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『好きに生きるから楽しいのさぁ』☆アウトローズ☆問題児たちに常識を  作者: 夏カボチャ 悠元


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22/22

22、アシミー危機一髪?

 ビッグジャガーが姿を現すとアシミーの声に反応を見せる。


 睨みつけるように血走らせた眼球が2人に向けられ、低い唸り声を上げて威嚇する。


 ただ、ネルはそんな威嚇に対して冷たい視線を向けていく。

 ネルと一瞬視線を合わせたビッグジャガーは、ゆっくりとアシミーへ視線を逸らす。


 ネル「蓋を開けたら、よく鳴く“でかい猫ちゃん”だなんて……拍子抜けだねぇ……ボクちゃん、残念すぎて、涙が出ちゃうじゃないかぁ……」


 アシミー「相変わらず、軽いわね……ネルってば……普通に考えたら、Dランクの部類に入る魔物なのよ? 一般の冒険者なら、逃げ出してもおかしくないんだからね?」


 アシミー:ってか……完全にターゲットが私に切り替わってるし……ネルを本能的に避けたいのは分かるけどさ、ターゲットを移されたら、私が弱いみたいじゃない!


 ネル「そうなのかぁい? ボクちゃんから見たら、猫ちゃんにすぎないのにさぁ……ただ、やる気が出ないなぁ……」


 ネル:せっかくアシミーちゃんと2人できたのにさぁ……こんな猫しかいないなんて……すぐに終わっちゃうじゃないかぁ、はぁ、やだなぁ……


 アシミー「はぁ……わかったわよ。ビッグジャガーくらいなら私がやるわよ。まったくもう! 本当にネルってば、気分屋よね?」


 ネル「そうかなぁ? ボクちゃんは気分屋だなんて初めて言われたけどなぁ」


 アシミーはネルに余裕の笑みを見せると、ビッグジャガーを真っ直ぐに見つめる。

 触腕髪の先端から【鋼糸】を作り出し、それを一纏めにしたアシミーは、鞭をしならせるように振るうと地面に叩きつける。


 アシミー「まぁいいわ。ネルは煙草でも吸って待ってて。私の凄さをネルにしっかり見せつけてあげるんだから」


 ネル「アシミーちゃんたら、やる気だねぇ〜? そうなると、ボクちゃんもやっぱり参加しないとだよねぇ!」


 ネル:やったぁ! アシミーちゃんと猫退治だよぅ。2人で一緒になんて、素敵じゃないかぁ。


 アシミー「ダメよ。ネルがやる気が出ないって言い出したんでしょ? 今回はがネ《・》ル《・》に実力を見せるの! わかったかしら?」


 ネル「え〜! そんなぁ……せっかくやる気が出てきたのにさぁ」


 ネルの言葉に微かに笑ったアシミーは、一歩前に足を踏み出す。

 ビッグジャガーは、アシミーをターゲットに決め、ネルを無視したまま、唸り、鋭い視線からは殺気を放っている。


 アシミー「待っててくれるなんて、律儀な魔物じゃない。でも、時間が勿体ないからすぐにやるわ。それにネルと私の討伐数って同じくらいのはずだから、こいつを倒して私の勝ちね」


 そこまでアシミーが口にすると、しびれを切らしたビッグジャガーがアシミーに向けて飛びかかる。

 前傾姿勢からの突進、その勢いを利用して太い前足を全力で振り抜いていく。


 荒い初撃をアシミーは冷静に身体を一歩後退させることで回避する。

 そのまま触腕髪を前に突き出して、大きな隙が生まれたビッグジャガーの脇腹に狙いを定め【鋼糸】を叩き込む。


 ビッグジャガーから咆哮ほうこうにも似た叫びが木々を揺らすが、アシミーは間髪かんぱつ入れずにさらに【鋼糸】を複数伸ばし、四方八方からビッグジャガーの身体を貫いていく。


