増毛
増毛編北海道の地図を広げ、目を閉じる。
「いい出会いがありますように」
祈るように指先の力を抜き、鉛筆をストンと落とす。地図の上でペン先が示した場所——それが、増毛との出会いだった
当時はまだ、留萌本線の汽車が増毛まで走っていた。ことことという心地よい音に揺られながら辿り着いた増毛駅この汽車にこれから何度も乗ることになる。
駅から徒歩十分の宿は、家族的な温かさに満ちていた。僕はすぐにその場所を「常宿」と決めた。
ここには、時間をゆっくりと引き延ばす魔法がかかっている。
映画の舞台にもなったひなびた駅舎時には海岸線に座り、ある時は水彩クレヨン、ある時は水彩色鉛筆、またある時はアクリル絵の具を広げる。刻々と変わる空の色や、海岸線の荒々しい表情を、ただひたすらに写し取っていく。何もしない贅沢が、そこにはあった。
夏の日の、ある昼下がり。特に予定のない僕は、近くのスーパーに出かける
「ウニ、何時頃入荷しますか?」
「11時半頃だべよ」
「じゃあ、それくらいにまた来ます」
そんな何気ない会話の先にある、とれたてのウニという宝物。キンキンに冷えたスーパードライを抱え、時には増毛の銘酒「国稀」を嗜む。
宿に居合わせた外国人のジョニーに「ウニ、食べないか?」と声をかけると、彼は目を輝かせて、とっておきのウイスキーを差し出してきた。言葉の壁なんて、とれたてのウニと酒があれば消えてなくなる。小さな宿の一室が、いつの間にか陽気な宴会場と化していた。
あの頃の風の匂い、ジョニーの笑い声、そして国稀の澄んだ味。ジョニーさんとは次の年もそのつぎの年もあったお互いに指を指して奇声をあげてその度に宴会が始まる。僕は英語全然しゃべれないが意思の疎通はなんとかなる。ジョニーはうちの娘を嫁にしろとゆう僕21歳娘さん3歳15年後考えますと適当なことをいってしまった。十年後の年賀状の写真を見て無茶苦茶可愛くなっている娘さんをみてあの時喜んでといわなかったのを少し後悔している。後悔ばかりの人生である
地図を広げ、目を閉じて鉛筆を落とす。僕の旅は、いつでもあの増毛hの駅へと繋がっている。
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