APPEL本部にて
ズーン、、という効果音を発したくなるくらい凄く重たい空気だ。
「あの、、シンさん?僕達どれくらいまでここにいるのでしょうか。座りっぱなしで何も進まないですよ、、」
「あぁ、、分かんない、あはは、、」
「笑ってる場合じゃないですよ、、」
ここはAPEEL本部の本部長館室前の廊下。つまり1番の偉い方がいる場所の前の長椅子に座っている。
恐らくシンさんの始末と僕の行方を決めるためにいると思われる。
それが、2時間近く続いているので困っている。
「ですが、このままだと何も変わんないですよ。もう11時半ですし、、入隊式も終わる時間です」
「いや多分そろそろ終わるって事は長官も戻ってこられるだろう。そう信じて待っているんだ、、」
アカリは少しいい迷惑だなと感じつつもそれは言わずにしておいた。
「お?」
シンさんが振り向いたその方から足音が聞こえてきた。2人組だ。
「おいマフィ。彼らを面談室へ入れてくれ」
「了解致しました」
そして目の前に立った時には1人だけとなり
「私は長官殿の秘書の者でございます。長官から面談室に入れるよう命じられましたのでそちらにご案内します」
見た目は20代後半と思われるスーツを着てビシッと決めている眼鏡をかけた女性だ。
「だってさ。行こうアカリ君」
「分かりました、、」
全くテンションも上がらないので体が重たい。さらに2時間近く座りっぱなしだったので少し腰も痛かった。
「ここです」
向かったのはすぐ近くにある面談室。
恐らくここで長官と呼ばれる人と話すのだろう。
「「失礼します」」と2人でドアを開けると目の前にはテーブルがあり、奥には長官と思われる人が座っていた。
「君がアカリ君か?」
「あ、はいそうです。枢アカリと申します」
「了解だ、座ってくれ」
見た目は50代後半から60代と見られる顎髭の生やした男性だ。
この人は長官をやっているからこの歳になってまで働いているということが分かった。
長官の正面にアカリが座り、その左にシンが座った。
「どうしたんですかシンさん」
心配してしまうほどビクビク怯えている。
どうしたのだろうか、、その瞬間
「バカもんっっ!!!!!!!!!!」
「ヒェッ!!」
長官が怒鳴り声を上げ、アカリはビクッとなり、シンは両手を膝に当てグッと堪えている。
「お前はなんでいつもいつもこうなんだ!!突っ走ることしか脳がないやつが1番使えないと何度言ったら分かるんだぁ!!!」
「はい!!」
さっきGenesisを倒したばかりのあのシンさんが怯えているのを見て僕は少し驚いた。
「お前は1週間の謹慎処分だ!出てけ!!」
「はい!!!」
と、すぐにドアを開けて出ていってしまった。
フゥと息を吐き直して長官は、もう一度アカリの方を向く。
「すまなかったな驚かせってしまって」
「いえいえ大丈夫です」
内心もう聞きたくないと思いながら答えた。
「私はここAPEELの本部長、鬼灯イサムだ。よろしく。君がアカリ君という事は既にレイラから聞いている。どうして彼女はしっかりしておるのにあいつは、、」
やはりレイラさんは真面目にする時は真面目に出来るということだ。
「とにかく今日は本来なら入隊式じゃったんだが、、既に終わつてしまったのでな。ここの本部では入隊式に出席していないと新人隊に入れないという決まりがあるんだ」
初めからきっちり取りしまるあたり流石だなと思った。遅刻した人などは最初から使えないと切り捨てるのだろう。
何となくここのやり方が見えてきた。
「先程シンさんには新人隊に入れないという事をお聞きしたんですが、僕は本当に新人隊には入らないということでしょうか」
「そうだな、私も君を新人隊に入れてからキッチリ育てたいのだが、決まり事は先代から続いているルールなんでな。破る訳にはいかないんだ」
「じゃ、僕はこれからどうすれば、、」
「大丈夫だ。しっかり対策は取っている。君には特進クラスに入ってもらうことにした」
「特進クラスとは?、、」
「説明しよう。まず通常の新人隊について話そうか。
新人隊に入った者には4つのクラスに分けられる。
まずは前線隊クラス。これは戦場にて、前線にて戦うものを育てること。
