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黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
第三章 感情
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第四十九話 最終討伐作戦会議

「俺、決めたよ」


「え?」


 寝転んでいた小香は驚いた様子でこちらを見ている。


「作戦。アルファを討伐するための作戦」


「そうか……」


「急に思いついたわけじゃないぞ。ずっと前から本当はこうした方がいいんじゃないか、こうするべきじゃないかって思ってたんだ」


「どうしてそれを言わなかった?」


「どの作戦でも、誰かが犠牲になって誰かが生き残るから。どの作戦でも変わらないことだ」


「たしかにそうだな」


「俺自身、最初はアルファを倒して両親や友人の仇を取れたらそれでよかった。だけどいつしか、誰も犠牲にしたくないって思い始めたんだ。おかしいよな。死んでゆく隊員にすでに情が湧いてるってさ」


「おかしいことではない。短いようで長いこの期間。少ない仲間と育んできた友情や信頼はすぐに切り離せるようなものではないことぐらい汝の言動を見てれば分かる。正直言って、我も少し情が湧き始めている」


「小香もなんだな。少し安心した」


「きっとここにいる誰もが、誰も犠牲にしたくないと思っているはずだろう。皆、数少ない仲間を失いたくないんだ」


「そうだよな。これ以上は……」


 失いたくない。


「我はどんな作戦でも汝に着いて行くよ。それしか、方法はないんだからな」


「ありがとな、小香」


「うん」


 俺は不時さんに明日、作戦会議をしてほしいと頼んだ。


「では、最終討伐作戦会議会議を始めます」


 こうして、俺達の最終作戦会議が始まった。





「まず最初に、僕は今普通の人間じゃない」


「「え?」」


「一度死んで、蘇った。河野水谷だ」


「ど、どういうことだ?」「河野水谷って言えば、俺達が逃げるために囮になった高校生の……」


「そうだ。これが証拠」


 俺はフードを取り、顔を曝け出した。


「嘘、だろ……」「最高司令官は知ってたんですか!?」


「あぁ。黙っていてすまなかった。誤った情報や誤った噂が流れると困るんだ」


「そう、ですか……」


「次に、俺と同じようにフードを被った女、小香。コイツは巫女という特殊能力を持つ一族の生き残りだ」


「え。え?」


 隊員は戸惑っている。無理もない、今まで俺達が隠してきたことを全て教えているのだから。


「初めまして、我の名は小香。必ず、汝等の力になると誓おう」


「俺は蘇って、小香は生まれてから特別というか、特殊な能力を持っている」


「その、能力っていうのは」


「俺はアルファが透けてみえる。小香は結界という護身術を使えることだ」


「あ、アルファが透けて見える!?」


「今も、目覚めた女王の瞳がこちらを見ている」


 俺は女王、巣がある方角を向いた。


「それじゃ、作戦が有利に……」


「そういうわけじゃない。この中に“裏切り者がいる”」


「え」「嘘だろ」


 そう、ここからが勝負。


 ここからすでに、最終討伐作戦に入っている。


「俺達には、ある共通の能力がある。何か分かるか?」


「いや……」


「!」


「心の声が聞こえる。これで何か後ろめたいことがある奴は動揺して、腰が引けた。なぁ、分かるよな? 生見さん」


「っ」


「ここからはあんまり関係ないと思うが聞いておいてほしい。裏切ろうとしたらどうなるかってことを、な」


 俺はじっと、生見さんを睨んだ。


「あーあ。折角、口調も会話の流れも変えて上手く誤魔化してたのに、チートみたいな能力使われたらたまんねぇわ」


「生見君。どうして!」


「どうして? そんなの、決まってるだろ。全員殺すため」


「だよな。歪んだ性癖もって、前の奥さんも殺したもんな」


「ははっ。そこまで分かってるんなら俺がこれからすることも分かるよなぁ? 水谷くんよぉ」


