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鮭様大好き♡秀吉絶対ぶっ潰す!  作者: みたらし丹後
東北に吹き荒れる嵐
57/66

56.最後の鬼札(ジョーカー)

小説宣伝の動画を作成しました。URLは下記の。


https://youtu.be/WHfVYpVJ40k


です。どうぞご覧になってください。

二本松妙子(にほんまつたえこ)

 「小兵衛や郊外まで呼び出して、すまんかったね。」代官の参議様が大名の小兵衛様に軽く挨拶する。ああ、そういう力関係なのですね。


 「いえ、我らの為に最新兵器を輸送してくださいました。本家様、お手数をおかけします。」すっと頭を低く下げる小兵衛様。


 「いやいや、中々に道中の輸送に難儀(なんぎ)してな、われでないと無理であったわ。さて城下でこれ試射するわけにはいかんから、ここで見せてやろうぞ、このファランクスの威力を。」陣幕を張ってその中に私も入れられた。


 「そこなる娘は? 」私を見る小兵衛様の眼差しが鋭い、当たり前ですよね。


 「ああ、二本松妙子(にほんまつたえこ)殿。二本松の姫よ。伊達の反最上同盟を断り、家が苦境に立たされているそうな。この書状を見てくれ。」そう言って私が持ってきた書状を小兵衛様に見せる。


 「なるほど、同盟加入家を探ります。」


 「よろしくな。お、準備が整ったようだ。小兵衛と姫よ付いて来てくれ。」頷いて、二人に続いた。


 筒形と四角の鉄箱を組み合わせた。大きな鉄の塊の前に参議様が立っている。それを後ろから小兵衛様と私が見ている。


 「これはリモコンと言ってな、あの砲を制御する。」そう言って小さな鉄の箱を両手で握られる参議様。その小さな箱と砲は紐のような物で繋がっている。

 「あの2キロ先にある。あの厚さ20ミリの鉄板を撃つ。小兵衛見えるか?」目を細める小兵衛様。


 「はい見えます。」2キロ? 20ミリ? 私は全然見えませんが、忍びの目って凄いのですね。

 

 「姫は見えるかね? 」滋野様が机に鉄の管みたいな物を固定して、それを上から覗く。


 「全然見えません。」


 「はっはっは、正直でよろしい。われも肉眼では見えん。これ、二人に双眼鏡を。」


 「はっ! 」双眼鏡と言う遠眼鏡(とおめがね)を貰って覗く。あれですか・・一里はあります。あのような遠い所に、届くのでしょうか?


曳光弾(えいこうだん)[※1]が先ず3発装填してある。それで着弾確認と修正を行う。小兵衛こっち来い。この操作は未だわれと海軍士官しか出来ない。お主が操作して山形を守れ。この照準器スコープを先ず覗け。」小兵衛様が机の管を覗く。


 「はい。赤い十字と枠で囲まれております。」


 「これは砲の標準器と合わせてある。赤い十字は着弾点、枠は着弾被害範囲だ。このパネルのここをな・・そうそう。親指で上下に・・・上手いなお前。発射ボタンはこれ。今は押すなよ。暫くパネルを上下左右に動かしてみろ。」砲の先端が「ウィィン。ウィン。」と小刻みに動く。


 「よし、単発撃ってみようか。このパネルの単と連のスイッチを上に上げて、単は単発。連は連射だ。われが着弾観測をしてやる。発射ボタンを押せ。」砲の横の筒を覗き込む滋野様。


「ブッ!!! 」と砲から凄い音がして赤い光の筋が真っすぐに飛んで行く。


「左1メートルに着弾。気持ち右に着弾十字を移せ。合わせたら再度撃て。」


 「ブッ!!! 」


 「鉄板に着弾。スイッチを連に下げろ。1秒発射ボタンを押し続けろ。」


 「ブウウウゥゥゥ!!!!」


 「鉄板損壊。バラバラだ。人の体もこれが当たるとこうなる。」参議様が口角を上げて、とても嫌な笑みをする。パネルを持つ小兵衛様が震えている。しかし顔が笑っている。私も震えが止まらない。鉄の板が粉砕されるのが、双眼鏡越しに見えた。なんなのですか、この武器とこの人たち・・怖すぎる。


◇◇◇


 山形城に到着して、私には天守閣の大きな個室が、宛がわれた。侍女が3人お付きになってくれている。真四角で巨大な天守閣。と壁で城周りを全て囲んでいる。城塞。私の常識は、ここでは通用しなさそうです。


 「姫様。(さい)(すい)(あや)でございます。身の周りと歓待のお世話をさせていただきます。」侍女3名が(かしず)く。とても洗練されて、綺麗な所作と素敵な着こなし。二本松の侍女を思い出して心の中で溜息をする。


 「よろしくお願いします。」


 「姫のご希望を叶えよ。との殿(小兵衛)からのお達しです。何なりとお申し付けくださいませ。二刻(4時間)後。ラウンジにて、殿と参議卿の(うたげ)に参加されるまで、どうぞご自由に。」


