55.二本松の姫
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https://youtu.be/WHfVYpVJ40k
です。どうぞご覧になってください。
〇滋野善盛〇
なんとまあ。公家の出席が23名・・・。都が空になっちまうな。お爺様頑張りすぎだろ。これはいかんな。
「誰かある。」
「はっ! 」小姓が応える。
「田島泰時を呼んでまいれ。」
「はっ! 直ちに。」さてさてどう馬車を増産したものか。
◇◇◇
「田島よ、得徳寺の建て直しご苦労であった。中々の仕上がりであったな。ようやった。褒美を下賜したいが、なんぞ望みはあるか。」
「滅相も。しかしながら、望めるのでしたら、新たなる知識を所望致します。」なるほど、前向きで大変よろしい。
「蒸気機関を上回る。ディーゼルエンジンと大型電気モーター技術の本を下賜しよう。寛太と学問所の人材を5名。鐙屋の職人を2名配下に加える。あとお主が必要とする人材を好きに使え。プロジェクトチームだ。開発せよ。」
「ははっ! ありがたき幸せ。」嬉しそうで何より。
「先ずは先日の馬車を6台増産せよ。ダイナモ(発電機)を車輪とこう組み合わせて、バッテリーに蓄電して、照明と補助モーターに使おう。」執務室の奥の黒板に馬車の作成図を書き込む、頷きながら真剣に作成図をメモする。田島。そろそろこの男も出世させてやらねばな。
◇◇◇
「殿様。ゴムと一般プラスチックとフェノール樹脂の開発ば成功しました。」見るからにやつれて、目の下に隈を作っている茂助。よくやったが、これはいかん。
「おお、耐熱プラスチック(フェノール樹脂)までようやった。褒美をとらす。」奥の書棚から本を2冊持ってくる。
「お前が切望していた。アインシュタインの相対性理論と原子核物理入門だ。受け取れ。」震える手で本を受け取る茂助。
「殿様。感謝します! 」嬉しそうで結構。
「その2冊の難解ぶりは格別だ。仕事をしているとほとんど読み進めんよ。どうだえ? 佐渡鐙リゾート[※1]へ行ってこい。弥生さんに2回お前のことで相談された。家に帰らなかったそうだな。お前は知らんと思うが、女心はどんな学問より難解だ。このままでは、お前弥生さんを失うかもな。」意地悪な顔をしてみる。まあ半分は当たっている。この唐変木は、このくらい言わないと理解できない。
「そんなそんな・・おら。うわああああん!! 」号泣である。三十路男としては、一生の不覚レベルだな。くっそ! 8mmフィルムの開発が遅れた。撮って上映会開きたいくらいの泣きっぷりだったのに。
「夫婦の危機を回避する手段を伝授する。心して聞くがよいぞ! 」・・・・くっそ! 茂助だけでなく、控えている用人や小姓までメモを取り出した。苦労してるのだなこいつら。
「妻の服装と容姿をひたすら誉めよ。ほれ、われが信濃屋に開発させた。美容スキンケアオイルを授ける。これを送って機嫌をとれ。」茂助に化粧瓶を渡す。ここに居合わせた他の既婚者が土下座を始めた。なんか哀愁を感じるな。
「欲しい者はこっち来い。」手招きすると、なんと! 既婚者が全員歩み出た。
「・・・・お主らに佐渡鐙リゾートへの7日間の特別研修を命じる。細君か内縁でも良い。3名までの同伴を赦す。但し親同伴はやめておけ。少しわれの心遣いが足りなかったようだ。許せよ。」皆男泣きの平伏である。
「ここ以外にも多数おるな、これは、研修を必要とされると思い当たる者を推挙せよ。」
家臣既婚者272名のうち、実に220名が推挙された。残りの52名がとても気になる。それは後にする。
「鐙屋に伝えよ。今年のリゾート部屋枠を20件追加してくれとな。」
「ははっ! 皆に代わり御礼申し上げます。」茂助が深々と頭を下げる。ワシ女(楓)でよかった。
