神の手
「先日現れた上位魔物カロンについて『協力者』からの情報提供がありました。」
ここはギルドの作戦会議室
カロンという名前が出て、その場の空気は一気に張り詰めた
奴は、薄氷騎士団がドンガメ亭だった頃に姿を現し
(実際のところは運営のこじつけによる不正ではあるのだが)当時のクランマスターであるバオさんを一撃で葬った上級のモンスターだ。
更に言えばこの場にいる人間のほとんどは俺とアキナ含め彼と交戦経験のある人間ばかりだ
彼は俺が出会った後も依頼に登場
その傍若無人さと強さを遺憾無く発揮したのだ
それに関連する依頼ともなれば誰だってこんな反応にもなる
俺たちの反応をよそにイレイナさんは説明は続ける
「皆様にはジャングルの奥地にある遺跡に行ってもらいます。未到の地ということもあり、道中何が起こるかはわかりません。探索スキルを装備していくことをお勧めします」
「イレイナさん、協力者って誰なんだよ、そもそもその人は信用できるのか?」
「情報提供者は非公式ギルド《黒蛇党》のトップのグラディス公からです。彼の指揮するギルドの諜報員達の腕前は確かですので問題はないでしょう」
王国お抱えのギルドがそんな胡散臭いギルドの言葉を信じていいのだろうか?
「ちょっと」と言いかける前に別の同行者に手を引かれた
「場合によってはカロンを倒すためのヒントが得られるとも考えてみてください。どうかご武運を」
あまり納得もいかないまま俺たちは出発の準備をすることになった。
一度に装備できるスキルのスロットは6で
探索スキルは大体2から3ほど
必然的に戦闘用のスキルは必要最低限のものにとどめ、戦闘を極力避ける立ち回りにしなくてはならない。
そこで俺は
【危機感知】|(スロット3)
【かばう】|(スロット1)
【視野強化】(スロット2)
を装備
アキナは
【魔力探索】|(スロット3)
【リムーバー】|(スロット2)
空いたスロットに【ファイアエンチャント】を装備した
いち早く準備を整えた俺、作戦説明時に俺の手を引いた冒険者に声をかけた。
「なぁ、イレイナさんはあんなこと言っていたが非公式ギルドって大丈夫な組織なのか?」
この世界に来て日の浅い俺には、ギルド間の情勢を知らない俺は出発までの間に協力者の情報を引き出すことにした
しかし、大丈夫なのかと言う問いにはか「NO!」という返事が来た
「非公式なんて言えば聞こえはいいけどな、あいつらはヤクザもんだ。街に薬を売りつければ、人だって攫う。なんなら依頼では頻繁に戦ってはいるしな」
「因縁も因縁の相手じゃないか」
呆れる俺に対して「それほどのもんじゃない」とそいつは首を振った
「せいぜいあいつらは『ちょっかいを出している』程度しか思っていないよ。戦闘なんざ向こうはただのじゃれあいとしか思っていないしな」
「俺らはそうとは思ってないがな」と彼の心の声が聞こえた気がした
「そんなんでいいのかよ・・・」
「けど、そうするしかないんだ。俺たちは弱いから」
みんなわかっているのだろう。
いくらレベルを上げていくら敵と戦うための立ち回りを見出したところでそれはゲームのルールを則っての勝負ではじめて通用する話だ
神の手の前では全てが無力
それでも勝つためには勝つための努力をしなければならない
俺と同じだ。
今出向く遺跡にカロンの弱点は万に一つとしてないだろう
それでも何もしない言い訳にしてはいけない。
だからこそ探すんだ。
カロンの弱点
勝算を
「す、すごい見晴らしのいい景色ですよ!カズナリさん。あそこに遺跡が見えますよ」
依頼が始まり、俺たちは遺跡に繋がる渓谷を歩いていた
「他に何かないかな。遠くから見たら何かの形に見えるとか
「カズナリさん」としょんぼりする彼女の気持ちなんてあの時の俺はわからなかった。
そうだよな。普段は壁に阻ませた街で暮らして
依頼で外に出ても地下水道、燃える山、死者の町ばかりで
こんな自然と青空を拝める機会はこれではじめてだったもんな。
当時の俺がそんなことを気にするわけもなく俺は遺跡の秘密を探すのに躍起になっていた。
後ろに俺たちの命を狙う人間がいることすら気づかずに
ドン!!
「え・・・!?」
見えない何かに押し出されるかのように俺たちの体が宙に放り込まれる
落ちる瞬間、カメレオンのように透明の姿から人の姿が見えた
「悪いなカズナリ、アキナ。ワザン様とヤガミ様の褒美のためだ。チートスキルを使って事故に見せかけるだけでMVPもらえるなんて楽な仕事お前らだって断らないもんな?」
なんと、ワザンの部下が姿を眩まし、俺たちを突き飛ばしたのだ
「「うわあああああああ!」」
彼女だけでも救おうと【かばう】を使いながら落ちる
落ちてゆく
ガシャン!ゴドドドドド!
落ち切った時ちゃんと生きていられるのか、仮に生きていたとして無事に戻れるよあな措置があるのか
落ちながらも冷静に他のことを考えてしまう
ゴチャ!!
「うっーー!」
関係ないことばかり考え、ループしていた思考がここで途切れた
「う、うぅ・・・」
どれくらい時間が経ったのか。
ゲームのシステム上、〈気絶〉はバッドステータスの効果であり、それが付与されない限りはどんな攻撃や衝撃を受けても理論上は気絶はしないという
しかし現実とみまごうほどのリアルさを前にしてはそんなことは言っていられない
「よ、よかった!目が覚めてくれて!!」
話せば一時間は気を失っていたようだ
彼女は嬉しそうに俺を力いっぱい抱きしめてくれる
「あ、アキナ・・・、く、くるし。お前が介抱してくれたのか」
慌てて離す彼女
この様子だと彼女【かばう】の効果はちゃんと生きてるようだ
「でもお前【回復付与】持ってきたのか?」
そんなはずはない。彼女は探索スキルと状態異常回復のスキルだけで他は装備できなかったはず
高い場所から落ちたにも関わらず体に痛みがない。
「そ、それが薬草があって」
「薬草?このゲームにHP回復アイテムってあったっけ」
俺たちは本来通れない場所を通り越して別の空間にたどり着いてしまったのかもしれない
別のゲーム。いや、本来あるはずの世界に
「冒険者さーん。こんなところでどうしたのー?」
わからないことだらけで戸惑う俺たちの前に
|妖精の少女《俺たちを更に混乱させるモノ》が現れた
セパタクローです。もしかしたら明日にでも投稿できたらと思っております。それではまた!




