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ふた組のふたり組 ②

2組の2人組 ②


「つーか、何が子供たちだ。産んだ覚えはねえぞ」

「そりゃいづるんは産めないじゃん、物理的に」

「私も産んだ覚えはないですけどね」

「じゃ養子ってことでここはひとつ!」


 しょーもない会話をしながら、ダンジョン前室で準備を整える。

 武器よし、防具よし、魔剤よし。体調も万全、やる気もある。



 準備完了ボタンを押すと、ダンジョン入り口の扉のランプが、赤から黄色になる。


『登録パーティ名:即席めおと団と愉快な子供たち。登録者4名は順番に、フルネームを発声して下さい』


久垣(ひさかき)カレン」

弦食(つるばみ)イヅル」

織部(おりべ)つばめ!」

織部(おりべ)つぐみ!」


『声紋照合……認証されました。旧教育施設内異空間3級・閉鎖ハ型。異空間内では異空間法および施行令を遵守して下さい。帰還時刻を厳守し、安全指針に従って探索を行なって下さい』


 柔らかな自動音声が定型分をすらすらと述べたのち、扉のランプが緑色になった。


「よーし、行くぞー!」


 双子が連れ立って、真っ先に扉を開ける。俺とカレンはそれに続き、互いの手がしっかり握られていることを確認してから、ダンジョンの中へと足を踏み入れた。




 ――赤い。


 それが第一印象だった。扉の先には長い廊下が続いており、右手側に教室が、左手側には窓が並んでいる。

 窓の外から、血のように真っ赤な光が差し込んでいる。夕日だろうか?


「低難度ダンジョンだから良いですけど、外の光、あんま見つめない方が良いですよ」


 窓の外を透かし見ようとしている俺に、カレンが言う。


「中難度以上のダンジョンだと、光とか音とか匂いにデバフ作用があったりしますから。幻覚とか」

「なるほど……」


 赤い光から目を逸らす。



 さて、ではいよいよ探索だ。右手側に並ぶ教室から手をつけていきたいところだが……その前に、まず試さなければならないことがある。


「つばめ、つぐみ。話した通りに頼むぞ」


 カレンのすぐそばに控えた双子は、「了解!」と敬礼ポーズをする。


「もしダメだったら、カレンをダンジョンの外に引っ張り出せば良いんだよね?」

「ああ、出来るだけ素早く頼む」

「そんなに構えなくても、入り口のすぐ近くなんですから自力で出られますよ」


 カレンはそう言ってふてくされるが、万が一があってから後悔するのでは遅い。



 今から俺たちは、互いの手を離す。


 免許試験ダンジョンを倒した後、俺が獲得したスキル『接続(コネクト)』……その効果を試すためだ。



 接続(コネクト)――発動前5分以内に、60秒以上連続で接触した相手と魔力回線を結び、魔力やスキル使用権を互いに移譲することができる。

 接続時間、距離、および移譲可能スキルはスキル使用者の魔力及びスキルレベルに依存する。



「準備は良いな? よし……やるぞ。『接続(コネクト)』発動」


 繋いだ手をぐるりと巻くように、青白い光の縄が現れ、消える。

 ……それだけだった。


「……これで、繋がったのか?」


 半信半疑で、試しにスキル一覧を開いてみる。

 ――と、とんでもない光景がそこに広がっていた。


 ずらりと並ぶ文字、文字、文字。それ全てがスキル名だ。ステータス閲覧や気配察知のような初歩的なスキルから、見たことも聞いたこともないスキルまで……。

 その羅列の中ほどに、スキル:祝福(ベラカー)【SSS】がある。


「すげえ……これ全部、カレンのスキルか」

「私の方にも出ましたよ、先輩のスキル。じゃあこれで、お互いのパッシブスキルは常に共有していることになったんですかね?」

「ああ……試してみるか」


 緊張する。

 双子が見守る中、俺たちは繋いでいた手を恐る恐る離す。駄目なら、俺は即座にダンジョン外へ弾き出されるはずだ。


 衝撃と痛みを覚悟し身構える――……が、何も起こらない。



「いけてる……のか?」

「いけてるみたい、ですね」


 おおーっ! と、双子が歓声を上げる。


「やったじゃん! これでカレンといづるん、ずっと手ェ繋いでなくても大丈夫ってこと?」

「すげー! てかめっちゃ便利なスキルな!」


 喜ぶ双子は置いといて、俺は念入りに状況を分析する。

 互いのスキルを接続(コネクト)し、今の俺はカレンの祝福(ベラカー)を、カレンは俺のアンチ・ダンジョンを発動している。


 スキル『状態共有』で共有した時と違い、カレンのデバフ防御にアンチ・ダンジョンは引っ掛かっていないみたいだ。



「多分、『私が自分でアンチ・ダンジョンを発動している』判定になってるからでしょうね」

「なるほど。相手から発動させられたらデバフだが、自分で発動する分には問題ないってわけか」


 だが、油断はできない。接続の持続時間と接続可能距離は未知数だ。スキル説明に、俺の魔力とスキルレベルに依存するとはあるが、具体的な数値は分からない。


「なるべく離れないようにはするべきだろうな」

「そうですね。ところで……これって、イヅル先輩も私の魔法とかスキルを使えるってことですか?」


 あ、そうかも知れん。



 そうなると便利どころの話じゃなくなる。アイテム変換や収納などの探索必須スキルだけでなく、強そうな魔法やスキルも使い放題だ。


「……やってみるか。取り敢えず、一番便利そうな『収納』を……」


 カレンのように服の袖をアイテムボックスにすべく、「スキル、『収納』」と呟いてみる。



 …………何か反応した気配はあった。しかし、何も起こらない。

 どうしたんだ? と疑問に思うと同時に、目の前に文字が浮かぶ。



 ――レベル不足、スキル使用不可。



「……レベルが不足してるってよ」

「あー、自分より強い相手と接続しても意味ないっていうやつですね。残念でした」


 畜生、うまいことできてやがる。

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