そうして、2人は今日も
祭りが終わってから二日が過ぎ、アシミーとネルは冒険者ギルドから受けた依頼でグラードの外へ出ていた。
「いやぁ、寂しい三日間が終わって、ボクちゃんとアシミーちゃんの時間が戻ってきたねぇ〜」
「本当に呑気なんだからぁ? 依頼内容を考えたら、結構大変なのよ?」
2人は『ゴブリンの亜種が目撃されたので調査をして欲しい』という内容のクエストを受けて、目撃された村へと向かっていた。
本来は人気があるはずの依頼だが、ネルとアシミーが受けることができた。
その理由は村までの距離と報酬の少なさである。
グラードの冒険者ギルドの管轄するエリアと隣の冒険者ギルドの間にあり、報酬も銀貨4枚となっている。
距離にして、馬で二日、しかし、移動に対する賃金は発生しないことから、他の冒険者から敬遠されてしまったのだ。
そんな依頼を悩まずに受けた理由は、ネルにあった。
「アシミーちゃん! 温泉がある村からの依頼だよ! きっとタダで温泉に入れるよ」
そんな形で、冒険者ギルドで騒いだ結果、アイシャから、依頼を渡されたのだ。
当然ながら、アシミーは深い溜息を吐いたが、それでも断ることなく、依頼主の元に向かっている真っ最中である。
「本当に……ネルは温泉が好きなわけ?」
「うーん? 温泉にある卵が美味しいから、好きだねぇ。アシミーちゃんも食べたらきっと幸せになるよぅ」
ネルは【煙馬】を発動せず、歩きを選択したため、通常の移動よりも二日多い、四日の移動になっていた。
その間、アシミーとネルは互いの祭りの三日間について話していく。
ネルから話を聞いたアシミーは驚きを顕わにする。
「なにそれ……つまり、ネルは商業ギルドに忍び込んだ泥棒を捕まえたり、その後の処理までしてたの?」
「そうだよぅ、ボクちゃんが盗人をバタバタ倒して、全部キレイに解決したのさ! すごいでしょう! だから沢山、サスタ姉からご褒美を貰ったんだよぅ」
アシミー:あのプレゼントの山はそれが理由だったのね……商業ギルドに盗みに入るなんて、普段なら大問題なのに、ネルとサスタさんがいたせいで、盗人には同情するわ……大丈夫だったのかしら。
「なんか、すごいわねぇ。私なんて、酔っ払いの相手をしたり、治療師ギルドに行ったり、バタバタしてただけだったのに」
互いの数日間を話すだけの、なんでもない時間を2人は笑いながら過ごしていく。
日にちが流れ、三日目の夜には目的の村まで森を挟んで一日の距離まで辿り着いていた。
2人がいつものように、野宿の用意をしていると、周囲からの視線にネルが気づく。
「あれれぇ〜? ボクちゃん達を見つめてるみたいだねぇ?」
その言葉にアシミーも身構える。
「ネル? またウルフとかなの?」
「違うみたい? まぁ……ボクちゃんのアシミーちゃんを覗くなんて、許せないから……すぐに潰しちゃうけどねぇ……あはぁ!」
ネルが笑うと同時に、赤黒い肌のゴブリンが飛び出し、その背後から二十体程のゴブリン達が武器を手に姿を現していく。
「まって、あれって調査依頼の亜種じゃないの!」
「え、そうなの?」
アシミーの声に、首を傾げたネルは、ゴブリン亜種に視線を向ける。
「つまり、キミを捕まえて……村に差し出せば依頼達成だし、温泉入り放題なんだねぇ!」
鋭い視線と剥き出しになったギザ歯にゴブリン亜種が一瞬たじろぐが、すぐに奇声を上げる。
ゴブリン亜種の指示に従うように一斉にゴブリン達がネルとアシミーへと襲いかかる。
しかし、ネルとアシミーは向かってきたゴブリン達を瞬殺する。
「ダメだよぅ? ボクちゃん達って、すっごく強いんだからさぁ……さぁ、早く掛かっておいでよぅ、楽しいお遊戯をボクちゃん達に見せておくれよぅ」
ゴブリン亜種は、ネルを睨むと、背中を向けて駆け出していく。
その姿にアシミーが大声を上げる。