〇氏家弥生〇
「弥生様。お聞き遊ばされました? 」お隣りの中老の青木新右衛門様の細君である。お杉様がお茶会の席で話しかけてくる。
「まあ、何かございまして? 」
「滋野のお殿様が、あの鐙屋リゾートへ新型客船を出港させるに伴いまして、家臣を優先して招待されてますとか。」
「あら、それあたくしも伺いましたわ。楽しみですわね。」家老の滋野四郎様の奥方様も話の輪に入る。
「主命なら仕方ないわよね。お父様らしいわあ。」あ・・お景の方様。皆緊張して平伏する。伝説の女大名様。実に6万石の化粧料の方様として、噂に上がらない日は無い大女傑様。羽後侵攻の一番手柄を立てられ、最上の大殿さまに「お景は最上の至宝よ。」と褒められ。それをおくびにも出さない気さくなお方。皆の憧れの的である。氏家のお殿様と大恋愛の上、大名の正室に昇りつめられた。絵巻物語のようなお方。女なら感化されずに於けない。
「よしておくれな、あたいは下賤の出でね。お父様に拾ってもらわなかったら、あんた達に御目文字も叶わない身分だったんだからさ。」かぶり(頭)を振りながら、堂々と席に腰かけるお景の方様。そのりりしさと気さくな振る舞いに誰もが、ほだされ、皆のその迫力に圧倒される。噂では50名を超える者を仕留められたとか。今 巴御前[※2]様です。
「あっ弥生さん。あんたの御亭主さんには、いろいろとお世話になってね。最近お互い忙しくて会えないから、お礼を言っておいておくれな。」周りの皆が、私を羨望の眼差しで見つめる。
「まあうちの茂助が、そのようなお役に。」
「お父様も心配されてたけど、ああいうお方は、お役目にのめり込むと寝食と家族さえ忘れるのさ。可愛いじゃないかい、赦してやっておくれな。あたいが保障するよ。あの方の研究者として、発明者としての力は群を抜いているよ。正に天才だね。間違いなく大出世するよ。あんたが支えてあげておくれな。」ああ茂助さんてそんなに凄い方だったのね。
「はい! ありがとうございます。お景の方様。」
「うんうん。そうしておくれな。あとお入りなさいな。」ちょいちょいと入り口に手招きする。お景の方様。
「ハイ、アノ失礼シマス。」とても大きな金色の御髪の方が、噂の南蛮の姫様ですね。
「ここにお座りな。この子はエステル・カテリーナ・パサーね。今度あたいの義妹になったから。エステル・カテリーナ・滋野だね。イスパニアの実家の兄に虐められてその兄をぶん殴って家を飛び出した女傑さ。あたいならぶっ殺すね。」ニコニコして、丁寧にカテリーナ様の頭を撫でられるお景の方様。二人共とても怖い。
「アノオ義姉サマ。ハズカシイデス。」頬を染めるカテリーナ様。その仕草に皆瞳を潤ませる。か・・・可愛い、私も撫ぜたい。
「この子は菓子作りの天才でね。反射炉[※3]でカスタードパイを焼いてくれたんだ。甘くて蕩けるよ。皆でいただこうよ。」その後紅茶という珍しいお茶とカスタードパイをいただき、お景の方様の羽後攻めの逸話を伺って、皆楽しい時間を過ごしました。侍女たちにもお茶とお菓子を振舞ってお話をするお景の方様。その素敵で、誰にも気さくに接する女傑様に、私も皆も魅了されました。
〇朝倉宗滴〇
「こ・・これは。」殿(朝倉孝景 )から文を見せてもらった。最上家からの婚儀の招待状である。羽後も制圧したとか、今や大大名だ。
「ふう。お主の名指しであったが、われも頼み込み了承していただいた。その連名を見よ。」なんと滋野井大納言卿と滋野参議卿。
「管領殿(細川晴元)が、誘われずに地団太を踏んだそうな。はっはっは。愉快な話よ。」
「左様でありましたか。何かすいませぬ。」殿に何か申し訳ない思いだ。
