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鮭様大好き♡秀吉絶対ぶっ潰す!  作者: みたらし丹後
最上家細うで繫盛記
23/66

22.氏家家始動

〇氏家定直〇

「姉上。あねえぅえ。あねうえしゃま?」


「はい。姉はここですよ。道丸(みちまる)殿。」


 微笑ましい。姉弟(きょうだい)の何気ない会話。

 昨日まで、黄泉路(よみじ)へと、旅立つしかなかった。嫡男(ちゃくなん)の道丸が、何事もなかったかのように、楓を追いかけて遊んでいる。

 夢を見ているようだ。滋野様にお礼を、叔父上と共に伝えたところ。


「よかった。われは早世して父を悲しませた。不孝者ですか

らな。来世で罪滅ぼしできました。その機会与えていただき、感謝する。」

 これには、ワシと叔父上共に男泣きに泣いた。

 

 そして、四方那草姫(よもなくさひめ)様の御慈悲に溢れる。御神託である。あの優しき声に、二度も助けて頂いた。


 もう迷うまい。報恩に感謝して、(むく)いなければ。人として(すた)る。如何なる結果になろうとも。楓の望みに、盲信して突き進むのみである。

「最上家の天下様か。」このワシにそんな大望を抱く時が、訪れるとは・・・・。

 ふと空を見上げる。その(あお)い空はどこまでも、澄み渡っていた。


〇氏家定道〇

 先代が身罷(みまか)※1られた時。ワシの全てが終わった。

 妻とは子を()せず。養子も貰う気になれなかった。妻が先立った折に。(ろく)を返上して、隠居した。最上家の誰もが、我が家が無くなることを惜しんでくれた。

 未練なく枯れていく。そう決めていた。


 なのに。何だ! この熱さは?! 込みあげる(たけ)き血潮は!

 ああ! 見てみたい。戦場にて軍配(ぐんぱい)を振るう。滋野様を。先代様と同じ匂いがする。あの方に仕えたい! 老人の戯言(たわごと)に正面より向き合って、我が事のように喜んでくださった。あの方に誉めていただきたい。

「やっ! これは枯れている場合ではない。」

「鬼の助左衛門。再び参ろうぞ。」


 麗しき女神に。老武者の武運長久(ぶうんちょうきゅう)を願い。居間の方向に拝礼をする。


 !?「誰ぞ!!」

 夜更けの離れに人の気配。


「叔父上。夜分遅くに失礼いたします。」


「定道殿。すいませんな。」


 なんと!定直殿と楓。(いな)滋野様だ。


「どうぞお入りくださいませ。」

 胸が早鐘のように。高鳴る。


 二人ともに尋常ではない。雰囲気を(まと)いながら。部屋に入ってくる。

 定直殿は、興奮気味に。楓の姿をした滋野様は、静かに、しかし内なる闘気をたぎらせておられる。戦場でよく味わった。あの圧倒的な敵に対峙する。剣呑(けんのん)※2なる思いがワシの額から、一筋の冷や汗を垂らす。

 サッと懐紙(ふところがみ)で、汗を拭い。滋野様に上座を勧める。

 上座に着いた。滋野様が、おもむろに語りだした。


「さて。お二方。この夜分遅くに、申し訳ございませんな。」

 手をつき詫びる滋野様。


「やっ! お手をお上げくださいませ。氏家家の大恩人にかのような事。我らの失態に相成ります。どうぞ。」


「叔父上の申す通りです。滋野様より、大事な話と聞き。ワシは正直、眠気など吹っ飛びました。どうぞお手をお上げくだされ。」


「かたじけなし。」姿勢を直す滋野様。

「これより語る中身は、楓殿には聞かせられぬ。(たぐい)の物でしてな。楓殿が完全に寝入るまで。待った次第にて。」


 なるほど。隣の定直殿より。「ごくり。」と生唾を飲み込む音が聞こえた。


四方那草姫(よもなくさひめ)様の(もと)より、楓殿に御使(みつか)いとして派遣された。そのみぎり、姫神様は[善盛(よしもり)よ存分にやるが良い。決して(かえり)みるなかれ。]とおっしゃられましてな。」


「それは。心強い限りです。」定直殿がまるで(わらべ)のごとく身を乗り出す。このような甥っ子初めて見る。ワシも同意の頷きをする。


「われも姫様の御神命(ごしんめい)に従う所存でな。そうすると。人が死ぬ。この奥州だけでも、万では済まぬ、人が死ぬ。」

 辛い表情をする。滋野様。


「なるほど。滋野様は。我らの覚悟の出来(しゅったい)を確かめたいのですな。戦に人死には当然。何のことやありません。いざとなったら、この白髪首(しらがくび)一つで納めればよろしい。」

 首に手を当てて見せる。


「ワシも叔父上と同じ思いです。そして、楓の望み。最上家の天下統一と言う言葉が、頭から離れません。」


 「なんと! 天下様だと!?」

 全身が震えだす。


「はい! 叔父上。楓が四方那草姫(よもなくさひめ)様に望んだ。望みは、最上家による日本(ひのもと)制覇です。滋野様はそのために顕現(けんげん)なされたのです。」

 うんうんと滋野様が頷いている。

 もう震えがとまらん!!


「ひとつ光明をな。姫神様より楓殿に授かった力の一つは、先の世を見通す真贋(しんがん)(まなこ)である。それによると。西の尾張の織田家にな。吉法師(きっぽうし)なる童がおる。歳は道丸殿と同じ。数え三つ。それが長じて、天下を統一するらしい。」


 なんと! 楓にそのような力が。そして織田家とは。聞いたこともない。

 ワシと甥御殿が、織田家とは? と顔をしたのを察したのであろう。


「ああ。織田家は尾州(びしゅう)斯波家(しばけ)守護又代(しゅごまただい)の家老にて。うちに例えるならば、奉行(ぶぎょう)の一人と言ったところですな。」

「その奉行程度の者がのし上がり。神の手助けも無しに。地の利と人の利のみで、天下様になるのです。」

「最上家が掴めぬとは、言わせませんぞ。」

 

 滋野様はすくりと立ち上がり。奥の脇息(きょうそく)を持ち出す。そして、上座の円座の横にそれを置く。

 脇息(きょうそく)に肩ひじをつき。扇子をバっと開く。


「さてもさてもお二方。この希代の軍法家。滋野善盛(しげののよしもり)が、天下の舞台に誘っているのですぞ。男児として(しょう)を得たならば。これに乗るや否や。いかんや!?」

 

 その人を試す。不敵な仕草に先代様が、重なって見えた。


義定(よしさだ)様。」

 ワシの残りの生は、この為にあったのですな。ありがたい。ありがたい。

※1身罷る 自己側の者の死の謙譲語。例「安らかに身罷る」

※2剣呑 危険な感じがするさま。また、不安を覚えるさま


次回投稿は03/02の予定です。

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