ガイド妖精
「ハロー!冒険者さん。私はガイド妖精のエルディナ!あなたたちもルナリアから来たの?」
俺たちの前に現れたのは手のひらサイズの妖精は
今まで会った形容し難い悪意を持ったNPCとは気色のちがう。
友好的で無難、なんというかNPCらしいNPCだった
「待ってくれ、ルナリアとはなんだ?君みたいなNPCが現れるなんて話はギルドでは聞いていないぞ?」
俺からの問いにエルはキョトンとした顔をしている。
どうも噛み合っていない
「今いる場所から北にトライア山脈を抜けたらすぐだよ?あなた達そこから来たんじゃないの?」
ガイド妖精はさらに質問で返してきた。どれも聞いたことのない地名だ
このゲームは基本的にオラカイト王国を拠点に現場に向かって攻略したらリザルト画面を挟んでまた拠点に戻るシステムだ。
その地名を知る術もなくギルドの言われるままに西へ東へと向かわされていたので
その都度マップが用意されていたように思っていたのだが
なんなら今彼女の話によってこの世界が地続きだとわかったくらいだ
「そういえば私の羽飾り知らない?ここら辺で落としちゃったの」
埒があかないと思ったのかエルは話題を変えた
よく見れば片方の羽には飾りがない。
するとアキナは徐にポケットに手を伸ばした
「薬草採りしてた時に見つけたんだけどこれかな?」
手のひらにエルがつけている羽飾りと似たものがあった
「そう、それだよー!ありがとうお姉さん。お礼にこれあげるね」
妖精は無邪気にぴょんぴょん飛び跳ねるとどこからともなく妖精は羽をあしらった髪飾りをアキナに渡した
「これはスカーレットシリーズのアクセサリー?」
そんなバカな、アレは昔のガチャのやつだぞ?まだ再録されてない超レアアイテムのはずだろう。一部分とはいえあの運営がNPCの簡単な依頼で手に入るものか。
そもそも依頼なんてのはギルドを通して受ける依頼しかないはずだ
聞き出す余地はあると俺は根掘り葉掘り聞いてみることにした
が
「ガチャ?NPC?さっきから何言ってるかわかんなーい!」
やはり何かがおかしい
他のキャストとは違い高次的な発言は一切受け付けない。やはり何か現行のキャラと違う
あの薬草といいここはどうも何かが違う
一旦距離を取ってアキナと話し合うことにした
「カズナリさん、あの薬草とかあの子とかギルドバウトオンラインの雰囲気と違うように思えるのですが。私たち別の世界に飛ばされてしまったんじゃ・・・?」
俺と同じことを彼女も考えていた。しかしそれとは別に俺はもう一つ思い当たる節があったのだ
「俺もそう思っていたところなんだが別の考えもあるんじゃないかってー」
俺は以前にオオニタから聞いた噂話をしてみた
社長のワンマンじみた采配や
運営の鶴の一声でゲームシステムが変えられたこと
実はこれもその名残じゃないかということだ
「・・・たしかに没になったNPCと考えれば辻褄があいます。となれば、ここは私に任せてください。」
いつになく自信満々な彼女はすっく、と立ち上がるとエルに対しフレンドリーに話しかけた
「ごめんねエルちゃん。実は私たち異世界から来たばかりなの。それから色々あってオラカイト王国でギルド員として働いてるんだ」
「そうだったんだ!でもあなた達オラカイト王国の人なの?冗談でも言っていいことと悪いことがあるよ?」
なるほど、ゲームの住民になりきって話せばよかったのか
今までの立ち回りのせいで見落としていた
しかし、彼女によるオラカイトへの印象が気になる
「エル、お前の知るオラカイト王国ってのはどういうところなんだ?」
「オラカイト王国は魔王が統治する国、住人も魔王に心を売った人ばかりの国なの。まぁそれくらいのことしか知らないけど」
運営の連中はわざわざこんなラストダンジョンのような場所を拠点に変更させたのか
確かに非情さについては納得できるところだが・・・
「それよりもカズナリさん。きっと皆さん心配してますよ」
崖から落とされてしばらく経つ。早いところ合流しないとみんなに迷惑をかけてしまう
事情を話し、遺跡のところまで案内してもらうことにした
「ここの先が〈死者の祭壇〉に通じる道なんだけど・・・」
と、何かを言いかけた途端エルディナの体が痙攣したと思うと宙に浮いたままTの字の体勢で静止した
「エラー、言語スクリプトトトトトトに問題があります。再起動しまままままます」
ひゅん!
糸の切れた人形のようにガイド妖精は落下し
間一髪アキナがそれをキャッチした
あわてて彼女の顔を覗く。意識はあるようだ恐る恐る彼女の名前を呼んでみる
「大丈夫か、エルディナ!」
「エル・・・ディナ?それが私の名前?」
口調が変わった。意識が朦朧としていることもあってか無邪気な喋り方から一点、落ち着いた感じの雰囲気を醸し出している
「エルディナちゃんしっかりして!」
「私・・・は、ずっと何もない場所で一人NPCとして生きて、いかざるをえなくなった・・・」
「エル?それはどういうことだ!」
意識が混濁しているのかうわ言を言っている
「一月もしないうちに私が人間なのかNPCなのか自分でもわからなくなってしまった」
「エルディナ、お前は一体」
「私は・・・誰?」
〈不具合が発見されました!運営に報告してください!〉
エルディナはそのまま気を失った。ウィンドウの忠告が俺たちを煽っているように見えた
一方でアキナは妖精を抱え、遺跡に向かおうとしている
「行きましょうカズナリさん。この人を助けるため、正体を知るためにも早くみんなと合流しましょう」
「あぁ、そうだな!」
彼女の顔には決意を固めた表情が浮かんでいた。。口には言わなかったが「強くなったな」と俺は思った。
走る 走る
仲間のいる遺跡まで。
そしてたどり着いた先には
「あ、あぁ・・・」
「か、カズナリ・・・無事だったんだな」
無残にも飛び散った仲間達の残骸があちこちに転がっていた
「ごめんな、勝算・・・何も、見つけられなかったよ・・・」
「!!」
出発前に話した冒険者仲間だ。まだ息はあるが体の半分がなくなっていた
なにがあったんだ教えてくれ
この惨状が一体何で引き起こされていたのか
それはすぐにわかった
「カロン・・・!」
俺たちの敵が目の前にいたのだ
「なになに?そんな怖い顔すんなよ
元々はグラディスちゃんを釣るための餌だったんだぜ?それに・・・」
それでも怒りのひかないオレを目の当たりにして死神は少し考えたのちに俺たちの顔を見てこう言った
「どーせお前らもすぐに後追うんだからさ」
〈依頼達成条件が変更されました〉