「いやいやお主の武名と所持する大名物である。九十九髪茄子を是非拝見したいとの滋野卿よりの添え状がある。持って行ってくれ。いやはやお主のお陰で体面が保てた。都より実に20家を超える公家様が招待に応えたそうな。誘われなかった家は、面目丸つぶれよな。あっはっはっは。」
「二刻(4時間)で城を落としたと伝えられる。最上の武、見極めとう存じます。」
「そうよな。そうよな。」殿の楽し気なお顔は久しぶりだ。
〇滋野小兵衛〇
最上様が本拠を羽後は能代湊の近くに移されることに決まり、なんと、山形のお城と領地を頂いた。櫛引は返納したが、実に10万5千石である。恐れ多い事と。固辞したが、義守様より「伊達側は小兵衛が、越後側は定道殿が守る。これで最上は安泰よ。」と太鼓判を押されてしまった。尚返納した櫛引の旧領は武兵衛に下賜された。あ奴なら安心して領民を任せられる。
山形城の天守閣通称「泰平閣」より、城下を眺める。人々が行きかい、門番が交代している様子が見える。
一介の忍びが大名とは。目が覚めれば、胡蝶の夢[※4]が終わるのではないかと不安になる。
間もなく酒田より本家様が、新兵器を輸送されてくるとの事。心より饗応させてもらおう。
〇滋野善盛〇
20mmバルカン・ファランクス。クロム転炉の鋼鉄と茂助の無煙火薬の発明により、強度が上がり、砲内の燃えカスが無くなり、速射が可能になった。[※5]オリジナルの毎分4、500発には遠く及ばないが毎分1、800発を誇る。重量は約9トン。オリジナルの6.2トンほどの軽量化は難しかった。蒸気船6号艦。通称赤城の次の配備である。尚地上配備は初であるな。
「殿様間もなく峠です。」馬喰[※6]の田吾作が叫ぶ。
「よーし! 予備動力作動。馬で引いてくれ。ここを超えたら難所は終わりだ。今夜はたっぷりと酒を振舞う。皆の衆ふんばれ! 」
「おおおう! 」この時代9トンの物の輸送は、難関だ。それが2機。道を広げげたが、整地が間に合わなかった。
「海路で運べば? 」との意見があったが、「最新兵器を大崎か相馬領の湊から山形へ運ぶのか? 」の一言で、皆沈黙した。
うん? 何やら峠から争う音が。手を上げ、輸送隊を止める。
「弥太郎や、双眼鏡。」
「はっ! 」弥太郎から双眼鏡を受け取り、峠を見る。3名の武者を追う、8名の抜刀した手練れの武者が、あ~あ、2名が切られた。1名は捕まり、当身を喰らって縛られている。なんかよく分からんが、あの8名と遭遇したら、こちらが危ない。武兵衛の配下に「知っている者か? 」と聞く。配下は
顔を横に振って否定した。
手信号で護衛狙撃隊に8名を撃てと指示。
「パアン!! パツン!! パパパパパツン!!」霜平小隊は外さない。
武兵衛配下と弥太郎と共にそこに歩いて行く。弥太郎が気絶している。縛られた若武者の縄を解き、活を入れる。さて事情を。
「くっ!! 殺せ!! 」あれま、女か。
『爺さん知ってる? くっ殺はゴブリンに捕まった女戦士のお決まりの一言なんだよ。』そんなこと知らんがな楓。
「お前さん、そんなに死にたいなら。楽にさせてやるぞい。おい。」この輸送知られたくないし、大体人の領地で、何 刃傷沙汰してくれとんねん。武兵衛の配下が刀を「つらり」と抜く。弥太郎は顔をしかめて、顔をそむけた。
「ひぃぃぃ! 言ってみただけですぅ! ごめんなさあい。お母さまあぁぁ。」泣き叫ぶ娘。よく見たら10か11の小娘ではないか。ほうほう中々の美少女よ。
「ジョロロロロ。」とお決まりの音がして、袴が濡れた。誰かさんを思い出すな。
「止めだ止めだ。興が削がれたわ。」えーと・・・・お清はいる訳がないし、大体この輸送隊に女がいない。うーむ。腕を組み考えていると。弥太郎が上着を外してその娘にそっと掛ける。爽やかな笑顔で、小便に濡れるのもかまわず。その娘を抱きかかえる。弥太郎おま! そういう趣向だったのか。
『わーい! ロリだぁ! ロリがここにもおるぞwww』 喧しい楓!
