62話 チーム
「え……っと?」
「え、リーダー今の話マジ何すか?」
くるりと向きを変えてガレオスの方に尋ねる。当然ながら彼はこくりと頷いた。それと同時に三人が湧く。事態を呑み込めてないでいると三名の内の一人が説明してくれた。
「いや、分からない? リーダーの魔法真正面から受けたんだよね?」
「はい……」
「で、話を聞く限りだと弁償してもらったの服代だけでしょ?」
「そう……ですけど」
「てことはさ、君はリーダーの攻撃食らってぴんぴんしてるんでしょ? それは普通に考えたら可笑しいでしょってこと」
成程な、魔法否定のお陰で体自体にダメージがないから、その魔法がどの程度のものなのか、っていうのが判別できないんだよな。そもそもの話魔法という概念があるのは散々教えられたけれども実際にそれを扱う人間に出会った記憶が無い。少なくとも知識を有していてもこの目で見た、となると……もしかしてテティスだけになるのではなかろうか?
即ち俺の比較対象ってテティスになるのか。神様相手だから無理も無いな。
「そっすよ。俺多分リーダーの攻撃真正面から食らったら普通に危ない自信しかないっす」
そう発言した男はまぁ確かに他と比べたら若干体が華奢ではある……が、それは比較対象が比較対象だからであってそれこそ俺何かと比べたら雲泥の差なのは明瞭である。
「それはテメェが貧弱なだけだろ」
「リーダーが強すぎるんすよ!」
となるとまたも俺、やらかしてしまったか。いや、でも魔法否定自体は女神関係なしの固有の能力であるし更に言えばテティスの指令としてはこの魔法否定の存在を知らしめて抑止力として作用させる事であるから、これに関しては成功と言っていいんだろうか。
「そもそもなぁ、カラマリ、テメェなぁ、オレのチームなんだからもちっと強くなれ」
「えー一応町じゃあ活躍してません??」
「オレ等よりはしてねー」
ここにきて一番年下そうな口調であった男の名前が呼ばれた。そう言えばこの人たちが何者なのかってよく知らないままだったな。それこそガレオスに関しても名乗りこそされたがリーダーという呼称に関しての説明は受けてないし。
「あの……今更なんですけど……」
「お? サクヤどーした?」
「皆さんってその……パーティーってやつなんですか?」
そう言うとカラマリと呼ばれた男は不思議そうにこっちを振り返る。
「あれ、知らないでリーダーと行動してたんすか?」
「え、いや……はい」
「俺たちはアレっすよ、港町中心に活動してるパーティーっていうかチームっす。イドロヴィアって名前の……結構有名だと思ってたんすけどね」
おや、完全にこの単語聞き覚えがあるぞ。そうか、そうか、確かにそうか。もっと簡単に気づけても可笑しくなかったはずだ。
俺はこの港町に来る道中で冒険者には何人か出会ったわけだけれどもその中でもがっつりと会話したが一人だけいる。ガタイが良くてそれでもってリーダーがどうだとか、魚がどうだとか言っていたし何ならその男もイドロヴィアという単語を発していたな。
「あの……港町に来るまでにそれらしい人に出会いましたね……」
「おお、そうかターニバの奴に出会ってたか」
「はい。まぁ名乗ったりしなかったので名前は今さっき知った感じになりますけど……」
「流石ターニバだな。名乗らねぇとか馬鹿過ぎんだろ」
お三方に関しても名乗ってもらってないんだけどな。心の中で呟いた所、それが聞こえた、という事は無いだろうけど一人が呟いた。
「そうは言っても俺らも名乗ってないだろ」
「あれ、そうですっけ」
「オレ以外名乗ってねーぞテメェ等」
「うっひゃー申し訳ないっす! 自分はカラマリで、そっちの細マッチョがオルカっすね。それで白髪の方がクテイスっす!」
背が小さめの男がカラマリで、先程から冷静そうな発言を繰り返しているのが細マッチョと紹介されたオルカのようである。それから煽りっぽい言葉を吐いているのがクテイスというらしい。つられて此方も名乗り返す。
「あ、ええとサクヤです……」
これで漸く全員分の名前を知ることが出来たか。まぁ覚えてられるかどうかは別であるが。
「チーム……ですか?」
「俺たちは冒険者ではあるが……基本的にはこの街に留まってるからな」
気になって詳細を聞いてみた。留まる理由を。それは単純明快、というかシンプルなもので、彼等は言うなれば警察のような機能を果たしているのだという。とはいっても逮捕がどうとかそういったものではなくて、抑止力だそうな。この街は港町という南の国からの冒険者も度々寄ってくるという事であるとか他の町と比べても冒険者の質が高いらしく自動的に悪事を働く者の数も増えているのだとかでそれを対処するための存在らしい。言うなれば治安維持か。
強い冒険者が固定で存在している、という事に大きな意味があるようだ。理屈だけで言えば俺がやろうとしている事と似てるのかな?
「オレが狩場に入り浸ってんのもそういう理由があんだよ」
「それはガレオスの趣味だろうが」
得意気なガレオスに対してオルカが笑いながらツッコミを入れた。すると小声でうっせとガレオスが呟き、皆が笑いだす。