「春を差し出すんだろ。女王に近い、強いアルファに」


「そうだよ。ま、もう周りの人間は死んでるかもな~」


「それはどうだろうな」


「つ、捕まえろ!」


「「はっ」」


 周りにいた隊員が生見さんを捕まえた。


「俺のやりたいこと、いずれ分かると思うぞ。歪んでなくても、戦いを好む奴はな」


「! 避けろ!!」


「え」


 バーン、と銃声音が。すると生見さんが倒れた。


「後味悪いなぁ」


 少し声が震えたような気がした。


 生見さんは拳銃で頭を撃ち、死亡した。最後の顔はどこか満足げな顔だった。


「河野殿。これでよかったのか」


「よくはねぇな。考えてた中で最悪の選択をされた。だけどこれさえも、見抜かれてたんだろうな。拳銃持ってたし」


「そうだろうな。そうじゃないと……」


「これで、裏切り者がいなくなったらいいな。自害ってだけじゃ裏切り者が出る可能性がなくなったとは言えないからな」


「そうだな。厳重注意しながら作戦を進めよう」


「あぁ」


 俺達が会話していた間に生見さんの死体はどこかへ消えていた。


「不時さん、生見さんは?」


「とりあえず死体は隣の部屋へ移したよ。今後はどうするか、迷うがいずれ決めるよ」


「分かった」


 死臭がするが、扉を開けたまま会議が再開された。


「続きから始める。次は作戦内容について。女王がどうやって倒せるか、検討はついているか?」


「なんとなくですけど、頭とか体を潰せれば。人間と同じように……」


「理屈は合ってるな。通常のアルファには分からないが、女王には聖生という人間でいう心臓部分がある。そこを潰せさえすれば女王が死に、アルファもいずれ消滅するだろう」


「少し、希望が見えてきましたね!」


「だが、その聖生を潰すことは特別な人間にしかできない」


「特別な?」


「巫女一族が命と引き換えに発動する、特殊な結界でしか潰せないらしい」


「なら、小香さんは……」


「想像通り、聖生が潰れれば小香は死ぬ。逆に考えれば小香が別の所で死ねば俺達は女王を倒せないってことだ。小香は俺達にとって希望なんだ。どこかで殺すわけにはいかない」


「命と、引き換えに俺達が……」


「俺達の部隊だって、小香が女王に辿り着く前に全滅してしまうかもしれない。未来は、やってみたいとその時が来ないと何が起こるか分からない。最後までどうなるかは誰にも分からないんだ」


「私達は何かにすがるしかないのだ。本当に最後だ。皆、腹を括ろう」


 不時さんがそう言うと皆、覚悟を決めたような顔つきをした。


 元々腹を括っている人が多いだろうが、ここで。


 ここで再度、腹を括りなおしただろう。


 迷っていた者は覚悟を決めた。


 俺も、覚悟を決めるんだ。


「小香君がアルファを倒す上で重要だってことは分かった。内容はどうするんだ?」


「全員で突撃だ。一人ずつやっても結局どうにもならねぇってことは最初から分かってた。だけどどうしても、認められなかったんだよ。だけど決めたんだ。誰かが生きるには誰かが死ななきゃいけねぇってことをな」


「あぁ、そうだな……」


「内容は全員突撃、武器は各自で決めよう。対空砲を使うもの、自分の得意な武器で倒す者。前線で、その命を賭けて戦う者。各自で決めよう。最期は自分らしく、自分の決めた道に進もう」


「私はそれに賛成しよう。決められた道に進むのは駄目なことだ。自分の意思で、自分の死に場所を決めよう」


「……俺も、賛成です!」「俺も!」


 賛成してくれる人が多い。


 元々ここに残った人達は自我が強い人だったのだろう。戦う意思があり、死に場所は自分で決める。


 我が道を行く人達、それがこの部隊にいる人達。


「作戦決行は四日後、八月一日。それまでに意思を固め、行動してほしい」


「さ、準備を始めよう!」


「「「了解!」」」


 作戦決行は四日後。


 その時の俺達の姿は誰にも想像できない。


 壮絶なのか、奇跡が起こるのか。


 それすらも、神のみぞ知ることである……。

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