 ネル:デカ猫のノイズが耳障りだけど、しっかり見てないと、後で見てなかったらアシミーちゃんに嫌われちゃうもんねぇ。でも、ドヤ顔のアシミーちゃんは可愛いなぁ〜。


 アシミー:ネルが私の攻撃に集中してるわね。まぁ、これだけ派手にやってるんだから、ネルもびっくりしてるのね。私が強いって認めさせてあげるんだから。


 アシミーからの猛攻にビッグジャガーが必死に鋼糸を振り払う。

 だが、鋼糸がビッグジャガーから抜ける気配はない。諦めたように血が流れ出した脇腹を庇うことをやめると、鋼糸に引きちぎられることを無視して距離を取り始める。


 アシミー「はぁ、まったく……ネルなら今さっきの一撃で終わりなのに、威力が足りないのよね。でも、逃がさないわよ!」


 戦闘中とは思えないような、冷静な声がアシミーの口から発せられる。

 それを理解したのか、ビッグジャガーが次第に動きを鈍らせていき、鋼糸がピンと張った状態になるまで後退していく。


 ネル「余裕そうだねぇ?」


 アシミー「当たり前じゃない。ビッグジャガーくらいで遅れなんか取らないわよ。ただ、ネルみたいに猫扱いまではしないけどね」


 2人が会話をしていると、突然、ビッグジャガーがすべてを諦めたように背を向けて駆け出していく。


 ズタズタになるビッグジャガー、だが、それを気にする様子は微塵もない。そこにあるのは、恐怖に表情を歪め、全身を切り裂かれたビッグジャガーただ1匹だった。


 ネル:あ、逃げた……アシミーちゃんから逃げるなんて失礼すぎるよねぇ? つまり、戦いを放棄したなら、ボクちゃんがしっかり教育してあげないとだよねぇ。


 予想外の行動に呆気に取られてしまったアシミーの横から、ネルはすぐに指をパチンッと鳴らす。

 スキル【煙檻煙摩牢もくおりえんまろう】を発動させ、ビッグジャガーが逃げられないようにドーム状に伸びた煙の檻で周囲を包み込む。


 アシミー「ネル、ナイス!」


 そんな軽い言葉がネルに向けられたと同時に、アシミーが足元に水性スキルを集めると、一気に圧縮して撃ち放つ。


 勢いのまま、逃げるビッグジャガーの背後から放たれた鋼鉄の糸が綺麗に頭部へと貫通する。


 ネル「余裕だったねぇ……ボクちゃん、アシミーちゃんの強さにびっくりだよぉ」


 アシミー「ネルほどじゃないわよ。あとは森の中にいる魔物を始末して終わりね」


 ネル「頑張ったアシミーちゃんは、ゆっくりしてておくれよぅ……ボクちゃんが綺麗にお掃除してあげるからさぁ」


 ネル:ああ、アシミーちゃんの戦闘を見続けたら、ボクちゃんの中で色々なものが煮えたぎっちゃったじゃないかぁ!


 アシミーの横で|『カプリス・ヒンメル』《煙草》を吸いながら、ネルがニヤリと笑う。


 両手を大きく広げる。伸ばされた左右の手から、黒と赤の煙が流れ出し、空から差し込んでいた陽の光が完全に消え去る。


 それと同時にネルとアシミーのすぐ側の木に影が蠢く。


 シャドーバケット:許さない……許さない……許さない……殺してやる!


 2人の死角になる位置に移動したシャドーバケットがネルに向けて、影の爪を構えて襲い掛かる。


 ネル「さぁ、全部……綺麗、綺麗しようねぇ……あはぁ!」


 ネル:感情を隠さなくていい……むしろ、アシミーちゃんにすべてを見せつけるように、威力を込めて、ボクちゃんの強さも見てもらわないとだよねぇ!


 スキル【炎煙えんもく】がアシミー以外のすべてを包み込んでいき、真っ赤に燃え上がる。


 シャドーバケット:ぎゃああああ! こんな、馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!


 森から黒煙が上がる中で浮き上がったシャドーのシルエットにネルは、軽く首を傾げ、アシミーは驚いたのか、身体をビクっと震わせた。


 ネル「あはぁ……いい証拠ができたねぇ……これなら、ボクちゃん達の全部が上手くいくじゃないかぁ〜」


 アシミー「ネル、何言ってるわけ? それより、この炎どうするのよ」


 ネル「慌てないでよ。アシミーちゃん。大丈夫だからさぁ!」


 勢いのままに、ネルが片手を天に伸ばすと【壊煙かいえん】を発動させる。

 天高く昇る黒煙を一気に地上へと雪崩込ませていく。


 焼かれた地上を包み込んだ黒煙が熱と木々、そしてシャドーバケットすらも巻き込んでゆっくりと霧散する。


 アシミーは途中から、口を開いたまま、瞬きを忘れたように流れを見守っていた。


 最後に黒煙が霧散してから、急に立ち上がったアシミーが怒りを露わにすると、ネルに近づいていく。


 アシミー「こんなやり方があるなら、最初からやりなさいよ! 一瞬じゃないのよ」


 アシミーが森だったはずの周囲に指を伸ばして、ぐるっと一周させる。


 視線に映る森だったはずの場所は一面焼け野原となり、僅かに焼け残った草木が風に揺らめいていた。


 そして、他の魔物の魔石とは違う大きさをした風変わりな形の魔石が地面に転がっている。

 魔石に気づいたアシミーが拾い上げてネルに視線を向けた。


 ネル「それがあれば、ボクちゃん達がバケットに何をしたかは、関係なくなるねぇ……あはぁ」


 ネルの不敵な笑みを見たアシミーは首を傾げて、ネルと魔石を交互に見つめていた。

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