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黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
第三章 感情
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第五十一話 最終討伐作戦までの行動

――河野水谷の場合


「ふぅ」


 俺は何で戦うか、自分に何が合うか分からなかった。


 アルファと戦う上で、武器は大切だ。


 自分を守るにも、相手と戦う時も。


 特に強大な敵に挑むには武器は必要不可欠な存在だ。


 だからこそ、初心者である俺には自分に何が合っていて、何を使うべきなのか分からなかった。


「あれ、河野くん。何やってるの?」


「富士宮さん。少し相談いいか?」


「いいよ」


「アルファを討伐する上で、武器は大切だ。それは分かってる」


「そうだね」


「だが何を使うべきなのか分からないんだ。強大な敵に向かうには……」


「本能で選ぶべき、かな?」


「え」


 富士宮さんの口からは意外なことが出てきた。


「俺も実は本能で決めたんだ。『悩みすぎるといつまで経っても答えが出ないかからこれって物を選んだり決めたりしろ』って教官に教わったんだ」


「そうだったんだな。なら俺もそうする。ありがとう」


「ううん。お互いに頑張ろうね」


「あぁ」


 俺は対空砲とライフルを使うことにした。




――小香の場合


「……」


 我は冷夏殿に相談された通り、以前操っていたアルファを再び操っていた。


 結界の先、四方をアルファに囲まれている冷夏殿達の部隊にとって、これから向かうべき味方のアルファは強力だろう。


 死ぬ前に、少しでも力になりたい。


 今まで少しも沸いてこなかった気持ちが少しずつ、少しずつ我の心の中を侵食してゆく。


 悪い侵食じゃない、良い侵食だ。


 心が満たされて、力も溢れてくる。


 友情って、仲間ってこういう物なんだって今更分かった。


 我は、我達巫女一族は随分、寂しい人生を送っていたんだな。


「我は必ず聖生を破壊する。これが巫女一族の生き残りである我の使命だ。そうだろう?」


 一族の皆。


 もう少しでそっちに逝くよ。


 それまではこちらで楽しく、味わったことのない感情に浸らせてほしい。



――不時吾郷、草壁の場合


「それで良いのですか?」


「構わない。草壁、今までご苦労だったな」


「いえ、最後までこの仕事を真っ当させていただきます。司令官の秘書は自分しかいませんから」


「そうだな。草壁とは長い付き合いだった」


「はい。もう十五年になりますか?」


「そうだな。あの頃が懐かしいよ。あの頃は何も知らず、草壁も笑顔だったな」


「はい。今は笑顔を忘れてしまいました。ですがそれも悪くはないです。貴方を支えられるなら、それで……」


「草壁はいつまでも変わらないな。変わったのは私だけ、か」


「いえ。司令官も変わっていらっしゃいません。余計なことを知りすぎただけです。それでも変わらなかった。貴方はとても強いお方です」


「そうか。あと少しで、妻に会えるのか。嬉しいのか悲しいのか」


「複雑な気持ちですね。自分は所帯を持っていませんでしたので気持ちが分かりませんが」


「そうだな、見合いもいつも断っていたからな」


「ええ。仕事を粗末にするわけにはいかなかったので。ですが、一人だけ心から愛していた人がいました」


「そうなのか」


「その者は五年前に病気で亡くなりました。葬式にも行けず……」


「それは、悪いことをした。すまない」


「いえ。言えなかった自分も自分です」


「こうして、最後に思い出話に浸るのも悪くないな。草壁の新たな一面も知れたしな」


「そうですね。最後の楽しみですね」


「あぁ」


「司令官」


「どうした?」


「自分は生まれ変わっても貴方の秘書をしていたらいいと思っています。貴方はどう思いますか?」


「そうだなぁ。私は草壁の補佐をしてみたいよ。辛かった立場になってこそ、その者の気持ちが分かるからな」


「でしたら、自分は司令官の立場に。支えているだけでは分からない苦労もあると思いますから」


「そうだな。来世では、幸せだといいな」


「はい」




――富士宮かがりの場合


「か~がり!」


「あれ、どうして……」


 目の前には死んだはずの友がいた。


 下見作戦の時に死んだ、佐渡が……。


「かがり頑張ってるなぁ。俺もかがりを支えたかったよ」


「お前、そんなこと……」


「かがりはどうだったか知らねぇが俺はお前のこと一番の友だと思ってたからよ! 恥ずかしくて口には出せなかったがな」


「佐渡……」


 死んでから、友の本音を聞くなんて。


「俺だってお前のこと一番の友だって思ってた! 俺より早くに死ぬなんて」


 思わなかったよ。


 ここが夢の中からずっといたい。覚めてほしくない。


「かがり、ここからが正念場だ。俺は作戦の時に何もできなかったけどお前はきっとやってくれるって信じてるよ! お別れだ。まだこっちに来るなよ!」


「待って。待って___!」


「っはは。初めて名前を呼んでくれたな。照れて呼べなかったお前が」


「何度でも呼ぶよ! だから……」


 俺も連れて行ってほしい。


「駄目だ。お前のことあの世で気長に待ってるから、ゆっくり来いよ。じゃあな」


「待ってよ!!」


 佐渡は消えていった。


「はっ!」


 目が覚めると火の匂いがした。


「っ」


 どうして。どうして死んだんだよ……。


「俺、お前の分まで頑張るよ。だから、あの世で応援しててほしい」


 頑張って、頑張って。


 それでも死んだらあの世で酒でも飲もう。






 それぞれの想いや覚悟を胸に動き出した。


 その行動の意味や、覚悟の証。


 全て分かるのは四日後である――

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