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63話 模擬戦闘、開始

 食事を終えた後はどうしようかなと思ったのだが、イドロヴィアの人達がガレオスのみならず皆俺に興味を持ったらしく半ば強制的に連行された。

 それでもって連れてこられた場所は狩場である。俺がこの港町でガレオスと出会ったあの場所だ。

 位置としても似たり寄ったりな場所で、橋から少し離れた、海に近い川沿いの場所である。もしかしてこれ完全に定位置と化しているのか。


「ええと……?」

「いやーリーダーの魔法防いだって聞いちまったからな、興味がわかねぇ訳ねぇんだよな」

「そうっすそうっす」

 とはいってもこんな狩場で何をする気なんだこの人たち。流石にこんな所で唐突に戦闘をするとか言い出さないよな? けれどもそんな願いとは裏腹に彼らは意気揚々とウォームアップをしている。


「自分は何をさせられるのでしょうか……」

「何って……戦闘訓練っすけど」

 え。

「いやいやいやいや!?」

 いやまぁ予想としてあったとはいえ流石に無茶が過ぎるだろ、何よりこっちの了承ってものは無いのか。


 ……無いのか。


「オレの攻撃で無傷だったんだから大丈夫だろ」

「いや、いやでもちょっといきなり言われても……」

「ってもサクヤさんだって冒険者なんすよね? だったら戦闘経験だってあるんすよね?」

「え……いや……狩りしかしてきてないんで……」

「それなら十分だな」

 話通じないのかこのチーム。

「戦闘狂集団め……」

「ま、ああなった以上あいつ等を止めるのは無理だぜ。一応加減はさせるしやばかったらオレが助けに入るから心配すんな」

 そういう問題ではないのだがな。

「ええ……そ、そもそもこんな狩場の真ん中で……」

「ここなんてオレらしかこねーから心配すんな。少なくともこの状態を見て近寄る野郎なんてテメェくれぇのもんだよ」

 権力の乱用じゃないのかそれ。


 諦めるしかないな、と割りきって此方も戦闘準備を始める。といっても対人戦等の心得なんてないがな。

 目の前で完全に戦闘態勢状態の三名に関して、彼らの実力というものが分からないので何とも言えないけれどもガレオスが認めた人間、という事であろう。しかしながらまぁ……魔法否定もあるし女神のチートバフもあるし、で負ける事はないと思うが……。

 けれども相手のメンツというものがある。そもそも結論として勝てませんでした、となれば話は早かろうがそうでない場合にコテンパンにしては問題があろう。一応この街の治安維持を守るっていうのが主な人々だからな……。

 取り敢えず守りに徹するのが一番か。


「誰からだ?」

「俺行きたいっす!」

「ま、様子見ってんなら一番適役かもな」

 カラマリが名乗りをあげると他二名は意外にも潔く譲っていた。


「サクヤさんって何か武器とか使うんすか?」

「ああ……いや……基本的には魔法だけですね」

「じゃ、俺もそれで行くっすかね」

 そう言うとカラマリは腰につけていたベルトを外して他のメンバーに渡していた。欲見てみると剣とか小刀っぽいものがベルトに留められている。それで以て両手を閉じて開いてと繰り返している。

 魔法否定にプラスして女神の魔法でもって確か下手な剣も効かなかった気がするがまぁ良いか。此方に有利な状態にしてくれているという事であるし。


「あの……その……これって具体的な勝ち負けとかあるんですか?」

「俺たちでやる時はまぁ危なくなる前に外野がストップって感じっすかね」

「成程」

 それなら取り敢えず防戦一方にしとけば勝手にストップかかるかな? 流石にこっちからストップになりそうな行動をしかけるのはちょっとまずい気がするし。手を抜いてる、とはバレない程度に上手に……なんてできる程の技量は残念ながら持ち合わせていないが……。そもそも本当に戦闘経験らしいものが無いからどう立ち回るのが正解なのだ。狩りと絶対に勝って違うだろこれ。

 しかしてそんな不安気な俺を無視してイドロヴィアの面々は戦闘を開始せんとする。


「ぃよーし、テメェ等準備は良さそうだな。おら、開始だ開始!」

 ガレオスが大きな声で叫ぶ事でとうとう開始してしまった。

 戦闘狂たるカラマリはその合図とともに此方に駆け出してくる。魔法使うんじゃないのかよ。悲しきかな徒手空拳に関しても心得は皆無である。喧嘩とかしたことないしな。

 まぁ確かに魔法オンリーの世界ならそれこそこのイドロヴィアの面々もそうであるが筋肉質である必要ないもんな……。

「せぇのっ!!!」

 右掌による一撃。掌底打ちというやつだ。それが右脇腹にクリティカルヒットする。

「っ……!」

「おりょ?」

 ダメージに関してはほぼゼロに等しいけれども食らった衝撃は正直でそのまま右脇腹からバランスを崩す。少なくともフィジカルの勝負になったら分が悪いのは目に見えてるから一度離れるしかないな。地面を右足で蹴って後ろに跳ぶ。女神の魔法で身体強化が多少なりとも施されてるお陰で結構な距離を稼げたようである。

「おお、跳ぶっすね」

 カラマリが感心している。

 そうか、そうか。ガレオスの放った魔法を防いだって言ってもそれが俺の魔法否定っていう力によるものである、と説明はしていないから彼等目線からすると単純にフィジカルの強さで無傷で済んだ、と思われてる可能性が普通に浮上するな。

 ただまぁ俺の強さって基本的に魔法メインの所はあるから距離をとった戦い方をさせて貰うがな。まぁ致命的な一発を此方から放つつもりは無いので、ある程度魔法で牽制しながら逃げ回る形になるか。

「逃がさないっすよ!」

 けれども相手も同じように地面を蹴って此方との距離を詰めて来る。もう一度掌での一撃が来るな、と予測して今度は上にジャンプした。相手の背面に着地してそのまま更に距離をとるためにまたも地面を蹴る。今の所見様見真似でもなんとかなっている感じはするが……。


「防戦一方って感じか」

「ほんとにアレリーダーの魔法食らったのか? どうにもそうは見えない程には逃げ腰のようだが」

「ほんとに食らってんだよ。流石にその光景が見間違いだとかは思っちゃいねぇっての」

 外野はそんな会話をしていた。くそうこっちの気も知らずに……。

 カラマリは器用に此方の動きについてきている。此方に一撃入れる、という事で踏み込みは最低限であるから余裕で追いついてきている。

「どうしたんすか? 攻撃とかしてきて良いんすよ!」

 だったらその余裕をくれという話なんだがな。一応逃げながら右手に魔力自体は込めていたものの……イメージを膨らませなければ魔法は発動出来ない。使い慣れた魔法なら多分即座に打てるがそれに該当するのってワープか水魔法かサーチか……その辺りだろう。とは言え水魔法に関しても一応ヒュージボアを即座に亡き者にする威力が吐き出せてしまうから威力を考えないといけない。俺が受けるものが致命傷とはならなくとも俺から受けるダメージはゼロにならないからな……。

 近くに何かないか? そう思いながら辺りを見る。川と海と草原しかないな。

「ぐぅ……」

 方法を考えなきゃな。

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