辺りを見る。ちょうどいい竹藪があった。ワシの衣装駕籠から小袖を取り出して、弥太郎に付いてこいと、娘ごと竹藪に入る。
「弥太郎、着替えさせる。お主も拭いておけ。」と列に戻らせた。
「おい、われは女だ。口外するなよ。したら。」首を掻き切る仕草を娘にする。
「ひっ! 」と言って娘が頷く、また袴の染みが広がった。
『爺い何脅してるの! チェンジ! チェンジ! 』楓に代わって後事を託した。
◇◇◇
「ほお。お前さん二本松の。」
「はい。二本松家泰の娘で、妙子と申します。参議卿とはつゆ知らず、大変にご無礼を。」平伏する妙子。実は8歳であった。
「で、何で追われて、捕まった? 」
「伊達家の者に追われておりました。これを。」そう言って書状を渡してくる。ふむふむ、伊達稙宗が送った反最上の同盟の誘い文か、この文面からすると、断ったら潰す勢いだ。余程毒ガス攻撃がこたえたようだ。
「成程。貴女の父上殿は誘いに乗らなかったわけか。」
「はい。実は我が二本松畠山家は、かつて遠隔地の所領を斯波氏(大崎氏)によって押領され、苦しい思いをした際に、最上家に助けて頂いたことがあり。父は最上家の恩義忘れるなかれと同盟の誘いを断り、只今苦境に陥ってる次第にて。」賢い娘だ。8歳とは思えない。
「ほう。律儀だの。一体その恩義とは何年前の話かね? 」
「百年以上前です。」ふむ。律儀すぎるな。
「今かなり苦しい領地経営と思われるが、一体何万石なのかね? 貴家は。」
「自称6万石。実際は3万石ありません。」正直な娘、8歳で即答。この娘だけでも5万石でおつりがくる。丁度万能タイプの混成旅団[※7]が欲しかった。
「これより山形の滋野小兵衛家に向かうところでな。付いて参れ。悪いようにはせんよ。」
「はい。何卒宜しくお願い致します。」なんか弥太郎の後ろをぴったりと付いてくる。妙子。そいつが一番危ないのにな。まあいいや。
※1 佐渡鐙リゾート 前年海路の中継基地と金銀確保の為。佐渡島本間家を攻めて、降している。そこを、鐙屋に開発させた本格的リゾート施設。
※2 巴御前 平安時代末期の信濃国の女性。女武者として伝えられている。木曽義仲の妾。
※3 反射炉 金属融解炉の一種。18世紀から19世紀にかけて鉄の精錬に使われた。ただし、もとは鉄以外の金属に用いられた設備で現代でも鉄以外の金属の精錬に用いられている。伊豆代官の江川英龍が反射炉を使ってパンを焼いた記録がある。
※4 胡蝶の夢 中国の戦国時代の宋の思想家の荘子(荘周)による、夢の中の自分が現実か現実の方が夢なのかといった説話である。荘子の考えが顕著に表れている説話として、またその代表作として一般的にもよく知られている。
※5 砲内の燃えカスが無くなり、速射が可能になった。 黒色火薬の砲や鉄砲は、砲身に燃焼後のカスや煤が溜り、数発発射したら、内部を掃除しないと暴発するリスクがあった。
※6 馬喰 牛や馬の仲買商人。産地の農家から牛馬を買い取り、それを広く売りさばいたり、交換したりする。
※7 混成旅団 陸軍編成上の単位のひとつで、師団よりも小さく、連隊と同等又はこれよりも大きい単位で、1,500名から6,000名程度の兵員によって構成される部隊をいう。歩兵、機動部隊、砲兵隊、衛生隊、通信隊、偵察隊などの複数の部隊により、構成されている。
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次回投稿は05/05の予定です。
05/02前書きと後書きを修正。




