第十四話 魔導士の頂点
「……少し待ちなさい」
とても爽やかな声だった。
大声ではない、美しかった
だが、その一言だけで会場全体の空気が変わった
ざわついていた受験会場
動揺していた受付員
驚いていた受験会場
全員が同時に声の方向を見る
人混みの奥
一人の男がゆっくり歩いてきた
赤いローブ
肩まで伸びた赤金色の髪
落ち着いた表情
だが、その存在感だけで周囲の空気が熱を帯びる
「……まさか」
受付員の顔色が変わる
兵士たちが姿勢を正す
そして
ゼノ・フロストが一歩前に出た
礼をする
それを見た瞬間。
受付嬢
受験者
警備兵
全員が一斉に頭を下げた
誠だけ状況が分かっていない
ルミナが慌てる
「誠!!」
「頭下げて!!」
誠は慌てて頭を下げた
「え!? 偉い人!?」
その男は穏やかに笑った。
「そんなに畏まらなくていい」
だが誰も顔を上げない。
受付員が震えた声で言う。
「貴方様は……」
男は立ち止まった
静かに答える
「紹介が必要かな」
空気が張り詰める
男は誠を見た
「私は」
王国最高峰魔導士
『八導宮廷八色』
その頂点。
八色を統べる者。
この国最強。
炎属性最高位魔導士。
『フェルナンド・アルディス』
会場全体が静まり返った。
受験者の一人が震える
「う、嘘だろ……」
「本物……?」
「なんでこんなところに……」
ルミナも固まっていた
誠は小声で聞く
「ルミナ」
「有名な人?」
ルミナは驚く
「え!? 知らないの!?」
「王国最強だよ!?」
誠は考える。
「ゼノさんより?」
ルミナは真顔になる。
「そのゼノさんの上」
誠は驚く。
「えぇ!?」
フェルナンドは苦笑した
「比較される側も大変だな、ゼノ」
ゼノは答える。
「事実です」
フェルナンドは測定水晶を見る
壊れていた
無数のヒビ
まだ白い魔力が漂っている
フェルナンドは近づく。
そっと触れる
次の瞬間
パチッ
残っていた魔力が消えた
フェルナンドは目を細める
「なるほど」
「これは珍しい」
受付員が急いで説明する
「属性登録時に透明属性と申告され、その後測定を行った結果」
フェルナンドは止めた
「説明はいい」
そして誠を見る
誠は少し緊張した
フェルナンドが聞く
「君が測定したのか?」
誠は頷く
「はい」
「ごめんなさい」
「壊すつもりじゃなくて……」
フェルナンドは笑った
怒っていない
むしろ楽しそうだった
「謝る必要はない」
「壊れたんじゃない」
「測れなかっただけだ」
フェルナンドは誠を見る
まるで観察するように
だがどこか懐かしそうに
「面白い」
ゼノは少し驚く
フェルナンドがこんな反応をするのは珍しい
「特別審査に変更しよう」
私に傷をつけることができたら特別な儀式をやってやろう
会場がざわつく
フェルナンドは笑う
「安心しなさい」
「少し確認するだけだ」
だが
ゼノだけは理解していた
確認ではない
見極める気だ
(つづく)
ここまでお読みいただきありがとうございます!
ついに登場したパレット・エイトの頂点、
炎属性最強魔導士「フェルナンド・アルディス」
なぜ彼は誠に興味を持ったのか。
ぜひ次回をお楽しみに!
天才なのに勘違いすぎて凡人疑いされる絶賛連載中です。




