第443話 ~ ヘベレス宮殿の秘密 ④ ~
第443話 ~ ヘベレス宮殿の秘密 ④ ~
青白い光に包まれ光が収まると真っ暗になる。
「ここは……」
完全な闇で全く何も見えない。
「マノンっ!どこっ!」
ソレーヌの声が何処からか聞こえてくる。
ソレーヌの声の様子から少し距離が離れているようだ
「ここにいるからっ!慌てないでっ!」
「暗くて足元が危険だからっ!」
「無闇に動かないでっ!」
マノンは大きな声でソレーヌに話しかける。
「わかったわ!」
「動き回らずにここにいるっ!」
マノンの声はどうやらソレーヌに届いたようである。
"いつの間にか頭の上に乗っていたパックもいない……"
"どうやらバラバラに飛ばされたようだな"
"とにかく明かりが無いと身動きが取れない"
マノンはポケットに入れてある火起こしの道具を出そうとするのだが……
"あれっ!無い……って言うか……"
"服を着ていないっ!"
"これって丸裸なんじゃないの?"
マノンは自分の身体を確かめる。
"やっぱり……丸裸だ……"
転移したのは身体だけだと言う事に気付く。
「ちょっと、マノンっ!」
「私っ!丸裸なんだけどっ!」
「これ、どう言う事なのっ!」
どうやらソレーヌも丸裸のようである。
「私も丸裸なんだっ!」
「ここに身体だけ飛ばされたみたいっ!」
マノンがソレーヌに状況を知らせる。
「これからどうするのっ!」
ソレーヌは状況を分かってくれたようである。
「とりあえず安全などうか辺りを確認するまでそこにいてっ!」
マノンが大声で答える。
「わかった!」
ソレーヌから返事が返ってくる。
"困ったな……迂闊に魔術は使えないし……"
マノンがどうするか思案していると爺いの声が聞こえてくる。
"お前さん、聞こえるか?"
"真っ暗で何も見えんっ"
"何か目標になるようなものないかのぅ?"
鳥目のパックには全く何も見えないのである。
"危険だからとりあえず動かないで"
"何となくパックのいる方向と距離感はわかるから……"
"念話の状況からして、そんなに離れていなさそうだよ……"
マノンは爺いそう伝えるとパックの気配のする方に目を向ける。
当然だが真っ暗で何も見えない……
暗闇の中をマノンは手探りでゆっくりと動き始める。
足元の感触は通路と同じような石畳のようである。
爺いとパックの気配のする方向にマノンはゆっくりと障害物を避けながら進んで行く。
"なんだこれ?"
マノンは何か複雑な形をした構造物に突き当たる。
"どこか通れそうなところがあればいいんだけど……"
マノンは暗闇の中で手探りで構造物を潜り抜けるようにして進んで行くのだが……
「ふげっ!」
突然、マノンが苦しそうな声を上げる。
「何っ!どうしたのマノンっ!」
"どうしたっ!お前さんっ!"
突然、暗闇の中でガマガエルを踏んだようなマノンの声がしたのでソレーヌも爺いも驚いく。
「なっ!なんでもないよっ!」
マノンは少し苦しそうな声で無事を知らせる。
「そう、ならいいけど……」
"何でもなんのじゃな……"
ソレーヌと爺いの安心したような声が聞こえてくる。
本当は、障害物の間を潜り抜けようと何かを跨ごうとしてしたら足を滑らせ素股を直にぶつけイチモツを挟んでしまったのである。
本当は死ぬほど痛かったのだが恥ずかしくて言えるはずもなく……
暗闇の中で声を殺して1人股間を押さえて悶えていたのである。
なんとか障害物を抜けるとパックの気配がする。
"爺い、嘴で床を啄いてくれないかな"
マノンが爺いに頼むとすぐ近くでコンコンとパックが床を啄く音がする。
"この辺りかな……"
マノンはゆっくりと音のする方に歩いて行くと何かを踏んづける。
"ギャ!"
パックの断末魔の悲鳴がする。
"なにするんじゃっ!殺す気かっ!"
爺いの怒った声が聞こえてくる。
どうやらパックを踏んづけてしまったようだ。
"ごめん、知らなかったんだ"
マノンが謝ると爺いはブツブツ言いながらも分かってくれたようである。
"次はソレーヌの所へ行かないと……"
マノンがソレーヌの事を考えているとパックがマノンの足を啄く。
マノンは手探りでパックを両手で持って頭の上に乗せる。
"あ〜やっぱり、ここが1番じゃ"
爺いの安心しきった声が聞こえてくる。
「ソレーヌっ!これからそっちに行くから……」
マノンが大声で伝えるとソレーヌから返事が返ってくる。
暗闇の中を頭にパックを乗せたままマノンはソレーヌの声がした方にゆっくりと歩いて行く。
少しずつソレーヌの声が近づくのが分かる。
「ソレーヌ、聞こえる?」
マノンがソレーヌに声をかける。
「よく聞こえるわ、かなり近くにいるみたい」
マノンにも直ぐ近くにソレーヌの気配を感じるのだが……
「あれっ!なんか壁みたいなのがある……」
マノンは壁らしきものに突き当たる。
「困ったなぁ……」
マノンには真っ暗なので壁の高さすらわからない。
「マノンっ!この辺にいるの?」
壁の上の方からソレーヌの声が聞こえてくる。
「たぶん、ソレーヌの足元辺りにいると思うんだけど……」
マノンがソレーヌに伝える。
「足元……」
ソレーヌの声が上の方から聞こえてくると……
「キャ!」
突然、ソレーヌの悲鳴がする。
"ギャ!"
