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黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
第三章 感情
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第四十六話 春への更なる危険

「ふぅ」


 結界に守られ、あまり恐怖のない生活をしている。


「お姉ちゃん、体が痛いよ……」


「体が痛い? どの辺り?」


「全部……」


「鏡くん、どう思う?」


「ただ、地面で寝てるから体が痛いだけだろ、疲労も溜まってるしな!」


「そうよね。大丈夫よ、すぐに治るからね」


「うん」



「ねぇ、鏡くん。何かを感じるの」


「何かを?」


「うん。春の体が痛いってのも気になるけど、水晶。あそこにある水晶光ってない?」


 中央に置かれた丸井水晶がかすかに光っている。


 今まで気づかなかったけれど、ずっと光ってたかもしれないし今日光ったかもしれない。


 水晶が光る、春の体が痛い。この二つのタイミングが良すぎる気がする。


「たしかに、小さな光があるな」


「そうでしょ? タイミングが良い、何か起こるかもしれない」


「そうだな。注意しとくべきだな」


 鏡くんがそう言った瞬間……。




「キャーーーーーーーーー」


「え」


 甲高い声が聞こえた。


「誰? 春?」


「ううん、違うよ」


「なら……」


 誰なの。ここにいる女は数少ない。


 ほとんどの女が寝ているから甲高い声を上げられるはずがない。


「何だ何だ?」「どうかしたのか?」


 さっきの甲高い声で皆起きたようだ。


「水晶」


「え?」


「水晶が……」


 鏡くんにそう言われ水晶の方を見ると。


「どうして」


 さっきよりも強い光を発していた。


「うっ、痛い……。痛いよぉ、お姉ちゃんっ」


「春?」


 胸を押さえ、蹲り苦しんでいる春の姿が見えた。


 私はすぐさま駆け寄り、背中を摩った。


「大丈夫、大丈夫だからね」


 春の背中を摩っていると、今だかつてないぐらいの地響きが鳴った。


「どうなってるんだ?」


 横で鏡くんが動揺している。


「分からない。だけど何か、良くないことが起こったのかもしれない」


 本当にどうなってるの? 


 まだ日が昇ってる時間。地上に確認に行くことはできない。


プルルルル


「不時さんから……」


 電話の相手は不時さんだった。もしかしたらこの現象について教えてくれるかもしれない。


「はい、冷夏です」


「連絡が遅れてすまないね。先ほど、小香君から知らせが入ってね。聞こえた甲高い悲鳴は女王が目覚めたかららしい」


「女王が目覚めた?」


「詳しいことはまた、追って説明するよ。だけどこれだけは言える。女王の器に更なる危険が及ぶことを」


「そんな」


 これ以上、春に何が迫るっていうの?


「そちらに何か異変などはあるか?」


「声が聞こえる前から体を痛がってて……今は胸を押さえて倒れてます」


「胸を。小香君と一緒だ」


「小香と……」


「そうだ。何か共通することがあるかもしれないな」


「はい。それと、水晶が光ってます」


「水晶?」


「声が聞こえる前まではかすかな光でしたけど声が聞こえてからは強く光ってて……。皆も混乱してるし、どうすれば」


「その場を動かないように。女王が目覚めたからと言って、すぐに行動を表すはずではないだろう。こちらも慎重に動こう。火が落ちても地上には上がらないように」


「分かりました」


 指示をもらい、私はそれを他の隊員にも伝えた。


「春、春。大丈夫?」


「痛いよぉ……」


 今だ胸を押さえ、苦しんでいる春。


 冷や汗も掻いており、私は声をかけ「頑張れ」や「大丈夫?」と聞くことしかできない。


 もっと他に何かできることはないか、もっとかけてあげられる言葉がないか。


 必死に探すばかり。




――ドーン


「何?」


 少し先から大きな物音がした。


 ドシドシ何かが歩く音が聞こえる。もしかして……。


「うわぁ!?」


 横にいた隊員が腰を抜かした。それもそのはず。


「アルファ……」


 三メートル、小さいサイズのアルファがこちらに向かい進行してきている。


 地上からの光が漏れているのが見える少し先の道。その道の塞ぐようにこちらに歩いてくるアルファ。


 状況は絶望的。


「冷夏ちゃん、これどうする」


「どうしようもないよ。私達を囲う結界に頼るしかない」


 この結界が壊されてしまえば私達は終わる。


「っ」


 足が竦む。春の背中を摩る手が止まる。


「終わりだ。俺達はもう、終わりなんだ!!」


 叫ぶ隊員。泣く隊員。諦めてる隊員。


「違う、俺達は戦うんだよ! ここに逃げてきたわけじゃない。そうだろ!?」


 戦う意思を持つ隊員。戦闘用意をしている隊員。涙を拭い、立ち上がった隊員。


「おねえちゃ……」


「大丈夫。春は私が絶対に守るから」


 何があっても、春だけは。妹だけは守るってあの日から決める。


 私が生き残った理由は死んだ両親や祖母に代わり、春を守るため。ただ、それだけ。


「冷夏ちゃん?」


 立ち上がった私を不審に思った鏡くんが声をかけてきた。


「鏡くん。私にもしもがあったら、ううん。もしもがなくても春をお願いね」


「え、冷夏ちゃん。もしかして……」


「大丈夫、まだ死なないから。ここで死ぬわけにはいかない、まだ早いから」


 今にも零れそうな涙を拭い、こう叫ぶ。



「私は死なない!! 大切な人を守るため、この日本を守るため!」


 私は絶対に死なないから。


 だからそんな顔しないで、衣月くん。

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