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旧世界



「待ちました?」

 ふんわりとパーマがかかった茶色い髪で薄桃色のジャケットがトレードマークのカスミちゃんが缶コーヒーを飲んでいる俺の顔を覗き込んできた。

「待った。20分くらいかな?」

「そこはいま来たトコ、でしょー?」

 くすくすと笑うカスミちゃんを隣に座るよう促す。

「お久しぶりですね。フミさん」

「そうだなあ。久しぶりだなあ」

「いきなり来なくなったので心配したんですよお?」

「うん。まあ、色々あってさ。カズマから何か聞いてたりする?」

「うんん。何にも」

 自分で、そうだよな。自分の人生だ。

 シロもクロも俺を独り占めしたいはずなのに俺の人生を尊重してくれた。

 言おう、俺から。俺の言葉で。

「カスミちゃん。いきなりだけど俺と結婚前提で付き合ってください。コブ付きだけど」

「え? フミさんバツ付き、だったの? そんな話、聞いてないよ……。孤高な人だと思ってたのに……。あんまり自分のコト話してくれないし……」

 うん? 最後の方が聞き取れなかったぞ? まあいいや。

「今から俺のウチに来ない?」

「え……? 何? エッチなお誘い? いきなり? まだ太陽が高いけど」

「いや、言葉で説明するよりも見たほうが早いんだ。それに会いたいって言っていたし」

「え? 何を? 誰が??」

「とりあえず、行こう」

 困惑顔をしているカスミちゃんの手をとりベンチから立ち上がる。向かうは我が家だ!

 

 

 我が家へ向かう間、俺はカスミちゃんの手を握っていた。道すがら何度か横顔を確認したが相変わらずほわほわっとした感じだった。

 俺が彼女の顔を確認する度に頭の中にある情景が浮かんだ。

 それは、海で大きな蛇の上に立つシロとクロ、その横には男女。

 世界を始める事をなったふたりの補佐として立つ聖者と聖女。

 その男女の顔は俺とカスミちゃんによく似ていた。と言うよりもそのモノだった。

 ああ、また予知か。最近多いなあ。

 それにしてもシロとクロはしっかりとしたカミになるんだな。

 そう思いながらカスミちゃんを見ると目が合った。

「ね、ねえフミさん。手って、ずっと握ってなきゃだめなの?」

「へ? あ、ああ。ごめん、いつもの癖で」

 慌てて手を離すとカスミちゃんは、別に離さなくてもいいです、けど、と口をもごもごさせた。

 そんなやり取りをしながら俺たちは風呂付きトイレ共同のアパートメンツ”旧世界”へ到着した。




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