第38話…再会
召還されて約3ヶ月、準備は整った。会いに行くよルビ先輩…
まずは、既成事実を作りに行きましょうか…
教会に向かった…
ドトロア公国の教会はとても大きい。中も豪華だ、女神像は人の5倍位の大きさだ。
司祭立ち会いの下に祈りを捧げる…
さぁ、ダミア様、わたしの呼びかけですよ…
女神像が淡い光を発した…
「「「をぉぉ…」」」
周りからどよめきが起こる…
「啓示を頂きました…」
「ダミア様の神示に従い、わたくしはこれよりプリフォレ公国の落ち人に会いに行きます」
…
王宮に戻り、女神の啓示を伝え、プリフォレ公国に向かう旨を伝えた…
王子は不満そうだったが、我慢してくれ…
「アルカ、旅の支度をするよ」
「うん、わかった…買い物だね…」
アルカとはあれから色々あったけど、今では親友のような感じね。慣れてくると、言葉遣いが汚いところはあるんだけど、とても繊細で、自分で発した言葉にクヨクヨ悩むこともある。一見がさつに見えるけど中身は極めてデリケート。それからとても気が利く…
時期が来たら、それなりのお金を支給して自由にしてあげたい、と思っているんだけど…何なんだこの胸のざわつきは…
…
旅に必要な物を買いそろえる。もうすぐルビ先輩と会えると思うと胸が締め付けられる。ワクワクする。早く会いたい…
中央広場の噴水の縁に座って一休みしている時だった…
…
「シキちゃん」
…
「あっ、ごめんなさい。知り合いに凄く似ていたから…」
わたしの名を呼んだその人は、紛れもない。ルビ先輩、そのものだった。
たくましくなってる…顔つきも精悍さが際だってる…でもルビ先輩だ…
先輩が納得していない様な顔で後ろを向き、立ち去ろうとした…
…『ルビ先輩!』と叫ぼうとしたが叫べなかった…
感極まってあふれた涙にじゃまされたから…
「うっ…ふぐっぅ…」
無意識に涙をこらえた、それが悪かったんだと思う。後から後から涙があふれる…
今までの思いが、頭の中で駆け巡る。
上司を同僚を半殺しにしたこと…刑務所で人を殺したこと…拘束されてずっと先輩を思い続けていたこと…転移で歓喜したこと…
先輩が振り向いた…
「やっぱりシキちゃんなのね…」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
先輩に抱きつき号泣していた。まさかこんな所で不意打ちを食らうなんて思ってもみなかった…
今までの辛苦が悲痛が喪失感が全て何もかも報われた。そんな気がした…
…
「シキ大丈夫?この人がルビ先輩なの?」
アルカが心配そうに声をかけてくれる…
「うん、ありがとうアルカ…そうよ、この人がルビ先輩…」
かなり号泣したからか、少し収まった…
「初めましてお2人さん。何か込み入ってるようだから、紹介は後でね。わたしは王宮に報告があるから、失礼させて頂きます」
「マリア明日宿屋で待ってるよ」
マリアと呼ばれる人に頭を下げた。
「シキちゃんなんでここにいるの?もしかして死んじゃったの?」
「うん…実はね…」
これまでの経緯を全て先輩に話した…
「そっかぁ…辛かったんだね…わたしのせいでもあるのか…」
「先輩は悪くないよ。全てわたしの責任だし…」
「人殺すのって辛いよね…ホント精神がボロボロになるし…わたしも20人くらいは殺してる。自殺も考えたくらい追い詰められた…PTSDとか大丈夫なの?」
あぁ…わかってくれる人がいるのってホントに救われる…
「うん、何とか大丈夫みたい…わたしちょっと特別だから…」
「シキちゃんは繊細だからなぁ…シキちゃんの中のシキちゃんが暴れ出したんだね…」
「シキちゃん今度人殺しそうになったら、わたしに言って、何とかするから」
「あはは…先輩ほんとに変わりましたね、と言うか成長したって感じですね、対応力かな?あの頃とは全然違う」
「うん、こっちで生きてゆくには変わるしか方法がなかったし…」
「わたしはもう大丈夫。先輩がいるから。それに…」
「ちょっと、あんた達、久しぶりにあった友達の会話がそれなのぉ…」
「仕方ないよアルカ、お互い色々ありすぎて、内容も濃すぎちゃったから…」
それから先輩の転移後の話を聞いた…
ざっとだったけど、もっと詳しく話が聞きたかった。でもまず最初にやらなければならないことがある…
先輩にわたしの能力のこと、ルビ先輩と奴隷契約することで新たな加護が付与されることを伝えた。先輩は驚き、困惑していたが、覚悟したみたい…
「相変わらずだね…わかった。わたしシキちゃんと共に生きて行くよ」
さらりと言われたけど…もう一度泣きそうになるほど嬉しかった…
「じゃぁアルカ、よろしくね」
「う、うん…」
?気のせいだろうか、快い返事ではないような…
まさか中央広場で契約するとは思わなかった、けどもう気が焦って、すぐに契約しないと気が済まなかった…
契約が終わった。あっけなく…先輩を感じる。新しい力が湧いてくる…いや、わたしの妄想だけど…
「今までありがとね、アルカ…」
「これでプリフォレ公国への同行も必要なくなったわ。アルカはもう自由に行動して構わない。後でこれまでの給金を渡します1年くらいは働かなくても大丈夫だと思う」
「もう用済みなのかよ…」
アルカがにらんでる。目に涙を溜めながら…なぜ?あなたは隙をうかがっては逃げようとしてたんじゃないの?わたしのこと嫌いじゃないの
「ばかにしやがって…」
手のひらで体を叩かれる、痛くはない…
胸がギュッと締め付けられる…
こんなに感情をぶつけられるのは初めてだ…そうならないようにかわし続けてきたから。
いとおしい…
アルカをぎゅっと抱き寄せた…
「わたし、そんなに人に思われたこと無いから…こんなわたしで良かったら、もう一度わたしと一緒にいてくれるかな…」
…違うね…
「アルカを独り占めしたい…」
純粋にそう思った…
「う、うん…」
「そうか…アルカさん、あなたがこの国でシキちゃんを支えてくれたんだね。ありがとう…」
「…さ、支えてねーし…」
「先輩もう一度契約魔法かけてくれますか」
わたしは、アルカと先輩の2人の主を持つことになった…
「別に契約しなくてもいいんじゃないの?」
「うん、そうなんだけど…なんだろうね、快感なんだよね」
「やっぱシキは変態だぁ…」
3人みんなで爆笑してしまった…
ルビィの成長が気になる方は…
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