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鮭様大好き♡秀吉絶対ぶっ潰す!  作者: みたらし丹後
東北に吹き荒れる嵐
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65.奥州決戦その2

長尾虎千代(ながおとらちよ)

 「護身用にどうぞ。」父上と虎は桐の立派な箱を卿より頂戴しました。父上はこの箱の中身をご存知のようで、深々と頭を下げて下賜(かし)されておりました。あのような嬉し気な父上の顔は初めてみました。

 「ホルスターの装着と使用方法を教官より、教わっくだされ。仁科(にしな)よろしく頼む。」


 「はっ! 」卿は、軍の打ち合わせの為退出されました。


 「滋野家武器教官の仁科明久(にしなあきひさ)と申します。長尾様、御子息様何卒宜しくお願い致します。」若い碧眼(へきがん)紅毛(こうもう)の男性が、虎と父上に一礼する。わあ、南蛮人ですね、虎は初めて見ました。


 「こちらこそ、日の本の言葉がお上手ですな。」父上も仁科殿の流暢(りゅうちょう)な言葉に驚かれたようです。


 「よく言われます。某は日の本の生まれにて、母がポルトガル人です。」


 「左様でしたか、それは失礼をば。」父上が教官殿に詫びる。


 「いえいえ、訓練場にご案内します。どうぞ。」虎たちを案内しながら、語られる。

 「庶子の上この様な風体(ふうてい)故に、身内からも煙たがられ、故郷の泉州(せんしゅう)にて腐っておりました。武兵衛様に拾っていただきまして、今こうして人として滋野卿様に仕えております。」相当な苦労をされたのであろう。若いながら、哀愁(あいしゅう)を漂わせています。


 「ほう。あの黄泉送りの武兵衛殿に、いずれ会いたいと思っています。相当に御強いとか。」武兵衛様の7人切りの噂は、虎も知っております。虎もお会いしたいです。


 「はい! 武兵衛様は命の恩人であり、私が今まで出会った何方よりも強く恐ろしいお方でした。」目を爛々(らんらん)と輝かせて語る仁科殿。陣幕で三方を囲んだ丘の斜面が見えた。

 「こちらが、射撃訓練場にて、どうぞ。桐の箱をお開けくださいませ。」机と言う矢立のような物の上で、金物で止めてある。金具をパチンと外して、箱を開けました。中から鉄でもない不思議な手触りの黒い筒と握りが付いた物が。

 「これは拳銃と申します。護身武器として、近い者を無力化させる武器です。お二方の拳銃は最新型ですね。」あっ! 握りに九曜巴(くようともえ)の家紋が、父上も気付かれたようだ。金細工で彫りこまれた長尾家の家紋が、光り輝いています。


 「こ・・これは、尼子殿の拳銃と同じく、家紋が。」父上が宝物を扱うように、拳銃を両の手でそっと持たれて、眺めておられます。

 

 「はい、卿は贈り物として、贈られる際にこの様な細工をされます。細工をするのに、相当な日数を要するのですが、卿なりのこだわりがあるようでして。」これには虎も感動しました。父上はこの拳銃を気に入られたようで、撫ぜておられます。


◇◇◇


 その後拳銃の取り扱いと、試射を行い、教官の拳銃術を堪能しました。目にも止まらぬ早さで、正確に2発づつ撃ち込み、確実に飛び出す標的を撃ち抜く教官。忍びの苦無ごときでは、とても敵いそうにありません。

 卿は必ず、配下の武器や得意分野の適正を見てから、適所に配置すると聞きました。

 恐るべきお方です。そのような発想は、虎にはありませんでした。南蛮胴(なんばんどう)[※1]を撃ち抜く拳銃。虎の一生の宝物です。


◇◇◇


 「四郎。どう見る? 」双眼鏡で敵の陣立てを眺める卿。指揮車に父上と虎も乗せていただき、始めは恐縮と緊張で何が何やらでした。情けないです。

 

 「・・・鶴翼(かくよく)[※2]ですな。完全にこちらの兵数を(あなど)っております。」


 「はっはっは。やはりな、重畳重畳。」からからと笑われる卿。

 「全軍に伝達、正面よりぶつかる。戦車と装甲車にて、前線を崩し突破する。見晴らしの良い津軽平野で決戦だ。パンツァーフォーシュ! 」なっ! 父上も焦っておられる。


 「ヤボール(了解)! ヘルコマンダン・サー(指揮官殿)! 」見渡す限りの敵の陣と(のぼり)。8万の兵とは、これ程の物なのか。


 「キュルキュルキュル。」指揮者を中心にして、装甲車4両と独特の音を立てて走行する12両の戦車。父上は震えながらも双眼鏡を覗き込んでいる。

 「ドオン!! ドオオン!! 」戦車が一斉に火蓋を切った。敵陣に爆炎が吹きあがる。

 「パタタ!!パタタタタタタン!!」戦車と装甲車に搭載された。機関銃が敵をなぎ倒す。次々と人が吹っ飛び、(のぼり)が倒れる。混乱の極みに(おちい)る敵陣。馬が爆炎と音に驚き、後ろ足で立ち上がる。たまらず武将が、馬から転げ落ちる。足軽たちは既に逃げ始めている。


 「歩兵部隊突撃! 砲兵隊砲撃開始! 」卿が軍配をかざす。


 「ヤー! 」敵陣が面白いように崩れる。


 「ボオオン!! ズドン!! ゴゴゴゴ!! 」砲撃の爆発が敵後方に上がる。戦車が、逃げ遅れた敵兵をキャタピラで踏み潰して行く。これが戦場か、初陣の虎でも分かる。圧勝です。

