第五十三話 衣月と交わした約束
「な~水谷」
「どうした?」
四年前の五月。小学六年生で今年小学校を卒業する俺達は修学旅行で京都に来ていた。
美しい風景や和の雰囲気が漂う町並み。
俺達はそれに魅了され、楽しい二日を過ごし明日帰る。
そんな京都で寝る最後の日、親友である衣月は声をかけてきた。
「少し話しいいか?」
「いいけど……」
周りは疲れたのか、すでに眠っており扇風機が回っている音と寝息だけが聞こえてくる。
「水谷さ、昔……」
衣月が話している途中で扉が開いた。
「こら、もう就寝時間過ぎてるぞ! さっさと寝なさい」
「「はーい」」
先生が見回りに来ていた。何かしているわけではなかったのでお咎めはなしだ。
「それで?」
「水谷はさ、よく無茶してただろ?」
「無茶? んなのしてない」
「してるんだよ。木から降りられない子を抱きとめたり、蜂に刺されそうになってる子を助けて自分が刺されたりさ。正義感があるのはいいけど、無茶しすぎてるのは駄目だ」
「別に俺は……」
「そんなつもりじゃないんだろ? 無意識だったら尚更」
「何でここでそんな話すんだよ。折角の楽しみが台無しになるじゃんか。明日で帰るのに」
「楽しみだから。楽しんでる時は絶対気が緩む。そんな子を助けてもし、水谷が命を落とす……とかなったら俺嫌だからさ。水谷とずっと一緒に遊びたいんだ」
「衣月……」
「水谷京都にすげぇ魅了されてた。大人になったらまた来るだろ。その時に思い出してもらえるようにってのもあるけどさ」
「衣月ごめん。俺そこまで深く考えてなかった。体で行動して、頭では何も考えてなかった!」
「おいー、お前らうるさい……」
「あ、ごめん」
隣で寝てた男子が寝ぼけてそう言ってきた。
たしかに声が大きくなってたかもしれない、危ない危ない。
「大丈夫、水谷。これからは頭で考える暇がないことが起きると思うけどさ、少しは考えて行動しようぜ! 俺も協力するからさ」
「ありがとな、衣月。流石俺の親友」
「っはは。嬉しいなぁ」
そう言った衣月の顔は本当に嬉しそうだった。
「再度、約束な? そうだ、指きりでもするか?」
「お、いいな」
お互いの小指を絡め、硬い約束を結んだ。
「そろそろ寝るか。こいつらも声で起きそうだし」
「うん。おやすみ、水谷」
「おう、おやすみ。衣月」
俺達はお互いの顔を見ながら目を瞑った……。
「衣月ごめんな。俺、約束破った」
あの夢の後、衣月と交わした約束のことを思い出した。
偶然じゃない、必然的に呼び起こされた記憶の欠片。
だけどすでにその約束を俺は破ってしまっていた。
「言いてぇな。衣月や冷夏に生きてるって」
自分の口から、「俺は生きてる。今まで黙っててごめん」って。
言える日は果たしてくるのだろうか。
また、三人で会える日は今後あるのだろうか。
「会いたい」
二人に、会いたい。
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