↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/26

第3話:剣魔の視線 後編:『崩壊のエコー(ラドン・バースト)』

挿絵(By みてみん)


「……さぁて。言葉だけでは伝わらん。その『無定形』の器、少し試させてもらうぞ!」

ゼノビアの手が空を薙(な)ぐと、腰のサーベルが抜かれるよりも早く、空間そのものが「ひび割れた」。


「『法則奏生(シンフォニア・ライブ)』、『魔剣残響(デモンズ・エコー)』第一楽章『崩壊』!」


キィィィィィィィン!!


耳を劈くような高周波の音が裏庭を支配する。

ゼノビアの放つ『Rn(ラドン)』の法則が、周囲の空気分子を連鎖的に自壊させ、目に見えない放射の刃となってハーベルに殺到した。


シュン…シュシュシュシュシュシュ…シュン!!


「うわあああ!?」

ハーベルは反射的に右手を掲げ、彼のタクト『ヴォイド・アンカー』を無意識に起動させた。


ズズズズ…ドォォォォォン!!


不可視の刃と、ハーベルから溢れ出した漆黒の「無」が衝突する。


しかし、激突の衝撃はない。


ゼノビアの放った「崩壊」という事象そのものが、ハーベルの周囲で「静止」し、次いで砂のようにサラサラと虚無へ溶け落ちていく。


「ほう。なるほど…攻撃そのものを『無』に変換したか。だが、これならどうだ?」

ゼノビアの姿が霧のように掻き消えた。

希ガスの中でも重いラドンの特性を利用した、空気の屈折率操作。


「『法則奏生(シンフォニア・ライブ)』!!『不可視重(インビジブル・グラビティ)』!」


ズガガガガ…ドスンッ!!


突然、ハーベルの頭上から、巨大な鐘を落とされたかのような圧力がかかった。

「重い……身体が、地面に……!」


(ちっ……重力か……? いや、違う。これは『質量法則』の局所的な書き換えか……!?)

前世――東雲八雲としての冷徹な頭脳が、即座に攻撃の現象を解読・数式化していく。


(この世界の理が「規定された旋律(ルール)」なら、それを打ち破るのは未知の変数――より高次元の混沌(アモルファス)だ。 )


「僕の法則……動け! どんな形にも……なってみせろ!」


ハーベルが歯を食いしばり、右手の黒いモヤを自分自身の身体へと纏わせた。


「ーー条件設定(セット)『無形解放(アモルファス・アウト)』ッ!!」


『アモルファス』――形を持たない力。

それは、外部からの「定義」を拒絶する。


スーーーッ…フッ……。


ハーベルの身体を押し潰していた重圧が、霧散した。

重力という法則から、ハーベルの存在だけが「逸脱」したのだ。


「……面白い。実戦の中で『法則の剥離』を覚えるとはな。」

闇の中からゼノビアが悠然と現れる。

彼は剣をゆっくりと収め、満足げに目を細めた。


「だが少年、忘れるな。お前のそれは『力』ではない。『穴』なのだ。いつかその穴に、自分自身が飲み込まれぬよう……精々、己という旋律を強く保つことだ。」

ゼノビアは不敵に笑うと、『Rn(ラドン)』の法則で霧のように、静かに木立の闇へと消えていった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ゼノビア・シュバリエラ ♂

No.86『Rn(ラドン)』のシンフォニア

【タクト】

ドレッド・ケイン


この世界において、「無貌の崩壊者」あるいは「静寂の放射線」と呼ばれている。

ヘリウムや窒素と同じ希ガスに分類され、無色・無臭で重く、地中から湧き出す。その最大の特性は、極めて強い放射能を持つ、「崩壊の連鎖反応」を司るエレメンタであること。

ゼノビアは、老紳士としての風格を持ちながら、その瞳の奥には「崩壊を許容する冷徹な視線」が宿っている。

彼が一度能力を行使すれば、その場は「緩やかな死の領域」へと変貌する。彼は「不可視の力」で相手を追い詰め、最終的に「自壊」させることを得意とする。


【シンフォニア能力】

 「魔剣残響(デモンズ・エコー)」

 「不可視重(インビジブル・グラビティ)」

◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ハーベルは、王立調律学院で、『第零のアモルファス』という世界の謎と、王家の巨大な陰謀に巻き込まれながら、その法則を覚醒させる道を歩み始めたのだった。


彼の周りには、絶対孤高の天才レオン、献身的だが棘のあるリーフィア、そして、彼を実験動物として扱う冷徹なゼノという、予測不能な面々が集っている。


「……安定なんて、この世界にはまだ無い。なら、僕が作るしかないんだ。」

ハーベルは月を見上げ、静かに『ヴォイド・アンカー』を撫でた。


楽しいが、ハチャメチャで、常に死と隣り合わせの学院生活が今、本格的な交響曲となって鳴り響き始めた。


【お知らせ】

いつもご覧いただきありがとうございます。

本作品は、一日おき(隔日)の投稿となります。

続きの気になった方は、

ぜひともブックマークをお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。