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黄昏時、俺は生きた  作者: 田中ソラ
第二章 作戦
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第三十五話 俺の最期の役目

「それでは、作戦を開始する!」


 対空砲を基地から移動させる作戦がついに開始した。


 俺も戦闘服に着替え、フル稼働する。


 隊長達と下見作戦をした時の道を通り、重い対空砲を運ぶ。


 今注意しなければいけないのはアルファではない。志春だ。


 いつ、どこから表れるか分からない。


 それに首都から春がいなくなった以上、今ここにいるかさえも不明だ。


 春を殺しに追いかけたのか、それともまだ首都にいるのか。


 検討もつかない。


『第一部隊、順調!』


『第二部隊、順調!』


 着々を運ばれていく。


 何も起きなければ今夜、明日、明後日で全て運び終えられそうだ。



『こちら偵察。南に不審な影を発見!』


『総員、南に注意!』


 恐らく志春が現れた。


『うわぁああああ!』


 無線機から悲痛な悲鳴が聞こえる。


 一人、また一人。


 これでは討伐作戦の前に壊滅してしまう。


「行くしかない」


 俺は運んでいた対空砲を端に置き、無線機に手をかけた。


「こちら河野。俺が囮になります」


『は』


 俺の決意が固まった。


「俺は志春に目をつけられている。不時さんも知っているだろう」


『あぁ』


「全隊員が逃げる。または今持っている対空砲を運び終える時間稼ぎをする」


『……確実なのか』


「あぁ。任せてくれ」


『分かった。総員、三十分以内に作業を終了するように!』


『『了解!』』


「不時さん。俺のカメラをつけておく。そっちから確認してくれ」


『分かった』


 俺は偵察に位置を聞きながら志春がいる方角へ向かって、ひたすら走った。


 これが、俺の役目だ。死んでも構わない。




「あれか」


 白い羽が背中についている女を見つけた。


 足元には仲間の死骸が転がっている。


「おい」


「あら」


 声をかけるとこちらへ振り向いた。


「先日ぶりだなぁ。まだここにいたのか」


「勿論よ。だって春ちゃんを殺していないもの」


「そうか」


 コイツは春がここにいないことを知らない。


 好都合だ。


「もしかして、私の仲間になってくれるのかしら?」


「さあな。仲間にしたけりゃもっと俺が勧誘してくれよ。気が変わるかもしれねぇぞ」


「まあ。これは手ごたえがありそうだわ」


 少しでも時間を延ばす。


 どんなことでもいい。逃げられる時間さえ作れればそれでいい。


「まずはね、私が強いってことね」


「強いって、どんな?」


「この真っ白な六枚の羽で空を飛ぶの。この羽はね、神様に与えてもらったものなのよ」


「へぇ。神様、ね」


「本当は輪廻の輪に乗って生まれ変わらないといけなかったけれど私が我儘言ったのよ。まあ、今では堕ちた天使だけれど」


「堕天使か」


「えぇ。いつまで経っても成長しない下界の子達に腹が立っちゃって。私が生きてればこんなことにはならなかったのにーって嫉妬しちゃったの」


「そんなことで堕とされたのか」


「天界にいる者は皆に平等に接しないといけないの。あと、心も綺麗じゃないとね」


「なるほどな」


「私は無意識に前世であった日本人を贔屓しちゃってたのよ。いつしか、皆我が子みたいに思えてきたの」


「愛情か」


「えぇ。けれどいつしか嫉妬に変わった。私が生きていればあの子達が生きれたはずなのに、どうしてこうしないのって」


「我が子が死ぬのも目の当たりにしてるから」


「そうね。まあ、嫉妬というより後悔に近かったのかもしれないわ」


「天使になったからって嫉妬するなって方がおかしいよな。誰だって嫉妬はするさ」


「あら。貴方も嫉妬してたの?」


「そりゃ人間だからな」


「そう。人間だから嫉妬する……」


 マズイ。

 

 まだ時間を稼がないといけないのにここで終わっちまうのか?


「ふふふ。嫉妬してる天使に向かって人間だから嫉妬するって矛盾してるわよ」


 よかった。


 まだ時間は稼げそうだ。


「天使ってなんだと思う?」


「難しい質問だな。神様の助手みたいな感じか?」


「この世ではそんな風に思われがちね。まあ、詳しいことは教えられないのだけれど」


「なんだよ。教えてくれねぇのかよ」


「ふふ。話は変わるけど貴方、好きな子いなかった?」


「いきなりなんだ」


「私ね、生きてるときとっても好きな人がいたの。上の位の人だったけれどずっと好きだったの」


「そうか」


「ね? 貴方にも気になる子とかいるでしょ?」


「まあ」


「その子とかどうなったの?」


「さぁな」


「私の好きだった人はアルファに喰らわれたの。それも私の目の前で」


「酷な話だな。それは」


「そうでしょ? このことを他の天使に話すと笑われるの。無様、悲恋だって」


「ひでぇな。んなの天使じゃねぇよ」


「貴方もそう思うわよね? だから殺してあげたの。天使じゃなくしてあげたの」


「……」


「罪なのよ。人の不幸を嘲笑って。恥ずかしくないのかしら」


「だからと言って、殺すのは違う」


「え?」


「俺だって殺したいと思う奴は沢山いた。だけど殺さなかった。心の中で我慢し続けたんだ」


「どうして?」


「アイツらを殺したら俺は殺された奴よりも酷い男になる。俺はアイツらよりも絶対に良い男になって、見返してやりたかったんだよ。まあ、それももうできねぇがな」


「あら」


「だから志春。その考えだけは同意できない。悪いな」


「酷いわ。やっぱり貴方のこと仲間にできない」


「そうか」


 あの時のように刀が出てきた。


 腕時計を見ると二時五十分を指している。すでに三十分以上経っている。


 これで大丈夫だ。



 冷夏、悪いな。





 名残惜しいけど、先に逝くよ。




 春と、衣月と一緒に長生きしろよな。

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