「どうだ、エル。楽しいか?」
「はい、なんだかなつかしい気がします」
いい兆候だ。人目に止まらないところとはいえ結果的に自然の多いところを選んだのがよかったようだ
「なあエル、ここで休憩しないか?」
「はい。」
普段だったらを大型チェーンのカフェを選んでいたと思うが今日は仕事に来たわけでもないので
普段は寄らないような個人経営のこじんまりとしたカフェに行くことにした
「いらっしゃいませー」
入店するとギャルっぽい娘に出迎えられた
思いのほか割と内装はしっかりしている
個人経営のわりに充実している。VR用のヘッドセットやパソコンにVR中にも体が痛くならない安眠用の椅子が用意された個室まである
規模を考えなければ普通のネットカフェのような充実さだ
「へぇー、お兄さんもVRやるんだ?」
まさかこの年にもなってゲームの中だけでなく現実世界でも十代の女の子に声をかけてもらえるとは
横からギャルに声をかけられて、俺は小さく跳ね上がった。
「あ、あぁ。ギルドバウトオンラインをちょっとね」
「へぇー、あたしはやったことないけどマスターがやってるやつだよ。もしかしたら話し合うんじゃないかな?」
体裁を繕うがもう遅い。俺が免疫ないことを察して彼女は不敵な笑みを浮かべていた。
初対面でこの距離感、嫌いじゃないぞ
「ちょっと、お客さん戸惑ってるじゃない。ごめんなさいね。この子VRやってる子を見かけるといっつもこんな風になっちゃって」
「あぁ、いいんですよ」
中年のな店長が店員を窘める。むしろこのまま続けてもらってもいいんだが・・・
店長は人当たりの良さそうな人で中年で若干オネエが入っている人だ。
第一の印象はあの鬼畜クソゲーをやってるとは到底思えないがどうなのだろう
「カズナリ、知り合い?」
「え?あなた、もしかしてカズナリさん?」
「え?あ、はい。」
エルが俺の名前を呼んだらこの反応だ
知らぬ間にずいぶんと有名になったな
「つまり、ワザンを倒したことがそんなにすごい話だったと」
さすがに何も頼まないのも悪いなと思い注文したホットコーヒーをすする
「ギルドバウトの方はわからないけど結構他所の方でも迷惑をかけていた人だったからね。私がやってるゼクストウォーカーでもかなり迷惑してたんだ」
「それでも界隈でも力を持っているヤガミと太いパイプを持っているから誰も強く言えなくてね、そんな中で奴らと戦っている人がいると聞いて陰ながら応援していたわ」
店長はスマホの飛び出る液晶を大きくして見せてくれた。
『依頼失敗ざまぁwww』『〈悲報〉ワザンやらかす』『所詮プロデューサーのコネだけのザコ』
それは一言呟けるSNS『ポヨロコ』の画面だった
ゼクストウォーカーをやっている人間がいるのを知ったのも驚きだがまさか俺の知らない場所でこんなやり取りが繰り広げられているのも驚きだったからだ
そんなつぶやきを見て店長は物憂げな顔で話してた
「ワザンはね、私がクランにいた時からの知り合いだったの。あの子ったら昔から悪さばかりして」
「ワザンを知ってるの?」
エルが店長に聞くと「そうよ」と答えた。
「なにせ私元々は〈ドンガメ亭〉の一員だからね」




