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わたくし悪役令嬢ですから  作者: 一番星キラリ@受賞作続刊発売決定:商業ノベル&漫画化進行中
【本編】

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11/34

終わり

「では改めて伝えるよ、ウェンディ」


 オリオン王太子がわたくしの手をとって、透明感のある碧眼をこちらへ向けた。


(改めて婚約破棄を告げられたりしないわよね……?)


 自分が悪役令嬢であると、どうしても婚約破棄という言葉に囚われてしまう。


「ウェンディ。君は本当にすごいと思う。マクドナルト嬢のことを陰ながら支えつつ、未来の王太子妃に相応しい功績も作り上げた。あの油でカリッとあげ、中はほくほくのフライドポテト。君が考案し、自身の薔薇姫会のお茶会で提供することで、一気に王都の貴族の間で、ポテトに対する意識が変革された。まさにポテト革命だ」

「それは……」


 それは断罪での婚約破棄で、地方領へ行くことになった時。ポテトの栽培を大々的にやろうと考えていたのだ。何より、わたくし自身の前世意識の覚醒のきっかけは「マクドナルト卿」であり、脳裏に浮かんだフライドポテトだった。


 どうしても食べたくなり、料理人に作ってもらったところ、まず彼らがその美味しさに気づいた。シンプルな塩味でいただくのも美味しい。だがそこは一流の料理人。わたくしが何か言わなくても、トリュフとフライドポテトと組み合わせ、貴族が食べるに相応しい逸品に昇格させてくれた。


 そうなると普通にお茶会の軽食、フィンガーフードの一品として出しておかしくないものになる。しかも薔薇姫会のお茶会で登場となると、令嬢たちは興味津々で食べ、その絶品具合に悶絶。


『アメリカーナ・ポテト、我が家の料理人にも作らせますわ!』


 こうしてトリュフで和えたフライドポテト、その名も「アメリカーナ・ポテト」はこの世界で、貴族の間で一気に広まったのだ。そこはもう新しい物好きであり、美食にこだわる貴族のハートにバッチリ刺さった形だった。


「ポテトなんて土の中に埋まっているもので、貴族が食べるようなものではない……と思われていたのに、今ではみんな、ティータイムやビールのつまみでアメリカーナ・ポテトを食べている。ポテトを栽培する農家は高値でポテトが取引されるようになり、大喜びだ。しかもポテトは小麦より栽培しやすく、収穫のサイクルも早い。地中で育つことで、外的影響を受けにくいから、ポテトが安定収入につながる。小麦とポテトを育てる農家が増え、彼らの生活の安定にもつながった」


 ポテトは寒冷地でも栽培でき、害虫に強い品種も多い。小麦に比べると栽培のしやすさもあり、農家もポテトに勝機ありと分かると、喜んで栽培を始めた。貴族のニーズに応え、自身の懐も潤う。しかもわたくしはフライドポテトのお供であるマヨネーズのレシピも公開させたのだ。


 この組み合わせは平民の間でも人気となり、王都から地方へとじわじわとフライドポテト&マヨネーズの人気が広まることになった。平民でも楽しめるフライドポテト&マヨネーズを考案したのは、王太子の婚約者の公爵令嬢。そのことで、平民の王侯貴族に対する印象も、とてもフレンドリーなものに変わったというのだ。


「大輪の花のように華やかなウェンディなら、いくらだってこの功績をアピールし、社交界のみならず、この国で目立つことができる。しかしウェンディはそんなことはせず、それどころか、秘伝にしたがるレシピをオープンにし、アメリカーナ・ポテトとマヨネーズの普及に努めたんだ。そして今回のマクドナルト嬢の件。陰ながら彼女を応援していたんだ。僕はウェンディの謙虚さをさらに感じ、尊敬の念も深まった」

「あ、えーと、それは……」

「いいんだよ、ウェンディ。僕の前では遠慮なんてしないで。……僕はウェンディ、ありのままの君が大好きなんだよ」

「……!」


 わたくしの手を持ち上げ、甲へとキスを落とし、オリオン王太子が静かに告げる。


「もう学園を卒業し、僕たちは学生ではなくなる。二十歳になったら、結婚しよう。明日からは結婚式へ向け、準備を進めたい。愛している、ウェンディ」

「え、えええええーっ!」

「ウェンディ、それは喜んでいるの? それとも驚いている?」

「りょ、両方ですわー!」


 婚約破棄をされると思ったのに。

 まさかの愛の告白で、結婚しようとプロポーズされるなんて……!