マノンの頭の上にソレーヌが落ちてくると同時にパックの悲鳴がしてマノンの苦しそうにもがく声がする。
「痛たたたぁ〜」
ソレーヌの痛そうな声がする。
「フガッ!フガッ!」
マノンの息の詰まる苦しそうな声がする。
「マノンっ!大丈夫っ!」
「私、少し高い所から落ちたみたい」
ソレーヌは今は状況をマノンに伝えるのだが……
「ひっ!お尻の下に何かいるっ!」
ソレーヌは自分のお尻の下に何かいる事に気づいて慌てる。
「ほへぇーぬ、わらしだよ」
(ソレーヌ、私だよ)
自分のお尻の下から聞こえてくるマノンの押しつぶされたような声にソレーヌは嫌な予感にゾッする。
"もしかして、私の股間の下にあるのは……"
ソレーヌの嫌な予感は当たっていた。
暗闇でよくわからないが間違いなくマノンの顔面に素股で跨っているのである。
"これって、道徳的に非常に不味いのでは……"
ソレーヌは今の危ない状況を思い浮かべていると……
「ギッギャ!!!」
足元から何か悲鳴のような声が聞こえてくる。
「ひいっ!足元に何かいるっ!」
ソレーヌは自分足元に得体の知れないモノがいる事に慌てて足をバタバタさせる。
「ギッ!ギェ!ギャ!ギョエ!」
ソレーヌが足をバタバタさせると得体の知れないモノは死にそうな悲鳴を上げる。
マノンの頭の中に爺いの断末魔の悲鳴が響いてくる。
「ほへぇーふっ!はっへ!はっへ!」
(ソレーヌっ、待って!待って!)
マノンは必至でソレーヌに足をバタバタさせるのをやめさせようとする。
「ひいっ!ちょっとっ!マノンっ!」
「そんなに口を動かしちゃダメっ!」
マノンが慌てて喋ろうとすればするほどソレーヌの大事な所を刺激する。
「あっ!ああんっ!はぁ!」
「あんっ!あっ!うっ!あっ!」
ソレーヌは悶え声を出すと足に力が入りパックの首を締め上げる。
「ぐっ!苦しいっ!しっ!死ぬっ!死ぬっ!」
爺いの切羽詰まった声がマノンの頭の響く。
「ほへぇーぬっ!はっふが死んじゃうっ!」
(ソレーヌ!パックが死んじゃうっ!)
マノンが焦って口を動かせば動かす程にソレーヌの足に力が入りパックの首を更に締め上げる。
"わしの命運のこれまでか……"
爺いの脳裏に今までの過去の記憶が流れる。
"走馬灯か……これを見るのは2回目じゃの……"
"この前は冷たい石の床の上……"
"今度は女の足に首を締め上げられて逝くのか……"
"……エルマーナ……もうすぐ傍に行けそうじゃ……
パックの目から涙が溢れる。
爺いの遺言のような力無い呟きにマノンは更に焦って必至で口を動かしてしまう。
それと同じようにソレーヌの喘ぎ声は大きくなり足に力が入り爺いの呻き声の大きくなる。
「ゔっ!」
ソレーヌは最後に小さな声を上げるとグッタリとし足の力も抜ける。
"ふっ!ふはぁーっ!"
爺いが息を吹き返す。
"危なく昇天する所じゃったわい"
パックが昇天する前にソレーヌが少し先に昇天したのである。
"大丈夫っ!爺いっ!"
マノンは爺いにパックの状態を尋ねる。
"ああっ、大丈夫じゃ……"
"それにしても、あの芋娘のやつ丸太のような足で締めつけよって……"
"もう少しでこの体が窒息死する所じゃったわい"
爺いは恨めしそうに呟く。
"あっ、そうだソレーヌはっ!"
マノンはパックに気を取られていてソレーヌの事を完全に忘れていた事に気付く。
「ソレーヌっ!大丈夫っ!」
マノンは手探りで暗闇の中でソレーヌを探す。
マノンの手がソレーヌの体に触れる。
「ソレーヌ……」
マノンは昇天しているソレーヌを手探りで抱き起こす。
"グニュ"
マノンが誤ってソレーヌの胸を掴んでしまうと小さな喘ぎ声を出すが意識は戻らない。
"ソレーヌ、どうしちゃったのかなぁ……"
本人は全く心当たりがないのである。
"ソレーヌ、大丈夫かなぁ……"
"真っ暗で何も見えない……"
暗闇でソレーヌの顔が全くマノンに見えないのはソレーヌにとっては幸運であった。
その時のソレーヌはと言うと涎を垂らアヘ顔で昇天していたからである。
"何とかソレーヌやパックとは合流できたけど……".
“これからどうしよう……"
マノンは途方に暮れるのであった……
第443話 ~ ヘベレス宮殿の秘密 ④ ~
終わり