「ネル! アイツ逃げる気よ!」
「えぇ! 追いかけっこじゃなくて、逃げてるだけなの!」
2人はゴブリン亜種を追い掛けていくと、ゴブリン亜種の向かう先には巣穴であろう、洞窟が姿を現していく。
巣穴へと辿り着くとゴブリン亜種は、再度奇声を放つ。
「グガガガァァァギギガガァ!」
その声に、巣穴から更に数十体のゴブリンが姿を現すと、木製の弓を使い、アシミーとネルに目掛けて矢を放つ。
数十本の矢が放たれた瞬間、ゴブリン亜種は嬉しそうに手を打ち鳴らして、飛び跳ねていく。
しかし、次の瞬間、アシミーの【鋼糸】がゴブリン亜種の全身を巻き上げるように放たれる。
「グガァ!」
他のゴブリン達もゴブリン亜種が捕まると慌てだしたが、既に動いていたネルが容赦なくゴブリンの首を跳ね飛ばす。
そうして、ゴブリン亜種の捕縛とゴブリンの巣穴を一つ潰す結果になった。
2人はその後、すぐに依頼があった村へと向かう。
ゴブリン亜種が出始めてから、村では見張りが立っており、アシミーとネルの姿を見て、見張りの村人が慌てて声を掛けてくる。
「なんだ、オメェら? こんな夜中に村になんのようだ?」
警戒しながら、そう尋ねる村人にアシミーは、依頼を受けた冒険者だと伝えていく。
「私達は、このゴブリン亜種の調査依頼を受けた冒険者です。亜種の捕縛に成功したので村長さんと話がしたいんだけど、話せますか?」
そうして、夜中の村は大騒ぎになり、寝ていた村長が起こされ、話し合いになり、依頼が無事に達成される。
「本当にありがとうございます。ワシらじゃ、魔物は中々、しかも亜種だったんで、本当に助かりました。何もない村ですが、温泉に入っていってください。宿も、こちらで用意しますので」
村長は村の空き家を2人の宿として提供した。
話し合いの間に村の女性が2人の食事を作ることになり、ネルとアシミーは、ゴブリン亜種を始末した後に、温泉へと入っていく。
「う〜ん。なんか、いい感じに終わったわねぇ……あっさり、亜種から襲ってきてくれたし」
アシミーがそう言いながら、温泉で伸びをするとネルがニヤニヤ顔で返事を返す。
「アシミーちゃんが可愛いから、ゴブリンに襲われただけの話だよねぇ? ボクちゃんのアシミーちゃんを狙うなんて、本当にゴブリンはおバカさんだよねぇ?」
「私がゴブリンに人気みたいに聞こえるわよ? ネルが狙われたかもしれないでしょ?」
「ボクちゃんってば、ゴブリンにも魅力が伝わるなんて、やっぱり淑女の鏡だよねぇ」
「はいはい、ネルは本当に立派よ。私もネルと一緒にいるからわかるわ」
2人はゆっくりとした会話を続けていく。
静かな夜に広がる湯煙の中で笑い合う2人。
一日の休息を楽しんだ2人は、村で朝食を済ませてから、グラードの街へと戻っていく。
「本当にありがとうございました。村を代表して、感謝しますぞ。冒険者様」
村長が深く頭を下げる。
「私もネルも依頼で来たんですから、頭を上げてください。それにそれが冒険者ですから」
「そうだよぅ、ボクちゃんとアシミーちゃんは、親友だから、またなんかあれば2人できてあげるからねぇ」
そうして、2人は村を後にする。
「ボクちゃん達は、最高のパートナーだよねぇ!」
「ふふ、そうね。私とネルは親友でパートナーだもんね」
『行く先々で問題を起こす“煙の魔女”とパーティーを組んだんだけど、私の胃は限界かもしれない』END
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作品を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
色々と問題のある内容でしたが、楽しんでいただけたなら、幸いです。
また、次にお会いできる瞬間があれば、お付き合いのほど、お願いいたします。作者より。




