ご都合主義
俺とカスミちゃんはシライをご神体とする山社、髪蛇山にある神社の奥の奥の奥に住んでいる。
シロとクロも違う神社の奥で匿われるようにひっそりと暮らしている。
連絡を取り合うのも会うもの簡単だがあまり頻繁すぎると対立が激化するので程々にしている。
そんなある日
「フミさん。久しぶりだなあ」
白いヒゲを生やしたカズマが空間を裂いてひょっこりと現れた。本当に突然の事だった。
「おう。階段登りきれたんだな」
右手を拳にして突き出すと、頑張ったぜとカズマは拳を突き合わせた。
「カスミちゃん。カズマが来たぞ」
奥にそう声をかけると
「何だよ、まだカスミちゃんって呼んでんのか? 名前で呼んでやれよ」
カズマのその言葉に俺ははっとした。
「カズマ、いや、それが、な? 俺……、カスミちゃんの下の名前知らねーんだ。名字がナカスミってのは知ってるけど」
「ええっ! マジか」
「それに、な。カスミちゃんも俺の本名知らねーんだよ……。多分」
「おいおい、どうやって結婚届けを出したんだよ。書き込んだんだろ?」
「そりゃ、カミサマパワーってやつだろうよ。カミサマはすげーんだ」
今になってようやく解ったよ。カズマに言われるまで下の名前の事なんて全く気にしていなかったんだから。この世界を想像したカミサマがすげーのか、それともそれをさせたカミサマがすげーのかわからねーけどカミサマってのはすげー種族なんだ。
奥から現れたカスミちゃんに俺は問いかける、名前は何て言うんだ? と。
「え? 今更? 幾つになるかわからないくらい一緒に居て、今?」
俺は大きく頷いた。
「私は、私の名前は中炭――。じゃあフミさん。あなたのお名前は?」
「俺の名前は、雅史――。カズマ、お前は?」
どうせだからカズマにも振ってみる。
「俺か? 俺は鹿妻――」
名前を言い合い俺たちは笑った。
な? カミサマパワーってすげーだろ?
俺たちは名字しか言えないんだ。