2つ目は司令官クラス。戦場にて統一し導くものの事。
3つ目は研究科クラス。これはGenesisについて研究を行うためのクラス。
4つ目は工作班クラス。これは武器やスーツの開発を行うクラスだ。
このクラスは入隊式の後行われるテストによって振り分けられる。
1つ目の前線隊クラスは運動能力が高い者、2つ目の司令官クラスは指揮系統が得意な者、3つ目の研究科クラスは学問に秀でている者、4つ目の工作班クラスは制作などが得意な者に振り分けなれる。このテストではそれぞれが判断出来るような内容になっている。更に予め行きたいクラスを選べないようにどんなクラスがあるのかは教えていない。下手に手加減される分野があると困るからな」
覚える事がたくさん増えたが一般の新人隊については理解出来た。
「次は特進クラスについてだが、これは全分野について教育するのはもちろん、Genesisと直接戦う為の特殊戦闘スーツ〈エイル〉を扱うための訓練も行うことになっている。つまり、君には先程シンが見せたであろうあの戦闘を身につけてもらうことになる、、と言ってもしっかり見れたかは分からないが」
さっきシンがGenesisを倒した時のあのスーツだろう。シンからも簡単に説明されていた。確かに何があったのかは見えなかった。
「君には特別な才能があるように見えるとシンが言っていたからな。彼は不真面目でバカだが、勘だけは鋭い。そこだけは信頼出来る」
勘と言われてもそんなもの当てになるのだろうか。
「いやでも僕がそんな勘で特進クラスに入るなんて、、」
「勘というのは時々運命さえ変えてしまうほど大きな力だ。ただそれは失敗に繋がってしまうかもしれない。しかし今回は1人の新人隊をどのクラスに入れるかというケースだ。失敗も成功もない。君には期待している」
「、、、分かりました。頑張ります」
「その言葉を待っていた。それでは外にいるだろうカスペルに連れてって貰え。おい、カスペル入ってこい」
「失礼します」という声と共にドアが開いた。カスペルというのはさっき戦車の中で寝転んでいた人の事だろう。
「それでは特進クラスまで連れてってやってくれ。今のところはまだ一般クラスから上がってくるものはいない。部屋はあるだろう」
「了解致しました」
そして僕は席を立ち、カスペルさんと共にドアを開けて、
「失礼しました」とだけ言い立ち去った。
「枢アカリ、、まさか彼の息子だとは思っていなかった、、しかし、、」
廊下にて気まづい状態だった。隣には背の高い大人の男性と黙って歩いている。
カスペルさんは長髪で左目の下に傷のようなものがあった。
僕は少し緊張しながら歩いていたが、それに気づいたのかカスペルさんの方から話しかけてきた。
「大丈夫かい?鬼のようだっただろ」
「鬼?」
「そうだ。長官はかなり厳しいことでも有名なんだ。だからあんまり言ってはいけないんだが、陰では鬼長官とも言われてたりするんだ。君と話していたさっきの態度はかなり優しかったように見える」
さっきの話を聞いていたらしい。
「でも、、僕は本当に特進クラスなんか行ってやってけるんでしょうか、、」
「まあ微妙なところだな。特進クラスは通常では一般クラスの優秀なやつしか入れない。まあさっき戦車の中にいた俺も、シンもレイラもワタリもみんな色々あって特進クラスに入ったんだがな、、」
「分かりました」とだけ伝え、前を向いた。
いろいろあって特進クラスに入ることになった。だが、ここで努力することには変わりはない。
「さぁ付いたぞ」
そこはまたも大きな建物だった。
「ここは特進クラスの教育施設だ。ハウスとみんな呼んでいる。今日から訓練もたくさんある。だから先輩達とは仲良くしとけよ?最初は10代から30代までの幅広い年層がいるから慣れないかもしれないがな。命令が多かったり苦労したりするかもしれないが精々頑張ってくれ」
「ここが、、僕のハウスか、、」
果たしてこれからどうなっていくのかこの時にはまだ何も分からなかった。
ちょっと難しくなりましたが、頑張って分かりやすくは書いているつもりです。
素人なので遠慮なく指摘していただけるとありがたいです。
それとここで言っておくと結構ぶっ飛んだ展開になると思います