 夢を見ているのかと、何度もオリオン王太子に確認することになった。


 ◇◇



『……買い取らせていただきたいのです、このマクドナルト卿が!』

『マクドナルト卿……』


 その名を聞くことで、わたくしの脳裏に黄色のほくほくとしてカリッとしたものが浮かび、何とも懐かしさを覚える匂いがした気がした。そしてわたくしは自分の前世を思い出す。


(ああ、わたくし、悪役令嬢なのですね……)


 前世記憶が覚醒したのは十六歳で、既に悪役令嬢ウェンディ・シェイ・アメリカーナ公爵令嬢の人格形成は終わっている。ここから急に断罪からの婚約破棄を回避するため、言動をガラリと変えても、周囲は気味悪がるに違いない。


 ヒロインへの嫌がらせを断罪として問われ、婚約破棄されても、死刑の憂き目に遭うことはないと分かっている。ならば断罪回避のためにあがくのをやめ、粛々と悪役令嬢として定められた行動をとるのみ。


 ということでわたくしは悪役令嬢に求められる役割を、言動を、そのままゲームのシナリオ通りで行った。ヒロインを薔薇姫会のお茶会に招待しない。ヒロインの教科書を取り上げる。スイーツを食べるヒロインの手を叩く……etc.


 嫌がらせの言動はしっかり行った。ただそこに少しのプラスαがあったに過ぎない。それが思いがけず、良い方向に作用した結果……。


 ヒロインの攻略対象である三人の令息からは、バッチリ意地悪公爵令嬢、性悪公爵令嬢と思われている。でもヒロイン自身、そしてそのヒロインを勉強面で支え、彼女と信頼関係ができていたオリオン王太子は、わたくしのちょっとしたプラスαに気づいてくれていたのだ。


 それどころかオリオン王太子は、わたくしが自分でどうしても食べたく、来る婚約破棄に備えた行動を『ポテト革命』と言い、絶賛してくれた。


(まさか婚約破棄ではなく、プロポーズされるなんて……)


 驚きだったが、終わり良ければ総て良し。当て馬令息三人はみっちり叱られ、ヒロインはマクドナルト卿の許可を得て、無事婚約できた。しかも男爵令嬢として。そしてわたくしは――。


「ウェンディ。君が前に話していたチュロというスイーツ。王宮のパティシエに作らせてみようか」

「本当ですか、殿下!」

「君のためなら喜んで、だよ」


 オリオン王太子が透明感のある碧眼を細め、サラサラの金髪を揺らし、極上の笑みと共にわたくしを抱き寄せる。


 甘々な婚約者にずぶずぶに蕩けさせられ、極甘な日々を送っています……!


 ♡~おしまい~♡


お読みいただきありがとうございます!

最後までお付き合いくださり、心から感謝です。

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― 新着の感想 ―
そういえば、ウェンディーズバーガーは食べたこと無いなぁ(ㆁωㆁ*)そしてポテトが食べたくなった(ㆁωㆁ*)今日の夜食にポテト食べようかな(ㆁωㆁ*)とってもお腹が空く作品ですよ(ㆁωㆁ*)飯テロけしか…
ケン●ッ●ー帝国の人が将来的に一波乱起こしそう。 遅くても子供世代になるまでかもしれない。 「今日、●●タッキーにしなーーい?」 皇子の一言に白いスーツの白髪ヒゲ眼鏡のおじさんもニッコリ。
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