戦いの準備
ここはギルド街。
かつて《ドンガメ亭》と呼ばれたクランもそこにある
定員こそ大所帯ではあるがその建物の中には誰一人いない
場所は変わって現実世界の繁華街。俺、ワザンらドンガメ亭のメンバーはちょっと高めの寿司屋の座敷にいた
「ドンガメ亭新クランマスター、ワザンさんに乾杯!」
なぜ、俺たちがこんなところで豪遊しているか。そんなことは簡単だ
前任のクランマスターの急逝により
副マスターのワザンがクランマスターの座にのし上がったのだ。(ま、それだけじゃあないんだがな)
「待て待て、『ドンガメ』亭なんてこんなんでは他のクランにナメられてしまう。
俺がクランマスターになった以上名前は変えさせてもらうぞ。これからは『薄氷の騎士団』だ に改名する!」
この提案に対し誰も異論はない。
当然だ。この中には俺へのイエスマンしかいないのだから
外部サイトにてヤガミ様とクラン員たちとの打ち合わせも功を奏したか
前々から目障りだったバオのお気に入り二名に、俺の行動に対し影で目を光らせていた一匹狼気取りのゴルまでも追放できたのはある意味運が良かったといえる
「お前達の論破力のおかげであのクソ生意気な新入りだけじゃなくてゴルの野郎も追い出すことができたしな。お前達には褒美をやらないとな。そういえばスカーレットシリーズの一式が欲しいって言っていたな?ん?」
この装備は青天井ガチャで一度出たっきり未だに再録のない装備。しかもスキルの使用回数を回復できるという唯一無二の効果を持った廃プレイヤーなら喉から手が出るほどのレア装備だ
「えぇ、マジッスか!?こんな超レアアイテムをもらっていいんすか!?」
「おぉ!?やったぁ!一生ついていきやす!」
チョロい蓮中だ。笑いが止まらん!
現実世界のコミュニティをゲームの装備で手が打てるのだ。希少な武器といっても所詮はデータ。ヤガミ様に頼めばいくらでももらえるってのに
「テメェらもレアアイテムが欲しけりゃそれ相応の活躍しろ。未だに続けているカズナリのアカウントにトドメを刺すとかな!」
「はい、必ずや奴の首を取って参ります!」
せいぜい頑張れよ。その頑張り次第ではヤガミ様に気に入られ、昇進するための材料になるんだからな
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「知ってることって言われてもな。実際に会ったお前の方が知ってるだろ・・・仕事中にいきなり電話してきて一体何があったんだよ?」
運営側のトップとの面会からすぐのことだ
俺は彼らのことを知っていそうな元MMOプレイヤーのオオニタに電話をしてきた
あの時は運営を潰すことだけに躍起になっていたんと思う。
俺は何が起こったのかありのままに話した
「・・・なるほどな、もしかしたらあの噂はほんとかもしれないな」
「噂?些細なことでもいい、教えてくれ!いったい何があったんだ」
聞けばあの運営会社は界隈でも問題を起こした相当『アレ』な人間ばかり雇っている会社だったらしく、その全てに確証はなかったが次から次へと黒い噂が出てきた
「実際聞いた話じゃないが、ハチマングウは会社の中で独裁者じみた方法で指揮してる人間らしい。」
まぁ、あの人間のことだ。実際の立ち振る舞いを目の前で見ていた俺ならなんとなくわかる
「そのワンマンぶりは会社だけに留まらず外注の会社や開発陣もかなり辟易されてたって話だぜ?俺が遊んでいた時期からゲームからスタッフの内部告発とかすごかったんだからな。」
ギルドバウトオンラインも例に漏れずプロデューサーたちの鶴の一声でかなりの路線変更や急な無理難題とかを押し付けられてたという
「社長をあの地位にのし上げたヤガミって男とそいつの身内たちは例外として好き勝手やれたって話だったな。」
お前がやられたプレイヤーたちへの『えこひいき』もそうだが
ヤガミは気に入った人間を能力の有無関係なくスタッフにしたり、会社の金でゲームだけではなく生活の補助までした話や色々していたようだ
「あとは未成年に酒飲ませたり、夜遅くまで・・・やめよう、ここで話すようなことでもないしな。とにかくだ、美味しい思いをしたいためについていった人間は少なくないんだ」
そんなバカな話があるのか?会社の金で本当に好き勝手じゃないか
「そんなことをして許されるのか?話を聞く限りじゃトラブル一つや二つあってもおかしくはなさそうだぞ」
