少女
心配していたはずのロリーは意外な場所で見つかった。
「おじいちゃま、こっち!こっち行こ!」
「ああ、お待ちなさい。レディがそんな走り回るものではありませんよ。」
そう、リリーの家である。
身の危険を感じたロリーをリリーは放って置かなかった。
しばらくロリーを自分の本当の家の方に招き、家庭教師と妹リーナのベビーシッターとして雇っていたのだ。
とは言っても雇い主はリリー。
おこづかい制の彼女からもらえる給料は宿とご飯とクッキーである。
家庭教師もベビーシッターも何もかも経験者なロリーも懐かしさから仕事に精を出し、それが今やリリーの両親にも認められ就職口をスカウトされる日々となった。
そしてリーナとセシル。
二人の関係は少しばかり揉めた。
想い合うのに素直にならないリーナと遠慮を無くしたセシルの追いかけっこはとうとう二年も続き、先日ようやくリーナがセシルからの求婚を受けた。
リーナの条件は一つ。
子供が出来てから結婚してほしい。
真面目なセシルに婚前交渉は多少受け入れ難かったろうが結果としてはどうという事もない。その話から3ヶ月もしないうちにリーナのお腹には子供が宿ってしまった。
屋敷中の誰もが喜び、またそれをいの一番に言い当てたのが、まだお喋りが始まったばかりのリリーの妹リーナであったのだから驚きだ。
最初に懐妊を知ることができなかったセシルは多少むくれつつ、リーナとの愛を二つの意味で手に入れることができた。
夫婦となった二人は、亡くなるその日まで誰が見ても幸せな夫婦となり、妻であるリーナが先に亡くなると、夫であるセシルもその翌日には彼女の遺体に寄り添うようにして亡くなった。
二人の間に生まれた子供は5人。
皆仲良く、そして両親からは呆れるほどの愛情を注がれて育ったのだった。