 倒れていた。血まみれの敵兵が突然起き上がり、指揮車に槍を突き出してくる。


 「あああああ!!」「タンタンタンタンタンタンタンタン!!」

夢中でホルスターから拳銃を取り出し、撃ちまくっていた。「カチカチカチカチカチン! 」


 「はっはっは。ようやったお虎よ。四郎よ、御自慢のサブマシンガンを使う間もなかったなあ。」卿がポンポンと虎の肩を叩く。・・・・人を殺めた。


 「誠に、将来が楽しみな若君ですな、長尾様。」父上は放心して、呆けている。四郎様が、見た事の無い銃を構えていた。あれがサブマシンガンか。


 「記録兵よ、今の撮れていたか? 」卿が銃のような物を構えていた兵に訊ねる。


 「はっ! 某と車載カメラがしっかりと。」


 「そうかそうか、お虎に後で下賜(かし)する。皆に自慢するがよいさ。」よく分からないが、虎を誉めてくださっている。


 「ありがとうございます。」初陣で手柄を立てられた。じわりと涙が(にじ)んで来る。

 

 「これより掃討戦だ。海兵隊が敵の退路を断つ。機械化機動部隊は停止。弾薬と燃料を補給する。」


 「はっ! 」


 「殿と定直殿に活躍していただこう。」父上は指揮車に酔われたようで、四郎様が介抱してくださっている。歩兵部隊が敗走する敵を追撃していく。


 「ターン!! タン!!」音と同時に指揮車の防弾ガラスの一面にビシリとひびが走った。双眼鏡で、音のした方向を見る。あっ! 2名の黒ずくめの男たちが逃げていく。


 「7時の方角、逃がすな! 」卿が指で示す。装甲をした騎馬隊が、賊を追って行った。

 「やはり来ましたな、伊達は優秀であるな。お虎よ、見えたかね? 」


 「はい、2名の黒ずくめの者が逃げていきました。」


 「よく見ていたな、大した者だ。さて、夕餉にしますか。」

 狙われていても、全く動じない卿に感銘を受けました。


◇◇◇


 「長尾の殿様、若様、お初に御目文字(おめもじ)致します。氏家定道が室、景にございます。」翌日の昼に、庄内の大名の正室。氏家景様が、参られました。わあ、女大名の方です。


 「これは、ご丁寧な挨拶痛み入ります。」父上はお初なのですね。元 伏齅(ふせかぎ)衆の頭目の一人と聞いていたので、面識があるものかと思っていました。


 「長尾家に対する裏切りを御赦しいただき、感謝します。」


 「こちらこそ、お主が先に降ってくれたお陰にて、こうして長尾家は存続出来ました。感謝しております。」そうだったのですね。


 「そうでしたか、それではお相子(あいこ)と言う事で。」からからと笑われるお景様。さっぱりとしたお方です。


 「お前が何故ここにいる? 」卿が額に皺を寄せて、お景様に問う。


 「お父様が狙われたと聞きまして、居ても立っても居られずに、(まか)り越しました。」


 「仕方のない娘じゃ。この通りわれはなんともない。」そう言いながらも、卿は嬉し気な顔をされている。

 「で? お主が来たってことは、何かあるのだな。」


 「流石お父様。はい、チオペンタールナトリウム。」そう言ってガラスの小瓶を見せる。お景様。


 「自白剤か・・・またお主は・・・まあよい使わせてもらおう。どうする? 見るか打つか? 」


 「はい、打ちます。打ちま~す。」何かよく分かりませんが、自白剤という響きに、不穏な物を感じてしまいました。


◇◇◇


 「お主は何者だ? 」虜囚(りょしゅう)となった男に問う卿。2人の襲撃犯のうち1人は自決して、1人がこうして捕まった。


 「・・・・・。」答えない男。卿がお景様に頷く。お景様が男の手の甲に繋げた透明な細い管に、注射器なるもので、自白剤を入れる。途端に笑顔になって、恍惚(こうこつ)とした表情になった男。


 「た・・ただの百姓れす。」呂律(ろれつ)がおかしい。再びお景様に頷く卿。更に自白剤を加えた。


 「ぐっ・・・だ・・伊達の草の者(忍び)にて。」


 「残りの小銃は何処だ? 」


 「・・・蘆名に10・・佐竹に10・・米沢に30・・ぐええええ。」口から泡を吹き、男は絶命した。恐るべき薬です。忍びがあれほど簡単に口を割るとは。


 「さて、参ったな。・・・拡散してしまったか。」頭を掻きながら思案する卿。


 「そうだマスタードガス()いてしまいましょうよ。」楽し気に提案する。お景様。


 「阿呆(あほう)、民草まで根切り(皆殺し)にする気か。」・・・お景様ってこういう方なのですね。


 「南部制圧後は、予定通り蝦夷(えぞ)侵攻だ。反最上同盟軍の追撃は、陸奥(むつ)(青森)までで良い。各大隊と海兵隊と殿の親衛隊へ伝達。」


 「はっ! 」


 6千の兵が、8万の大軍を打ち破りました。奥州の頂点が一戦で決まってしまいました。今までの武家の戦術が、音を立てて崩れました。虎はなんとしても、この新しい戦略と戦術を学びたいです。


※1 南蛮胴 ヨーロッパの胴鎧を16世紀から17世紀の日本において日本風に改造した鎧のこと。

※2 鶴翼 陣形のひとつ。自軍の部隊を、敵に対峙して左右に長く広げた隊形に配置する陣形である。


次回投稿は、リアルが忙しくなってきた為未定です。一週間以内に投稿します。

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