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64話 川の上にて

 カラマリとの模擬戦闘。模擬、という名の割には少なくとも相手の動きが本気に見えて仕方がない。岩陰に隠れてワンチャンスを作れるかとも思ったけれどもそもそもその岩陰が見つからない。強いて言えば川の中にあるくらいか。流石にそれじゃ隠れる場所にはならないし。

 相手は依然として此方に対し距離を詰める戦い方を続けている。それを何とかこちらは距離をとっている、というそのいたちごっこみたいなものの繰り返しの状態だ。

「ほっ!」

 いたちごっこ、とは言っても相手の方が戦闘の経験に関しては当たり前ながら上だからダメージこそ無いに等しいとしても攻撃を地道に食らい続けている。

「足は結構あるっぽいすけど、そんなんじゃじり貧っすよ!」

「っ……」

 距離をとるには……もっとこう目くらましが出来ないと厳しいか。一発、雑にかますべきか? 流石に相手に当てるのは良くないし……かといって地面に当てたとしてもそれはそれで相手の心象が良くない状態に陥りそうだな。

 単純に地面に当てて土煙等を起こせたのならば多分距離はもっと取れると思うのだけれども、その土煙を起こすにあたって無駄に高威力な魔法になってしまうと相手目線では意図的に力を抜いていたとかそういう風に思われかねないし……。

 あ……いやこれなら……。

 意図的に右手を後ろにやって魔力を籠める。それも相手に対して何かを訴えかけるように。

「……!」

 ぴく、と相手が反応して追いかけるのを止めた。此方が何か魔法を仕掛ける、という事を動作で伝えてみたところ相手が警戒して引いてくれたようだ。多分此方の攻撃を見たいという意図もあるだろうけど……。

「……撃たないんすか?」

「避けられるのが目に見えてたんで」

 本気で放てば多分くらわす事も出来ただろうが、流石にな。一応バトル漫画とか小説みたいなものでの知識くらいは最低限ある……つもりだ。

「狩りだけっていう割には……成程」

 けれども距離を取ってくれたのならば話は別だ。右手を意図的にそれらしく動かしながら、同時に右足に魔力を送った。

「!」

「エアライズ!」

 ずおっ、と轟音を伴いながら這い出る風の魔法。地面を伝ってカラマリの足元から湧き出たが、これに関しても悟られていたようで先んじて避けられた。


「うっおぉ……危なっ!?」


「おお……今のは確かに中々……」

「ってもよけられる範囲だろ」

「流石に動きが大袈裟だな」


 外からの評価は辛いものだった。こちとらホントに初めて何だから許してくれと思うばかりである。

 しかしながらこれによって更にカラマリとの距離は取れた。行動するなら今か。

「成程、距離を取りたがってた理由はこういう事っすか」

 カラマリはそう言うとばばっと大地を蹴って再び動き出す。今度は俺を追いかけるという所にこそ変化は無いが一直線ではない。ジグザグの形で此方に近づいてくる。

(……ああ、成程)

 先程俺が見せた魔法というのが足を伝って地面から飛び出したものだから、多分あの動きはそれを可能にさせないもの、なのだろう。確かにまぁエアライズは難しいか。けれどもそれで決着をつけるつもりはない。というか此方から仕掛けるという事は基本的にしないつもりだ。

 しかしながら相手側も俺の攻撃を待っている、という印象があるのだよな……。

「こっちから行くしかないのかな……」

 良い具合に勝負を終わらせられないものか……?

 カラマリはジグザグに動きながらも此方に近づかんと動いている。それを躱しつつ策を練る。まずは俺に何が出来るか、その上で何をするのがベストか、という事だな。

 魔法として使えるのはワープ、それから水とか風とかでの攻撃魔法……まぁ今使える可能性があるのはこの辺りか? その上で相手を傷つけずに決着をつける必要がある。

 水魔法で爆風起こすのが一番正しいルートだろうか?


「エアライズ!」

 足裏を伝って放たれる魔法。平然と躱されたが充分である。これはあくまで牽制用であり誘導を目的とした魔法だ。魔法で動きを多少なりとも制限しながらどうにか逃げていく。方向としては川。

 今の身体能力を考えたら多分ジャンプで飛び越えることは容易な筈だ……とは言え相手もそれは多分同じことである。大事なのは川という場所と川を飛び越えるタイミングだ。それが同じでない、という事実にこそ意味があるという物だ。

 川、というものは……少なくともこの場においての川というものは基本的に渡り方が一直線になる。つまりはこちら側から反対側に渡る、というプロセスが変わらないという部分だ。そしてそれは川である以上基本的に目の前のカラマリに関しては俺の後を追う形で一直線に動く……筈だ。


 川が近づく。俺は足に力を入れて一気にジャンプして反対側に跳んだ。

「! 川跳べるんすね……でも」

 そしてカラマリは俺と同じように足に力を入れるとぴょん、と跳んで見せた。

「俺も跳べるんすよ!!」

 得意気である。しかし俺は既に対岸にいる。そして相手はいま正しく跳んでいる最中だ。

「エアライズ+アクアボール」

「!」

 ジャンプ中は身動きは取れない。それで以て川という場所、その下には水が存在する。途端にカラマリは空中で上手い事体勢だけ変えて掌を水面に対して水平に向けている。警戒先は正しく真下だ。

 けれども俺が狙ったのはそこではない。

 狙ったのは、横。

「うぉっ!!?」

 カラマリの横に思いっきり魔法を行使して風の魔法を川の水底で起こした。それにアクアボールで水を増やす事で大きな波を成してカラマリの横に当たった。彼はただの人間である。故にここで攻撃を食らった場合、バランスを崩す。

「今っ!」

 大地を蹴ってバランスを崩したカラマリの元に、彼の懐に飛び込む。するとどうだろうか、彼はバランスを崩しながらもにやりと笑って右の掌をこちらに突き出す。

 此方に対してクリティカルヒット。鳩尾に当たった。


「ストップ!!」


 それと同時にガレオスが声を荒げて叫んだ。


 ばちゃん、と音を伴いながら二人同時に川の中に落っこちた。しまった、濡れることまでは想定してなかったぞ。まぁ変えがあるからまだいいか? ざばん、と大きな音としぶきをあげる。

「うっひゃあ……濡れちゃったすね。大丈夫っすか?」

 起き上がってカラマリが此方に手を差し伸べた。その手を掴んで此方も起き上がる。

「取り敢えずテメェ等服乾かすか」

 ガレオスが歩み寄ってそう言った。まぁこんだけ服濡れてたら戦闘もくそもないわな、という話である。


 そういう訳で模擬戦闘は一度中断、という形で終わった。

初めて投稿予約なるものを使いました。

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