最終話 押し花の栞
遥か昔、この世界では四つの神があった。そこに住まう人々は各々の意思がままに一つの神を信仰し、発展を望まんとしていた。故に布教を理由とした戦争は続いた。それが神の意思だと言わんばかりに、それが神の思し召しだと宣うように。
それでもその戦の終末など誰も予想しえなかった。この戦争は唐突に終わったのだ。やがて講和が結ばれ四つの神の存在はそのままに東西南北にそれぞれの地を分けて世界は平和になった。四つの神毎に国が如く別れ互いに協力をしその世界毎発展を続けた。今や戦争などは過去の話である――。
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本を閉じた。ベッドの横のスペースに閉じた本を置き、それから意味もなく窓の外をぼんやりと眺める。
此処は病院。そして俺はベッドの上である。記憶が若干混濁しているが、どうにも俺は車に撥ねられたらしい。らしい、というのはその辺りの記憶がないからである。故にそれは医者から聞かされた話だ。
気付いたときは既にベッドの上。見知らぬ天井が俺を迎えた。真っ白い天井が。
最後の記憶は……確か先程まで読んでいた本を、売りに行こうって思って外に出たのが最後だっただろうか……。
まぁ結果として幸か不幸かその売ろうとした本がこの病院のベッドで過ごす上で暇つぶしにはなってる。
事故の所為で今のところ体はまだ上手く動かないけれども、時間経過でちゃんと治るという話らしい。それまでは只管にこのベッドでほぼ寝たきり状態で過ごしている。
「早く体治さないとな~狩りにも行けないし
……」
そこまで言って自分自身に疑問を抱いた。今何か変な事言ったな、と。
駄目だ、事故に会ってからの記憶がどうにも混濁しているみたいだ。目覚めるまでの間、知らず知らずのうちに見た夢か何かが幻日の記憶と混じってるのだろうか……。
たまにこうした発言があるらしい。見舞いに来てくれる親だったり、あとは面倒を見てくれている看護師の方だったりがそう言っていた。この辺も時間経過でちゃんと治ってくれれば良いんだけどな……。
「治れば……。……?」
アレ……何だこれ。目に違和感というか、変な感覚を覚えて思わず手で目の辺りを擦った。……なんか濡れてる……?
知らないうちに欠伸でも出てたんだろうか、涙で濡れていた。随分と長く寝てたんだから、眠気による欠伸じゃないだろうし……退屈によるもの……かな。けれども欠伸をしたという感覚もなかったが……まぁ良いか。
「っと、挟んどかないと続き忘れるな……」
ふと思い出したように、袖で涙を拭ってから、先程テーブルの上に置いた本を再び手に取って読んだところにスッと差し込んだ。
紫苑の押し花で出来た栞を。
これで終わりです。