 「では、湯浴みをしたいです。」流石に3日体を洗っていない。これは宴に恥ずかしくて出れない。


 「はい。」3名して笑顔で応えてくれた。

 湯浴みの用意をして、部屋をでた。3名に案内されて、エレベーターホールなる扉の前に来た。(あや)が扉の横を押す。扉の横の丸い突起が光った。そして扉の上が光っている。その光が横に移動している。やがて「ポーン」と言う軽快な音と共に扉が開いた。中は明るいが、(かわや)のような密閉された空間である。私がたじろいていると。

 

 「姫様さあどうぞ。」と(すい)が乗るように勧める。中に入ると、扉が閉まった。そして、何かに上に持ち上げられるような、違和感を感じる。また「ポーン」と言う音がして扉が開く。そこから降りて絶句した。先ほどの階とは中の風景が、違う。


 「こ・・これは。」何の妖術でしょうか?


「ですよね、姫様。私も初めてあれに乗った時は、ちょうど姫様のように絶句しました。あれはエレベーターと申しまして、上下に階を移動する。唐栗の箱です。」と(さい)が話してくれました。信じられません。


 「滋野卿様と総奉行の茂助様が、滋野家の技術の(すい)を集めて、作られた最新装置です。姫様は参議様が輸送されてきた。最新武器を見られたとか、羨ましいです。」(あや)が憧れの眼差しで私を見る。確かにあの砲を見たら、何があっても納得してしまう。


 「そう言えば、参議様が小兵衛様にあれの操作方法を教えておられましたよ。あの威力には、正直肝を潰してしまいました。」正直な感想を述べてみました。


 「キャー、参議様が殿様を手取り足取りですって、(さい)(すい)聞きまして? 」(あや)気色(けしき)ばんだ顔を2人に向ける。

 

 「やはり殿様が御本家様を見る時の眼差しが、他の方を見る時とは違います。不遜ですが、私はあのお二人は衆道(しゅどう)[※2]のお仲ではないかと思いまして。」手を組んでうっとりと虚空を見つめる(すい)


 「なんという不遜な、そして尊いことですわ。」涙を流して、祈る仕草をする(さい)。この子たちは・・・。


 「そう思いませんか? 姫様。」3人して私に問いかけてくる。


 「さあ、私はまだ知ってから間がありませんし。」滋野卿が女性なこと、口が裂けても言えないです。絶対何処かで、滋野卿の手の者が聞き耳を立てています。

 そうこうしている間に赤い大きな暖簾(のれん)が下がった入り口が見えてきた。暖簾(のれん)には大きく「女」と書かれてある。


 「到着しました。姫様ここが山形城自慢の展望風呂です。」(あや)に先導されて、暖簾(のれん)をくぐる。中には無数の鉄の箱が並び、かごもたくさん置かれてあった。


 「ここで湯浴み着に着替えます。浴室の入り口の上をご覧くださいませ。」そこには木の板に「風呂では身分の上下無用」と書かれてあった。


 「と言う事で、私たちも一緒にお湯を使わせてもらいます。」さっと湯浴み着に着替える3名。早いです。(さい)に着替えを手伝ってもらいました。残りの2人は「風呂番」と言う中年の女性から色々な入浴道具を受け取っています。


 「おばちゃん今夜皆に御馳走とお酒が、振舞われるってさ、楽しみだね。」気さくに風呂番と話をする(さい)。地が出てますよ(さい)

 浴室に入ってからは圧巻でした。まとめて50人は入れるのではないかと思う、巨大風呂。そして眼下に見える城下の景色と遥か彼方に見える山々の景色。「シャワー」と言う押すだけでお湯が勢いよく、夕立(ゆうだち)の如くに出てくる器具。そしてリンスインシャンプーなる髪を洗う油。(あや)が私の髪を解いて、丁寧にシャンプーで洗ってくれます。とても良い香りがして、気持ちいいです。


 「姫様。今日は天気がよいので、月山(がっさん)が良く見えますね。もうひとつの(いただき)葉山(はやま)です。」(すい)が手で示しながら教えてくれる。世の中にはこのような贅沢があるのですね。この最上の軍事力と政治力と経済力が我が家に味方くだされば、二本松は救われます。


◇◇◇


 「楽しんでおるかね? 姫。」小兵衛様に宴の席にて、お声をかけていただいた。


 「はい。滋野家の力と技術の(すい)を見せて頂きました。」そう返事したところ少し驚いた顔をされた。


 「ふむ。今、裏を探らせておる。(おおむ)ね二本松殿は信用に足る方のようですな。本家様の気分次第で、貴家の運命は決まる。本家様に気に入られる秘訣は。」ゴクリと私の喉が鳴ります。

 「何事も正直に話されよ。あの方は一瞬で嘘を見抜かれる。かく言うおれも、本家様に気に入られて、この地位におる。最上の影の支配者と思われよ。では武運を祈る。」フッと良い笑顔をされて他の席へ向かう小兵衛様。


 「御助言感謝します。」小兵衛様に頭を下げる。そうでした。これは家の存続を賭けた戦です。お父上、お母上、妙子(たえこ)は頑張ります。


 「ほうほう。姫よ、場馴れされているのか。気負いしない、その姿勢評価する。何、失禁されたのは、われと弥太郎と姫の秘密よ。」あっ滋野卿が突然横に、その卿の耳打ちに顔が熱くなる。


 「オホホホホ。滋野卿よ麿にもその姫を紹介してたもれ。」凄い貴族然とした方が、滋野卿に話しかける。


 「この娘御殿は隣国の隣国。二本松家の姫にて。」


 「ほう、左様ですか、麿は滋野井と申す。良しなにな。」滋野井大納言卿!