「以外とどうにかうまく誤魔化せちまうんだよ。周りに媚びた人間がいれば特にな。俺たちの今の会社の方針だってかなりブラックなのにバレる気配なんてないしな」
特に日本人はな。とオオニタは言う
それもそうだ。俺もブラックな仕事をやらされて精神を病んでも何もできなかった人間だったな
「•••そういえば、運営連中の制作陣の中に一人居たって話を聞いたことあるな。確か、ヤオ・・・だかそういう名前だった気がするが」
「ちょっと待て、その人の話詳しく聞かせてくれ!」
運営と戦った人間の話を聞いた
なんでもその人はゲーム開発の第一人者で性別は女、ギルドバウトオンラインの指揮も行っていたらしい。
しかし、運営の無理な注文や勝手にゲームを改造しシステムを改悪させたことに何度も運営と対立したそうだ
「とはいっても、その人は行方知らずになっちまったそうだからな。辞めちまったのか辞めさせられたのかどうかは知らないが、あくまで噂話だからな」
「・・・」
できることなら会いたい。
あの惨状を目の当たりにしたらきっと彼女だって黙っては居ないだろう。そうすればきっと
「ところで、彼女との約束はいいのか?」
実は運営に対抗する一端として俺はレベル上げの約束をアキナとしていたのだ
「えっ?もうこんな時間か!?すまん。必ずあとで埋め合わせする。じゃあな」
結局、仕事の進捗は聞けなかったが、奴らの情報はいくつか聞けたから良かったことにするかな
俺はVR空間に行き、待ち合わせの場所に着いた。時間はギリギリだったが、彼女はもうすでに着いていた。息を切らして来た俺に対し怒る様子も見せず、逆に心配して来た
「あ、あの、そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。まだ待ち合わせの時間、過ぎてませんので・・・」
社会人なら少なくとも五分前には着いてなきゃいけないのに、オオニタの時もだが、今日は社会人にあるまじき非常識なことばかりしている。ごめんな
気を取り直して俺たちはレベリングの作業をした。
レベルも上がりにくくはなってはいたが、地道な積み重ねもありなんとか35レベルまで上げることはできた
クランから追放された俺たちがまずやることの一つはできた、次は二人で生きていくための立ち回りと戦闘スタイルの確立
不遇職と言われる後衛職だったが、盾役のナイトと補助役のエンチャンター
見方を変えれば二人で生きていかなきゃいけない状況でこれほど適した職業はないだろう
「俺が攻撃と防御担当。決定打は攻撃職に劣るとはいえキミの攻撃力、クリティカルのバフを使えば多分奴らの引けは取らないと思う。それに」
俺はウィンドウを開く。そこには手に入れたスキルが書かれていた
【剣適正Lv5】
【怨恨】パッシブ ダメージを受けるごとに攻撃力が上昇する
【スイッチヒッター】パッシブ 所有してる装備に一瞬で切り替えて使用する
「防御職の強みである打たれ強さとかばうスキルでダメージを稼いであわよくばカウンターで返り討ちにさせる」
守る対象が減ったから【かばう】スキルに振り分けずに済みいろんなスキルを所得できたそと
【テレパス】のようなスロットを圧迫するスキルを装備せずに済んだのは大きい
次にアキナのスキル欄を開く
彼女の特筆すべきスキル
魔法使いのような派手な全体呪文、僧侶のような強力な癒しの力こそないが
さまざまな状態異常付与を付与させたりバフを付加させるなど器用貧乏なりに選択肢は広い
「特にこのスキルは役に立つと思う」
【回復付与LV5】技ポイント5/5 対象を中心とした周囲3メートル内は体力が1秒ごとに回復する(持続時間3分)
【攻撃強化LV5】技ポイント5/5 対象は攻撃力とクリティカルが上がる(持続時間10分)
【リムーバーLV3】技ポイント12/12 対象に付与されている効果を最大2つ剥がす
「そこでアキナに頼みたいんだが、スキルの効果範囲を広げる【範囲拡大】スキルを所得してくれないか?」
キョトンとする彼女に「まぁ、じきにわかる」と言ってやった。
とりあえず、実践がてら依頼でも受けてみようと思った矢先
まさかあの連中と戦うことになるとは誰が思ったろうか
遅くなってすみませんでした。セパタクローです。
次回はもっと早く描けるよう頑張ります
ではまた!