「大納言卿におかれましては、ご機嫌麗しゅう、恐悦至極に存じます。」緊張して何を言ってるのかよく分からない。


 「ほうほう、感心感心、お若い姫殿ですが、賢いですな。昔の誰かを思い出します。」笑いながら大納言卿が、他の席へ行かれた。凄い面々です。心の臓が、激しく動悸(どうき)して息が止まりそうです。


 「姫よ、大事な話がある。一刻(2時間)後ここの3階のわれの部屋においでなされ。」

 

 「はい、滋野卿様。」

 バッフェスタイルという形式にて。好きな飲食物を選んで自分で装っています。あまりにも珍しい食べ物ばかりで、目移りしてしまいます。ああ、全部美味しいです。


◇◇◇


 「さて、妙子殿。この書状をな、御父君に届けられよ。」卿から書状を受け取る。宴の後に滋野様のお部屋へお邪魔した。

 「内容は、滋野家に仕える気があるならば、家臣と一族ごと面倒を見る。伊達家への侵攻は、5年後以降になる。と言う内容でな。二本松の領地はここから離れ過ぎておる。領地を捨ててわれに仕えるならば、一軍を任せるつもりよ。」そう言われて、伊達の米沢を含む岩代国(いわしろのくに)の地図を見せてくださいました。確かに山形から二本松は離れております。


 「ありがとうございます。届けて説得してみます。」


 「ふむふむ。余計なことを聞かないお主の賢さに感銘を受けた。ひとつ良いことを教える。なぜ酒田と酒田周辺に1万石しか所領が無いわれが、力を持っているか。知りたいかえ? 」それは知りたい。代官に頭を下げる大名など聞いた事がありません。


 「お願いします。」


 「うむ。実はな、われは羽前国(うぜんのくに)(山形)、羽後国(うごのくに)(秋田)の商売の利権をほとんど握っている。それに越後国(えちごのくに)(新潟)と陸奥国(りくおうのくに)(福島、宮城、岩手、青森)の経済を密かに鐙屋と信濃屋と桔梗屋と組んで、浸食しているのだよ。その年間の収入は、石高に換算すると150万石を軽く超えている。そういう事だ。領地など面倒くさい物は、実はいらぬのだよ。知らぬは大名ばかりけりでな、はっはっは。」衝撃であった。所領を面倒くさい物と切り捨てる実力者。そして他国まで経済で侵略している。その事実に。


 「とても大切なことを聞かせていただきました。新しい戦争ですね。恐ろしいです。無論今のお話は、父にも母にもしません。」とても驚かれた顔をされる滋野様。ふふふ、この方でもこんな顔をされるのですね。


 「くっくっく、そうかそうかえ、こんなところに、われの求める。最後の鬼札(きふだ)があったか。妙子殿よ。われの養女になれ。そうだな5万石相当の給金と、二本松家に相当額の支度金を払う。経済侵略の指揮官になってもらおう。楽しいぞ、米の価格を自在に操り、敵対した大名に荷止めをして、悲鳴を上げさせるのは。」ああああ、とても楽しそう。


 「(わず)か8歳の私でよろしいのですか? 」


 「ははは。われの歳は7歳だ。お主より年下だな。」これには私が面食らって絶句した。どう若くみても15歳にしか見えない。身の丈が5尺(約150センチ)はある。


 「歳は気にするな、要は頭だよ。経済の全てを仕込んでやる。」コツンコツンと自らの頭を指先で突つかれる。嬉しい、私をここまで買ってくださるお方が、今ここにいる。


 「やれることからやります。どうぞ厳しくお願いします。お義父様。」


 「分かった。短い人の生を楽しませてやる。後悔はさせない。」この日から私の人生は、別物になりました。

※1 曳光弾 発光体を内蔵した特殊な弾丸。 射撃後、飛んでいく間に発光することで軌跡がわかるようになっている。

※2 衆道 日本における男性の男色の中で、武士同士のものをいう。若衆道(わかしゅどう)の略である。


小説宣伝の動画を作成しました。義守、定道、善盛が見れます。URLは。


https://youtu.be/WHfVYpVJ40k


若しくは「みたらし丹後」でyoutubeで検索していただくとヒットします。


見て頂くと嬉しいです。


次回投稿は05/07の予定です。

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